金融市場の次の焦点とは
4月2日にロンドンで開催された20カ国・地域首脳会合(G20サミット)後における金融市場の次の焦点となるのが、為替相場だ。対ドル相場では、今後大きな変動が予想される。変動で価値が増す通貨オプションを買っておくことが有効な戦略だろう。
その理由は2つある。まず短期的な動きから見ると、金融市場の動揺から安全資産、すなわち安心できる資産としてとりあえず購入したドル、または米国債に退避したドルが、金融市場や経済の変動の小休止を見て、次に向かう先を探してうずうずしているという状況がある。ドルから他の資産にわずかでも資金が流れ出すと、ドル安の強い圧力がかかることになる。
昨年12月には、1ドル=88円台まで
円高ドル安が進んだ
米国の出方
米国債を売られては、米国は不良債権処理や自国経済の立て直しのための財政が成り立たなくなる。政治的に米国債を売るリスクのある中国は、幸いにも米中両国間の政治的安定を受け、売らないと言っている。もっともこの点は、北朝鮮や台湾問題など不確実性をはらんでいることに注意を要するが。ともかくそこで米国は、米国債を売られるとしてもその程度をマイルドなものにしようと経済政策面からの対策を考える。
その対策としては、連邦準備制度(FRB)が政策金利を上げるか、もしくは米国財務省がドル安をある程度容認するか、いずれかしか手がない。金利は景気が悪いのに上げられない。そうなるとドル安の容認は不可避だ。なお英国のポンドの対円、対元も同じような動きをする可能性があることを考えておいた方がよい。
市場参加者は、「マイルド」の程度をめぐって投機をする。この予想に基づき先物やオプションの取引が増えるであろう。そしてその参加者が注目しているのは日米、米中の通貨当局の合意の強さ、固さである。そのために通貨当局者の発言や為替介入の可能性をめぐって神経質な動きが出てくる。
日本と中国の違い
日本も中国も輸出で外貨を稼ぎ、国を豊かにしている。よって為替相場の行方は、今後両国民の生活に直結することになる。中国は販売製品をまだまだ安く放っておいても黒字が増える国だ。この国にはマイルドなドル安元高を受け入れる余地がある。公共投資の国内需要は強いし、財政に余裕もある。このため内需で外需の減少を補えるし、外需における競争力もそう減退しまい。
一方、日本は貿易赤字国になった。このため輸出促進にこだわる必要はない、との考え方もできる。だが財政赤字が大きく、国内の公共投資の需要も土木関係では大きくない。観光立国を実現するには内容面でほど遠い。国民の間では国産品信仰がまだ強いのでドル安の恩恵も大きいのだが、トータルに考えると短期的にはマイナスの方が大きい可能性が高い。よって円高で自動車はじめ製造業の国外での競争力が一気に小さくなると、景気は大きく落ち込むことになろう。急激な円高はもとより、マイルドな動きでも対応は容易ではない。
小泉構造改革はこうした形で第2幕を迎え、競争力のない企業は淘汰されることになるだろうし、それによりヒト、カネ、モノの生産要素は再分配されていく。もちろん社会的な痛みを小さくするように政府が緩衝材になるだろうが、それは経済の大きな原理に最終的に逆らえるものではない。これが結局、明治維新、太平洋戦争の敗戦に次ぐ、第3の革命のための黒船になっていくのだと、ぼんやりと考えている。
(2009年3月26日脱稿)
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