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Mon, 18 November 2024

第100回 メトロが元祖、田園都市に家が建つ

ロンドン地下鉄の愛称「チューブ」=丸い列車が刻印されているのは、地下鉄開業150周年を記念した2ポンド硬貨(2013年製造)。地下鉄が「メトロ」と呼ばれるのは、世界初の地下鉄を運営したメトロポリタン鉄道の名に由来します。開業時は蒸気機関車の時代。メトロポリタン鉄道は大人気の乗り物になりましたが、通気口をたくさん作っても地下の煙は完全に排除されず、「メトロポリタン調合薬」という、のどの薬が売られたほどです。

地下鉄の刻印
2ポンド硬貨に地下鉄の刻印

地下鉄の建設を提案したのはシティの弁護士、チャールズ・ピアソン。19世紀に入ると英国に鉄道建設ラッシュが到来し、1836年にロンドン・ブリッジ駅、翌年にユーストン駅、その翌年にパディントン駅が開業。主要各地とロンドンが鉄道網で結ばれていきます。でも当時、既に過密エリアだったシティに鉄道を通すわけにはいかず、周辺にターミナル駅が作られました。そこからシティに入るまでの道路が大混雑して社会問題になります。

チャールズ・ピアソン
地下鉄建設を提案したチャールズ・ピアソン

そこでピアソンが目をつけたのがフリート川。かつてはロンドン北部ハムステッドからテムズに流れる大きな川でしたが、当時は既に下水溝となり一部が暗渠化(あんきょか)されていました。彼は1843年に開通したテムズ水底トンネルをヒントに、フリート川の切り通しを拡げて鉄道を敷き、擁壁(ようへき)と蓋で囲めば地下鉄になると主張。キングス・クロス駅から、総合郵便局やスミスフィールド肉市場が近くにある聖ポール駅を結ぶ鉄道建設を提案しました。

フリート川
フリート川を埋め立てたファリンドン駅周辺

パディントン駅(北米航路の玄関口であるブリストルと結ぶ)、ユーストン駅(産業革命発祥地バーミンガムと結ぶ)、キングス・クロス駅(スコットランドと結ぶ)を通る新しい鉄道建設の案が浮上し、それをシティのファリンドンまで延ばす形で世界初の地下鉄が完成します。ピアソンは1863年の開業の前年に逝去し、栄えあるスタートには立ち会えませんでしたが、快適な通勤地下鉄をシティに作るという、20年近く訴え続けた夢は実現されました。

水車
ファリンドン駅周辺ではかって、水車(mill)が回っていた

ところで、このメトロポリタン鉄道、時代を先駆ける施策がありました。鉄道会社には余剰不動産の保有を禁止するという鉄道条項統合法がありましたが、その免除適用を受け、ロンドン郊外で大規模な住宅開発を実施。美しい田園都市に住みながら有名校に子供を通わせ、シティに通勤可能という住宅街「メトロ・ランド」の経営戦略が奉功します。メトロは世界初の地下鉄だけでなく、沿線のブランド化・多角化戦略の元祖になりました。

メトロ・ランド
メトロ・ランドは中産階級の夢

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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