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Fri, 27 December 2024

第224回 シティ生まれのピムスとブラック・ヴェルヴェット

この夏は暑い日が続き、それだけに冷たいドリンクをよりおいしく感じます。英国の夏のドリンクといえばやはりピムス(Pimm's)。テニスのウィンブルドン大会でも、ロイヤル・アスコット競馬場でも、ちまたのガーデン・パーティーでも、英国人の定番ドリンクはピムスです。実はこのドリンク、1840年ごろにシティで誕生したそうです。フルーツ盛りだくさんのカクテルがシティで誕生したとは一体、どんな経緯があったのでしょう。

夏の風物詩、涼しげなピムス夏の風物詩、涼しげなピムス

ピムスを発明したのはジェームズ・ピム。もともと英南東部ケントの農家に生まれ、シティに出てきて魚屋ギルドに加わり、魚介商人になります。そして19世紀前半、オイスター・バーをシティ中心部のポートリー3番地で開業しました。当時のカキの値段は高くなかったので、もっと利ざやを稼げるよう店内でお酒を販売する許可を当局に申請しました。でもなかなか許可が下りず、ようやく下りても販売量に制限が付けられました。

ジェームズ・ピムジェームズ・ピム

そこでピムは考えました。提供するのはジンではなく、ジンを含む栄養剤にしたらどうか。カキの磯臭さを消し、その消化を促す滋養ドリンク、つまり、ジンにハーブなどの薬草やスパイス、フルーツを混ぜて飲み心地良い「ピムス」を考案したのです。するとこれがヒット商品になり、ヴィクトリア女王の昼食にも提供されるようになりました。それを苦々しく横目で見ていたのは近所のライバル店、「スウィーティングス」( Sweetings)でした。

19世紀のオイスター・バー19世紀のオイスター・バー

スウィーティングスはロンドンで最も古いオイスター・バーといわれます。1830年にシティ北のイズリントン地区で開業し、その後シティに移り、さらに1889年からはマンション・ハウス駅近くに移動し、現在もそこで営業しています。シティ営業と呼ばれる、平日昼間のみ、予約不可、品切れしたら閉店、味とスピードが勝負というスタイル。当時からシティのビジネスマンの人気店でした。

スウィーティングスが入る建物は英国指定建造物スウィーティングスが入る建物は英国指定建造物

ピムの店のピムスに負けじと、スウィーティングスはシャンパンと黒ビールを混ぜた「ブラック・ヴェルヴェット」を食前酒として売り出しました。ブラック・ヴェルヴェットは1861年にヴィクトリア女王の夫アルバート公が逝去した際、シャンパンにも喪服を着せるようにと黒ビールを混ぜたのがはじまりです。銀のジョッキに注がれるブラック・ヴェルヴェットとカキの組み合わせは、シティのビジネスマンの定番メニューになっています。ちなみに同店は最近まで現金支払いのみ、食後のティーやコーヒーは今でも提供されません。

黒い食前酒、ブラック・ヴェルヴェット黒い食前酒、ブラック・ヴェルヴェット

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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