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Fri, 29 March 2024

第177回 ロンドンの五つの橋と境界線

友人が早朝、タワー・ブリッジでスピード違反をしてしまいました。速度制限の20マイル(約32キロ)を超過したことを監視カメラは見逃さず、すぐ違反通知が送られてきたそうです。送り主を見るとシティ警察。タワー・ブリッジはシティから離れた所にありますがシティの所有物であり、この橋での交通違反はシティ警察が取り締まります。

タワー・ブリッジの速度制限は20マイルタワー・ブリッジの速度制限は20マイル

タワー・ブリッジだけでなく、付近のロンドン・ブリッジ、サザック・ブリッジ、ブラックフライアーズ・ブリッジ、そしてミレニアム・ブリッジの五つの橋はシティの所有物でシティ警察の管轄。シティ警察はロンドン警視庁と違い特別行政区シティを守る独自の警察です。実際にこれら五つの橋の維持管理を行っているのはブリッジ・ハウス・エステートという信託組織ですが、この組織は毎年、多額の慈善寄付も行っており、公的資金が一切投入されていません。

ブリッジ・ハウス・ エステートのマークブリッジ・ハウス・ エステートのマーク

思えばテムズ川に最初に架けられた橋はロンドン・ブリッジ。当初の通行料は王室のものでしたが、王室への貸付金の見返りに1284年からシティの所有物に変わりました。ロンドン中心部でテムズ川に架かる橋は18世紀半ばまでロンドン・ブリッジだけでしたから、通行料は莫大な収入になりました。そしてそれは通行料が無料化された1782年まで約500年間も続きました。どうりでブリッジ・ハウス・エステートの財政が豊かなはずです。

橋の上と下で警察の管轄が異なる橋の上と下で警察の管轄が異なる

ところで橋の下、つまり、川での事件となるとロンドン警視庁海上保安部(かつてのテムズ水上警察)の管轄になります。しかしここで厄介なのが川底。基本的にテムズ川の中央線がシティとそのほかの行政区の境界になりますが、ロンドン・ブリッジとブラックフライアーズ・ブリッジだけは橋の南岸の少し先までシティの管轄です。というのも19世紀後半にロンドン行政区の境界線を定めた際、橋の向こうの少しの土地もシティ所有と決めたからです。

シティの境界線は二つの橋だけ南岸に届くシティの境界線は二つの橋だけ南岸に届く

ロンドン・ブリッジの南岸にはブリッジ・ハウス・エステートの建物があり、そこまでがシティの所有。また、ブラックフライアーズ・ブリッジの南岸にはシティが所有するレニー・ガーデンがありますが、これは先代のロンドン・ブリッジを建設したジョン・レニーの名前に由来します。

シティが所有するレニー・ガーデンシティが所有するレニー・ガーデン

「五つの橋」は寅七の動画チャンネルちょい深ロンドンでもご覧いただけます。

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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