ニュースダイジェストのグリーティング・カード
Sun, 24 November 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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支払う前に食べてもOK!?

支払う前に食べてもOK!?

渡英した年の夏、ロンドンのセントラル・セント・マーチンという芸術学校のサマー・コースに通っていました。ランチ時になると、毎日、近くにあったスーパーにサンドイッチや飲み物を買いに行きました。あるとき、果物コーナーでりんごを買おうと品定めをしていると、隣にやってきた女性が、陳列してあったマスカットに似た緑色のブドウを皮ごと3つほどつまんで、そのまま買わずにどこかへ行ってしまいました。英国に来る前に東南アジアの国をよく旅していたときには、野外マーケットで人々がフルーツをちょっとつまんで味見して買うかどうかを決める、という様子をよく見ていたので、英国ではスーパーでも味見できるのかしら? とそのときは思いました。それから数日後に、ベビーカーに子どもを乗せたお母さんと思われる女性が、陳列棚から取ったビスケットを、その場で開けて子どもに食べさせているのを見ました。そのときはちょっとびっくりしたのですが、当時まだ子どもがいなかった私は「子どもがあまりにも愚図るから、仕方なく食べさせたのかしら?」と思っていました。

数カ月して、ロンドンの新金融街ともいわれるカナリー・ワーフのDLRの駅のそばにあるスーパーで、会計に並んでいたときです。目の前に並んでいたスーツ姿の男性が、おもむろに、手にしていたサンドイッチの包装を開けて、中身を食べ始めました。そして、空になった三角形のパッケージをレジの人に渡して、相手もまるでそれが当たり前とでもいうように、そのゴミ(!)のバーコードをスキャンしていました。男性はカードで支払いを済ませ、ゴミを捨てておいてくれるようにレジ係の人に頼んで、去っていきました。

当時ボーイフレンドだった夫のフラットメイトのDは、カナリー・ワーフにある金融機関のアナリストをしていました。そこで、Dにスーパーで見た出来事を話して、これは普通のことなのかを質問してみました。「僕はやらないけど、そうやって会計前に食べる人はいるよね。決してマナーがいいとは思わないけれど」というのがDの答えでした。


その後、いろいろな人にこのことを聞いてみました。結果、全員が「そうする人がいるのは知っている」とのことでしたが、実際にやったことがある人はいませんでした。また「スーパーで働いている人たちは、商品は別に自分のものではないから、食べた人がお金さえ払ってくれれば問題ないと思っているのではないか」というのが大半の人の考えのようでした。

刑法専門家によると、実際には支払いの済ませていないものを食べることは違法とのこと。ということで、皆さま、英国流をまねるのはやめておいた方がよさそうですよ。

 
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マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
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