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Fri, 13 December 2019

第155回 原子力発電の行方

福島第1原発問題の終息

この度、東日本大震災により被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。また被災地の一日も早い復旧と復興をお祈りいたします。

今回は、被災者支援に次いで日本が今後考えなければならない問題として、復興についての私見を述べたい。同震災により失われた経済活動とその財産は、国力を集中していくことで取り戻すことができるし、その道筋に大きな不確実性はない。地震後に残る経済問題のうち最も不確実度が高く、様々な議論が起こり得るのは、原子力発電を中心とする電力供給確保の問題だ。

その大前提は、福島第1原発の問題の終息である。執筆時点では原子炉への放水により炉の温度上昇が一時的に止まっているが、電源の回復により冷却装置が作動するか否かについては明確とは言えず、連続冷却により原子炉自身の破壊リスクを大幅低減できるかどうかは依然、予断を許さない。報道によれば、冷却装置の稼働ができれば大きな山を越えるとみられるので、その時期は極めて重要と思われる。早期解決できれば原発技術への信頼が残るかもしれないし、時間がかかるようだと不信がそれだけ大きくなると思う。筆者は、今後、便利さよりも安全・安心を重視する人が増え、重視の程度は、福島の終息に目途がつく時期により決まると考える。

日本での夏の停電への備え

大多数の人々が憂慮している大量の放射能漏れという事態を避けることがほぼできそうだという目途がついて第一次の危機が終息したとして、次の山は、この夏の電力需要を乗り切るためには東京電力の絶対発電量が足りないということになろう。東京電力管内の夏の電力需要は最大6400万キロワットに上る可能性があるが、福島第1・第2原発の運転再開はもはや絶望的となり、このままだとその供給能力は4800万キロワット規模にとどまると報道されている。東京電力では火力発電所の稼働率アップ、施行期間が短いガスタービン発電所の新設を目指して準備を始めており、そのために原油、天然ガスの需要が増え、価格の上げ材料となっているが、それだけでは夏の需要ピークには追いつくまい。

西日本の電力会社から電力の融通を受けるため、現在3カ所ある周波数変換所を増設することも考えられるが、これも間に合うかどうか(明治時代、後に東京電力となる東京電灯はドイツから輸入した50ヘルツ仕様の発電機を、関西電力の前身となる大阪電灯は米国から輸入した 60ヘルツ仕様の発電機を導入。現在も東西で周波数が異なるため直接送電できない)。ほかに考えられるのは、鉄道や製せいてつ鐵を始めとする業界の大企業は自家発電設備を持っているので、その機能を集約し、日本の企業全体で電力をかき集めるという方法だ。

後は使用時間の分散か節電ということになろうが、節電は復興需要に水を差す。電車で節電すると出勤に影響し、経済の効率性に悪い影響を与えかねない。時間の分散には時差出勤、休日出勤などが考えられる。政治の調整能力が問われるところだ。

原子力発電の行方と政治

その次の山は、電力確保政策の中での原子力発電所の位置付けをどうするかを検討することだろう。現在、日本の原子力発電所の工事はすべてストップした。ドイツでも古い原発は運転停止となっている。世界中の国が問題を突きつけられており、各国の対応が注目される。特に英国はブレア氏が首相在任時に原発停止から促進に舵を切ったばかりだ。

筆者は、今回の原発の事態には天災と人災の両面があると考えている。自然が人知を超えていることへの畏れを持ちつつも、日本の行政や電力会社は最善を尽くしてリスク対応をしていたか否かについて厳しく検証し、それを国民に示し、今後の選択肢を示す必要が出てくるだろう。そうすることで人災を上塗りせず、自然と共存していける国になれると思う。

エネルギーと食料の自給は安全保障の要であり、低炭素社会の実現への道のりにも気配りする必要があるかもしれない。節約という観点からは、あまりにも電気を使いすぎる家庭に対しては電力料金を累進的に高くするということも考えられる。一律停電ではなく、消費者や企業に、料金が使用量に対し逓増(ていぞう)する料金表を提示し、自ら電気使用量をコストとの関係で選択してもらうという方法もあるだろう。いずれにせよ、各国で政治が担う役割は極めて大きい。

(2011年3月22日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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