第314回 HMS ベルファスト号のフランク君
ロンドン塔の向かい側には退役して博物館船になった軽巡洋艦HMSベルファスト号がテムズ川に係留されています。HMSとはHis Majesty's Shipの略で英海軍艦艇の意味です。1930年代に北アイルランド、ベルファストのハーランド&ウルフ造船所で建造されましたが、その約27年前には同じ造船所で豪華客船タイタニック号が建造されています。これらの名船、名艦には高度な技術が結集され、北アイルランド人の魂と誇りが込められています。
2016年に日本の「かしま」が接舷
1930年当時、日本の巡洋艦、特に「最上」が機動力に優れ、重量艦に劣らない攻撃力を備えた名艦だったため、それに対抗する目的でベルファスト号が建造されました。ところが、デビューしてまもなくドイツ軍の機雷で深く損傷してしまい、3年間も任務から外れました。でも修理中に最新鋭の装備が実装され、いよいよ1944年のDデー、つまりノルマンディー上陸作戦で大活躍して名を上げました。ヒーローの登場は遅れるのが常です。
ノルマンディー上陸作戦の様子
第2次世界大戦後は朝鮮戦争時に国連軍の一員として従事し、長崎県の佐世保港をベースに活躍しました。かつては日本と戦う可能性もあった艦船が、戦後には文化交流の橋渡しをしました。71年からはテムズ川に係留され、博物館として残されていますが、テムズの川底は浅く、大型客船が接岸できない場合はベルファスト号に接舷して桟橋の役をしてもらいます。過去数度、日本の海上自衛隊練習艦「かしま」も接舷しました。
現在は博物館船HMSベルファスト号
ベルファスト号は、Dデーに参加した唯一現存する英艦船であるという生々しい事実があります。博物館船内の展示には、油臭いエンジン室、狭い台所、砲撃台直下の病室や歯科治療室など、臨場感あふれる海上生活が再現されています。当時の過酷な環境を見ますと、何よりも平和が一番大切だと改めて痛感します。甲板に出るとロンドン塔やタワー・ブリッジが目の前に広がり、いつも見るロンドンの風景とはかなり違って感じられます。
艦長室、エンジン室や台所、病室など
最後にベルファスト号の最も有名な乗組員を紹介しましょう。それは猫のフランケンシュタイン、通称フランク君です。公務員の猫といえば首相官邸でネズミ捕獲長として勤務するラリー君が有名ですが、ラリー君がグレーと白のしま模様のキジ白で、まさに政治のグレーな世界で活躍する一方、フランク君は黒と白のタキシード模様の猫です。英国は007ジェームズ・ボンドの国なのでタキシードに身を包み、夜な夜な秘密のミッションにいそしみました。人気者だったフランク君には専用のハンモックが贈られ、今では人気の展示物になっています。
フランク君に贈られたハンモック
寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。



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