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Fri, 27 December 2024

第205回 ユダヤ人とシティの金融商人(後編)

前回のコラムでは、13世紀にユダヤ人を追放した英国が17世紀の清教徒革命や名誉革命の際にユダヤ商人の資金援助を受けて、代わりに再入国を許したこと、さらに英国が世界の海に進出して国際貿易を始めるとユダヤ商人と協力し合い、その結果、貿易と関係の深いマーチャント・バンキングという新しい金融機関が英国で発展したことをお話ししました。

中世のユダヤ商人中世のユダヤ商人

古来、英国の金融業は王室がユダヤ人やイタリア商人に任せていましたが、王室がそうした金融機関を自分の都合の良いように利用し、債務不履行を起こしたため発展しませんでした。ところが18世紀に国際貿易が盛んになると、貿易金融が発達しました。そこでは信用状が使われます。信用状とは貿易の決済を円滑にするため、内外の輸出者と輸入者の間に入って信用度の高い金融機関などが発行する支払い確約書のことで、現金と同じように取り扱われます。

行商するラダニテ行商するラダニテ

実はこの信用状は、その発祥をたどると5世紀から10世紀にかけて欧州、中東、中国、インド、北アフリカに貿易ネットワークを有した「ラダニテ」と呼ばれる、巡回ユダヤ商人に利用されていました。ヘブライ語で書かれた信用状はユダヤ商人の間だけで決済され、信用状があれば決済のために多額の資金や貴金属を遠くまで持ち運ぶ必要がありません。ラダニテは商人であり、宅配業者であり、銀行であり、何よりも知識人でした。

マーチャント・バンクの雄、ロスチャイルド商会は今も健在マーチャント・バンクの雄、ロスチャイルド商会は今も健在

未発達だった英国の金融業は、信用状、貿易手形、外国為替取引などの貿易金融の知見や技能を内外の商人から採り入れることで業務プロセスの標準化や集約化を図り、利用者を増やしました。同じころ、産業革命で英国の海外貿易が飛躍的に拡大し、また、ナポレオン戦争で政治の不安定さを嫌った欧州大陸の資金が英国に流れ込むと、国際貿易の資金決済場所として英国が選ばれ、19世紀以降、英国が世界の金融センターに成長します。

シティの金融街シティの金融街

でも20世紀の大衆社会の時代が訪れると国民や企業を相手に預金と貸付を行う大商業銀行が生まれ、多くのマーチャント・バンクはそこに吸収合併され、表舞台から消えてしまいます。また、21世紀は金融とテクノロジーが融合したフィンテック(ファイナンス+テクノロジー)の時代です。すでに多くのIT人材が海外から英国に移住しており、英国の金融業はどんどん変化を続けています。でも、「人のふんどしで相撲を取る」神髄と、国際情勢に応じて常に最先端の技術と優秀な人材を世界中から集めてくる器用さは何も変わっていません。

人のふんどしで相撲を取る人のふんどしで相撲を取る

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『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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