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Fri, 27 December 2024

第199回 最古のガード下は美食文化の発信地

ロンドンに初めて乗客鉄道が走り出したのは1836年2月。ロンドン・グリニッジ鉄道でした。重い蒸気機関車と客車が走る全線が全て高架橋の上という画期的なものでした。6000万個のれんがを積み上げ、878ものアーチをもつ高架橋は当時世界最長です。当初はまだ始発駅のロンドン・ブリッジ駅が完成していませんでしたが、資金回収のために開業を急ぎ、ロンドン側の発着駅はロンドン・ブリッジ駅隣のスパ・ロード駅になりました。

ロンドン・グリニッジ鉄道ロンドン・グリニッジ鉄道

スパ・ロード駅というのですから近くに温泉があったのでしょうか。1765年、鉄道の南側500メートルほどのところに喫茶を楽しむ庭園がオープンし、そこで鉄泉が発見されたため、バーモンジー・スパという娯楽センターが作られていました。でも、このスパは鉄道が開業する前の1805年にすでに閉園しており、スパ・ロード駅の利用客はロンドン・ブリッジ駅が完成すると著しく減少しました。

20世紀初頭のスパ・ロード駅20世紀初頭のスパ・ロード駅

バーモンジー地区はもともとテムズ川近くの湿地帯にあり、中世から皮革産業が盛んでした。19世紀になるとロンドンの工業化が進み、たくさんの工場が建てられます。1857年から1989年まで稼働していた世界的なビスケット菓子会社ピーク・フリーンズ社の大工場があり、バーモンジーはビスケット・タウンと呼ばれていました。また、サーソン社のモルト・ビネガー工場や世界初の食品缶詰工場もその近くにありました。

スパ・ターミナスの食材店スパ・ターミナスの食材店

駅の周囲に工場や倉庫が増える一方、地域住民は減るばかり。そしてついに1915年にスパ・ロード駅は閉鎖されます。それ以来、高架橋の下は不法投棄や不良の溜まり場となり、貧しくて汚い街の象徴になってしまいました。こうした状況が激変するのは21世紀になってからです。ロンドン橋付近にあったバラ・マーケットがにぎわい過ぎて観光地化が進み家賃が高騰。広い売り場面積と安い家賃を求めて食品業者が動き出しました。

モルトビー・ストリートの屋台街モルトビー・ストリートの屋台街

高架線下に食品工房が20店近く集まり、スパ・ターミナスという名で卸売り店を開きました。土曜日の朝8時半から午後2時半まで一般客に開店したところ、近くのモルトビー・ストリートのフード屋台と醸造所を兼ねたクラフト・ビール店が並ぶビア・マイルと共に大人気になり、高架下が美食文化の発信地に変貌しました。日本最古のガード下、有楽町の飲み屋街も有名ですが、こちらは多くの若者でにぎわっています。

クラフト・ビール店が並ぶビア・マイルクラフト・ビール店が並ぶビア・マイル

寅七の動画チャンネル『ちょい深第十話~リージェンツ運河の散策』もどうぞお楽しみに。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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