第1回 伝説の怪獣を探し続けるおじさん
Steve Feltham
スティーブ・フェルサム
モンスター・ハンター
1963年生まれ、46歳
英国、ドーセット出身 / ネス湖沿岸に在住
スコットランド北部に位置する英国最大の淡水湖、ネス湖。この湖に息を潜めていると言われている伝説の怪獣、ネッシーの探索に生涯を賭けるおじさんがいる。ネス湖に初めて足を運んだとき、まだ7歳の少年だった彼は、そこでネッシーの存在にすっかり魅了されてしまったという。45歳になった今でも、ネス湖沿岸に建てたキャラバンで生活しながら、ネッシーの姿を追い求めている。
ネス湖近くに設置された、スティーブさんの自宅兼仕事場のキャラバン
毎日をどのように過ごしていますか。
双眼鏡を片手に、ネス湖の観察をするんだ。ネッシーが突然現れた時にも撮影できるように、ビデオ・カメラを常にセットしている。探索には近所の住民も協力してくれているんだ。あと空いた時間を使って、生活費を稼ぐためにネッシーの粘土細工を販売しているよ。
ネッシーを追うようになったきっかけは何でしょう。
陶芸品や絵画の制作に製本、さらには防犯アラームの設置など過去に様々な職に就いたんだけど、いつも合間を縫っては、ネス湖にネッシーを探しに来ていたんだ。でも次第にね、お金を稼ぐことだけに汲々とする生活に嫌気が差してきた。夢を追いかけて、そしてもっと満足いく人生が送りたいなって思ったんだよね。
幼いときからネッシーに興味を持っていたのですか。
私が通った小学校には自由研究の授業があって、そのときにネッシーについての本をたくさん読んだよ。クラスの皆の前で発表するために、関連記事や写真の切り抜きでいっぱいのファイル作りもしたな。僕が7歳だったときにはもう、多数の研究家がネッシーの研究に没頭していたんだ。目撃証言もかなりたくさん出ていて、そうした話が面白そうに思えてたまらなかった。当時から「ネス湖付近に住んでその側のお店で働けたら」っていう夢を持っていたな。
ネッシーがネス湖にいるという確証はあるのですか。
ネッシーが生息しているってことは、もう分かっているんだ。目撃証言から割り出した出現スポットや、ネッシーが魚を好んで食べること、また水面が静かなときに出現しやすいことに加えて、今も合わせて15頭くらいは生息しているだろう、ということもね。ただ残念ながら、僕自身がその姿を目にしたことはない。巨大で、灰色だという目撃証言が多いけれど、ネッシーの容姿についてはまだまだ多くの謎が残っているんだよ。
定職を捨てて家を売りに出し、「モンスター・ハンター」の生活を始めたときに、戸惑いは無かったのですか。
ネッシーの探索には、大変なやりがいを感じている。今までどれだけ憧れていても本腰で取り組む機会が無かったのに、今はまさにネッシー漬けの毎日だからね。こんな夢のような生活を送ることができるのだから、決心したときから迷いなんて全く無かったね。むしろ実際にモンスター・ハンターになってみて、「これこそ自分のやりたかったことなんだ」って確信したくらいだな。しばらくはこの生活を続けていきたいと思っているよ。
(取材・執筆: 高橋百合子)
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