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Fri, 19 April 2024

歴史に新たな1ページが刻まれる日チャールズ国王戴冠式の全て6 May 2023 / Westminster Abbey

イースターの恒例行事「ロイヤル・マウンディ・サービス」でヨーク大聖堂を訪れたチャールズ国王夫妻イースターの恒例行事「ロイヤル・マウンディ・サービス」でヨーク大聖堂を訪れたチャールズ国王夫妻

来たる5月6日(土)〜8日(月)は、世界各国から要人が参加するチャールズ国王の戴冠式を筆頭に、国王の即位を記念する一連の祝賀行事が開催される「戴冠式ウィークエンド」だ。お祝いムードが最高潮に達している一方で、昨年6月にエリザベス女王即位70周年のプラチナ・ジュビリー、そして同年9月に女王の死去など、女王の後を継ぎ、同月に即位したチャールズ国王をはじめ、英王室にとってこの1年は目まぐるしいものだった。今回は、戴冠式に関する情報やスケジュール、関係者の人物まとめや世間の反応など、王室を取り巻く事情を整理してみた。(文: 英国ニュースダイジェスト編集部)
※本記事は5月2日時点での情報を基にまとめたものです。

参考: www.royal.ukwww.rct.ukwww.bbc.co.ukwww.independent.co.ukwww.theguardian.comhttps://news.sky.comwww.harpersbazaar.comhttps://commonslibrary.parliament.uk ほか

戴冠式でお祝いムードのロンドン

戴冠式(Coronation)の意味と行う理由

君主がその威厳ある力を新君主に正式に授与し、称号と権力の譲渡を示すもので、何千人もの参列者の前で儀式用の宝器を与え、王冠を新君主の頭にかぶせる政治的かつ宗教的な儀式。今日の英国では、君主は現行の君主が死去するとすぐに王位を継承することが法律で定められているため、昨年エリザベス女王が亡くなった時点でチャールズ国王はすでに即位している。よって、厳密には戴冠式は現在の王室に絶対必要なものではないが、バッキンガム宮殿は「式典とお祝いの機会であると同時に、厳粛な宗教儀式でもある」と述べている。そのため、これらの儀式は新しい君主にとって重要な行事として現在まで存在し続けている。

戴冠式は、もともと国家への教会の関与を増やすという中世ごろの欧州の伝統に影響を受け、複数の個人が王位を主張する不安定な社会に安定をもたらす必要性から生まれたもの。式典の核となる儀式は、聖職者が君主を聖油で清める「塗油」。これは、支配者に神の恵みが与えられたことを示している。戴冠式で使用されるアイテムは代ごとに変更されてきた可能性があるものの、儀式の大まかな手順は約1000年の間ほぼ同じ形式を取っている。君主制を採用する欧州の国でいまだに宗教的な戴冠式を行なっているのは英国だけ。今回はエリザベス女王が即位した1953年以来70年ぶりの戴冠式となり、2022年に74歳を迎えたチャールズ国王は、英国史上最年長の戴冠者となる。

チャールズ国王の人物像については特集記事「チャールズ皇太子にまつわるABC」をご覧ください。

エリザベス女王のときと何が違う?戴冠式にまつわるエトセトラ

戴冠式の週末は今年だけ特別祝日が設けられるなど、国を挙げての大きな行事になる。まずは今年の戴冠式にまつわる事柄や、戴冠式で使われるレガリア、また世間の反応などを見てみよう。

現代の価値観に見合う1. スリム化された戴冠式に

1953年のエリザベス女王の戴冠式には8251人のゲストが出席したが、今回は2000人と前回に比べかなり縮小される。戴冠式を簡素化させた理由についてチャールズ国王は、国中の多くの人々に現在影響を与えている生活費の危機を「非常に認識している」とされており、王室関係者が「デーリー・ミラー」紙に語った内容によると、今回は、意図的に「時間を短く、規模を小さく、予算を抑えたものにする」とのこと。また、別の情報筋によれば、現代の君主制を象徴するイベントになることを踏まえ、「国王は昔から、スリム化された君主制の合理化を提唱していた。今回の一連の構成は、国王のビジョンに合っているといえる」、「母親のレガシーを引き継いでいきたいという想いを抱かれており、これには国民の日々の暮らしを自分も認識し続けることも含まれる」のだという。

3時間超かかった前回の戴冠式と比べ、時間も大幅に短縮。また、国王は戴冠式で着られる伝統的で豪華な服装でなく、代わりに軍服を選ぶというアドバイスも取り入れる予定だ。

また、宗教的・文化的にはより多様な式になると予想されており、事前に公開された計画によれば、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、仏教徒などさまざまな宗教の信徒を対象とした式になるそうだ。国王は戴冠式で英国国教会に宣誓することを認めているが、全ての信仰を尊重する英国を率いることを望んでいると明らかにしている。

国王、王妃がかぶる2. 王冠の秘密

写真左上から時計回りに、支配者の宝珠、聖エドワード王冠、十字付きの王笏、鳩の付いた王笏、君主の指輪。1953年の戴冠式で使われたレガリアが再び使われる写真左上から時計回りに、支配者の宝珠、聖エドワード王冠、十字付きの王笏、鳩の付いた王笏、君主の指輪。1953年の戴冠式で使われたレガリアが再び使われる

チャールズ国王は、17世紀から伝統的に戴冠式の王冠としてのみ使用されてきた、重さ2.23キログラムの純金製聖エドワード王冠(St Edward's Crown)を戴冠。これは1649年に当時の国会議員によって溶かされてしまったオリジナルの王冠の代わりに、1661年にチャールズ2世のために作られたもの。戴冠式後、国王は大英帝国王冠(Imperial State Crown)を新たにかぶり、ウェストミンスター寺院を出て、バッキンガム宮殿のバルコニーから国民に手を振るときまで着用する。

この王冠は英議会開会式の儀式などに使われており、最後に公式に登場したのは昨年9月のエリザベス女王の国葬で、棺の上に置かれたときだった。3つの大きな宝石を取り付けた透かし彫りの金枠に、2868個のダイヤモンド、17個のサファイア、11個のエメラルド、269個のパールがセットされているが、ダイヤモンドに南アフリカで採掘された世界最高峰の原石「カリナン」が含まれており、貧しい植民地から略奪したものとして、ダイヤモンドを同地に返還する呼びかけも起こっている。

一方、カミラ王妃はメアリー女王王冠(Queen Mary's Crown)をかぶる予定。持続可能性の観点から、新たな王冠を作らずに既存の王冠を戴冠式に再利用するのは、近年の王室史上初めて。王冠からインド産の大きなダイヤモンド「コ・イ・ヌール」が取り除かれ、代わりにエリザベス女王の私物のコレクションから選ばれたダイヤモンドが嵌め込まれるが、この中には先のカリナンが含まれており、こちらも論争の対象となっている。

大英帝国王冠(写真左)メアリー女王王冠(同右)大英帝国王冠(写真左)メアリー女王王冠(同右)

戴冠式に必須の物品3.「レガリア」って何?

「レガリア」(Regalia)とは、ロンドン塔で管理されている王権、君主を象徴する神聖なアイテムのこと。英王室は、国を代表するような戴冠宝器(Crown Jewels)を100点以上所有しており、戴冠式の最中に使用されるレガリア(Coronation Regalia)もそこに含まれている。レガリアのラインナップは戴冠式ごとに微調整されるが、今年は先の王冠のほか、チャールズ2世の戴冠式のために1661年に作られ、主権者の力を示し優れた統治を表した、十字付きの王笏(Sovereign’s Sceptre with Cross)、同年作の公正と慈悲を象徴する鳩の付いた王笏(Sovereign's Sceptre with Dove)、地球を模した球体上に十字架をセットすることでキリスト教の世界を象徴し、君主の力を表現した支配者の宝珠(Sovereign’s Orb)、オーク材に金箔を貼り権威を象徴した2本の職杖(Maces)、王権を象徴し、ベルベットで覆われた木製の(さや)に収められた銀メッキの柄を持つ鋼の刃、国家の剣(Sword of State)、行進時に使われる一時的な正義、精神的正義、慈悲を象徴する3本の剣(the Sword of TemporalJustice, Spiritual Justice, Mercy)、聖油を入れる小瓶として、羽を広げたイヌワシの形に作られた金のアンプラ(Ampulla)と、レガリアの記録史上最古のものとされる、聖油を取るための戴冠式スプーン(Coronation Spoon)、1661年に作られ、後に金や革、ベルベットの改良が加えられた騎士団を象徴する拍車(Spurs)、騎士団と軍事指導者の古代のシンボルに関連しているとされ、「誠実さと知恵のブレスレット」と呼ばれるアーミル(Armills)、ダイヤモンドと十字型にセットされたルビーとサファイアで作られた君主の指輪(Sovereign'sRing)と、カミラ王妃が身に着けるルビーでできた王妃の指輪(Queen Consort's Ring)などが選ばれている。

戴冠式スプーンは12世紀に作られた。2本の指先を浸せるよう、スプーン中央が分割されている戴冠式スプーンは12世紀に作られた。2本の指先を浸せるよう、スプーン中央が分割されている

家族にもいろいろある4. 王室メンバーの裏事情

国家行事である戴冠式の招待客には、王室メンバーに加えて、首相や議会の代表者、他国の国家元首、および世界中の王族が含まれ、日本からは秋篠宮ご夫妻が参列する。バッキンガム宮殿によると、ハリー王子は戴冠式に出席し、メーガン妃と子どもたちは米国に残る。欠席理由に、戴冠式当日の5月6日はアーチー王子の4歳の誕生日であるためとされているが、ハリー王子は今年の1月に家族との確執など衝撃的な内容を盛り込んだ「ヘンリー王子回顧録 Spare」を出版するなど、家族間の問題はいまだに解決できておらず、それらを反映した結果なのではという憶測が飛び交っている。

なお、性的人身売買で有罪判決を受けた米投資家ジェフリー・エプスタインとのつながりをめぐって、2019年に王室の職務を辞任したアンドリュー王子は出席の予定。

英国でも話題になった「ヘンリー王子回顧録 Spare」英国でも話題になった「ヘンリー王子回顧録 Spare」

戴冠式を象徴する目玉料理5. 今回はキッシュに

ポピュラーな英国料理の一つで、カレー風味のクリーム・ソースで和えた鶏肉料理「コロネーション・チキン」は、もともと1953年の戴冠式のときに考案された料理だ。今回の戴冠式の目玉料理は、チャールズ国王とカミラ王妃が直々に選んだ「コロネーション・キッシュ」。二人はストリート・パーティーのビッグ・ランチとして振る舞われることを望み、低コストの材料でできるキッシュを王室専属のシェフと共に考えた。材料にはほうれん草、そら豆、チーズ、タラゴン、ラードが含まれているが、ベジタリアンやヴィーガンなど、食の好みや嗜好に合わせて柔軟に味を変えられる、複雑すぎないレシピになっている。
レシピはこちらから。www.royal.uk/the-coronation-quiche

戴冠式に関する社会の反応

戴冠式に関する社会の反応近年、王室離れも目立ってきている英国社会。人々は今回の戴冠式をどのように受け止めているのだろうか。

戴冠式の費用は誰が出す?

英政府は「国家行事であるため、戴冠式の費用は英政府が負担する」としているものの、予算の具体的な金額は現在も明らかにされておらず、予想される総費用や資金調達についての内訳に対する発表もない。戴冠式をスリム化するとはいえ数百万ポンド(約3300万〜1億円)の出費は必至で、納税者に負担がのしかかることは十分にあり得る話だ。一方の国民は高騰する生活費にあえぎ、医師や教師、そのほかの公務員たちによる賃金をめぐるストライキも頻発。批評家からは、戴冠式は「血税の浪費である」と烙印を押されている。

4月中旬に行われたYouGovの調査によると、約51パーセントが式典に税金が使われるべきではないと考えており、約32パーセントが税金の使用に賛成、また約18パーセントが分からないと答えた。年齢別に見てみると、調査対象となった4246人の成人のうち、18〜24歳までの62パーセントが税金の使用に反対で、15パーセントのみが賛成だった。若い世代の王室離れが少しずつ進んでいるのが実態だ。

君主制に対する世間の反応

2022年の即位後、英国各地を訪問していたチャールズ国王夫妻だが、交流中に卵を投げつけられるなど君主制反対派の動きが目に付くようになっている。こういった人々は絶大な人気とその在位の長さを誇ったエリベス女王の治世ではなりを潜めていたが、君主が変わった途端吹き出すように現れ始めたともいえる。

とはいえ、YouGovの最近の調査によると58パーセントが君主制維持を支持し、国家元首の支持は26パーセントと前者の方が圧倒的に多い。しかし、世代別に見ると、君主制支持の65歳以上は78パーセントであるのに対し、18〜24歳はわずか32パーセント。この世代は、国家元首を好む割合が38パーセントと高く、また別の調査で「王室に興味がない」と答えた人は78パーセントにも上った。英王室に興味を持てない原因の一つに、広い宮殿や敷地を無駄遣いしている、また気候変動について講演しているにもかかわらず、プライベート・ジェットなどを過剰に使用していることが考えられている。

戴冠式ウィークエンドのスケジュール

英王室の戴冠式は1000年以上の歴史を持つ由緒正しきイベントだが、その習わしを現代の世相に柔軟に変更させることで今日まで受け継がれてきた。さまざまなメディアですでに報道されているが、改めて「戴冠式ウィークエンド」の詳細を一通りまとめた。

5月6日(土)

06:00〜

バッキンガム宮殿からウェストミンスター寺院まで国王が移動する行列(Procession)がスタート。バッキンガム宮殿の外には退役軍人やNHSスタッフ、ソーシャル・ケアのスタッフなどの招待客専用のスタンドが設置される。一般客が戴冠式の雰囲気を味わえる最初のタイミングで、行進のルート沿いに設けられた指定の場所で観覧が可能だ。特に、行進がよく見えるザ・マル(The Mall)、ホワイトホール(Whitehall)、パーラメント・スクエア(Parliament Square)周辺は大変な混雑が予想されるため、観覧を希望の方は当日朝6時の開放と共に場所取りをするのがお勧め。

なお、指定の観覧エリアがいっぱいになった時点で、近隣のハイド・パーク(Hyde Park)、グリーン・パーク(Gr een Park)、セント・ジェームズ・パーク(St James's Park)に特設されたパブリック・ビュー会場へ誘導される。

戴冠式の行進ルート戴冠式の行進ルート

09:45〜

ウェストミンスター寺院への行列に参加する近衛兵など、200人弱の軍人の準備が始まる。最終的に約1000人がルートに沿って行進することになるが、エリザベス女王の1953年の戴冠式に比べると参加人数ははるかに少なく、ルートの長さも4分の1の距離になる。

10:20〜

行列がバッキンガム宮殿を出発。ザ・マルに沿ってトラファルガー・スクエア(Trafalgar Square)まで移動し、その後ホワイトホールとパーラメント・ストリート(Parliament Street)を下ってパーラメント・スクエアとブロード・サンクチュアリ(Broad Sanctuary)へ。ウェストミンスター寺院西側のグレート・ウェスト・ドア(Great West Door)に到着し終了。チャールズ国王とカミラ王妃は、エリザベス女王がダイヤモンド・ジュビリーで使ったダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチに乗って移動する。

2014年に初使用されたダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ2014年に初使用されたダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ

11:00〜

10時53分にウェストミンスター寺院に到着予定。式典は11時開始で、チャールズ国王はグレート・ウェスト・ドアから同寺院の中へ入り、ネイヴ(身廊)を進む。この時両脇に座るのは王室メンバー、スナク首相やこれまでの首相、世界各国から招かれた要人たち。演奏の曲は全て今回のために作られており、「エビータ」「キャッツ」「オペラ座の怪人」などヒット作を生み出したミュージカル音楽界の巨匠、英作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーの曲を含む、全12曲と、チャールズ国王の父、故フィリップ殿下を偲ぶギリシャ正教会の曲が流される。

国王のローブの裾を持つページ・オブ・オナー(Page of Honour)が登場。チャールズ国王の孫ジョージ王子と、カミラ王妃の孫ローラ、エリザ、ガス、ルイス、フレディなど8名の少年が担当する。また、選ばれた公爵や退役軍人などが儀式的な役割(Ceremonial roles)となり、レガリアを運び、国王夫妻に授ける。

ウェストミンスター寺院ウェストミンスター寺院

儀式は約2時間戴冠式のおおまかな流れ

1. The recognition(承認)

チャールズ国王が、アングロ・サクソン時代にさかのぼる「人々」(the people)へ提示される儀式。カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー大司教が、戴冠式の椅子の横に立ち、修道院の両側に向かってチャールズ国王を「疑う余地のない王」と宣言した後、出席者に敬意と奉仕を示すよう求める。その後出席者が「神よ、王をお守りください!」(God Save the King!)と叫び、トランペットが鳴る。

2. The oath(宣誓)

カンタベリー大司教が、チャールズ国王に、統治中に法律と英国国教会を支持することの確認行い、国王が聖なる福音に手を置き、戴冠式の誓いを立てる。ここで、チャールズ国王は誓いとは別に複数の信仰を認める言葉を追加するかもしれないといわれている。

3. The anointing(塗油)

チャールズ国王が儀式用のローブを脱ぎ、戴冠式の椅子に座る。大司教がコロネーション・スプーンに聖油を取り、指を浸して王の頭、胸、手と十字架の形に沿って聖油をかけ、英国国教会の長でもある国王の精神的地位を強調。なお、この儀式は前回同様、テレビでは放映されない。聖油はこれまで動物由来の成分が入っていたが、現在の世相を反映し、植物由来のものを使用する。

4. The investiture(認証)

支配者の宝珠や指輪、王笏などのレガリアがチャールズ国王に授けられた後、聖エドワード王冠を戴冠。その後トランペットが鳴り響き、英国中で銃の敬礼が行われる。

5. The enthronement and homage(即位と忠誠)

王位に就任。伝統的に王族と貴族が新王の前にひざまずき、忠誠を誓い、右手にキスをして敬意を表す儀式があるが、今回は一部省略される見込み。カミラ王妃は宣誓はなく、塗油して王妃(Queen)に即位する。

その後、両陛下は台座から下りて聖エドワード礼拝堂に入り、チャールズ国王は聖エドワード王冠から大英帝国王冠にかぶり直し、国歌斉唱と共に修道院の外に出て、ゴールド・ステート・コーチに乗ってバッキンガム宮殿に戻る。なお、前回の戴冠式ではピカデリーやオックスフォード・ストリートを通過したが、今回は行きとほぼ同じルートをたどる。その後、バッキンガム宮殿の庭園で英連邦軍から敬礼を受け、同宮殿のバルコニーに登場。儀式用の6分間のフライパスが開始され、華やかな雰囲気のなかで式は締めくくられる。

椅子に収められる「運命の石」

非常に古めかしく見える戴冠式の木製の椅子だが、完成当時は金メッキ加工が施され、色ガラスのモザイクがはめ込まれたきらびやかなものだった。時代と共に塗装がはげ、質素な見た目になったが、18世紀にはお金を払えば椅子に自由に座ることができ、観光客や聖歌隊員などによって、背面や座面の下にイニシャルや何かしらの文字を掘られたり、20世紀にはサフラジェットと思われる集団の破壊対象として椅子の一部が粉砕したりなど、大事な椅子とは思えないほどの扱いを受けた時期もあった。

座面の真下に見える空洞部分は、神聖な岩で「運命の石」とも呼ばれる「スクーンの石」(Stone of Scone)の収容スペースとなっている。この石は、紀元前700年にスペインからアイルランドに持ち込まれ、後にアイルランドを統治したスコットランドの所有物となり、スコットランド主権の象徴であった。

しかし、1296年にイングランド王国のエドワード1世が略奪。1996年にスコットランドに返還された。今回の戴冠式でも使用される予定で、スコットランドのエディンバラ城から厳重な管理かつ極秘ルートを通ってロンドンまで移送される。

戴冠式の椅子は1297〜1300年に作られ、Coronation ChairまたはEdward's Chairと呼ばれる。座面の下のグレーの部分がスクーンの石戴冠式の椅子は1297〜1300年に作られ、Coronation ChairまたはEdward's Chairと呼ばれる。座面の下のグレーの部分がスクーンの石

戴冠式を観る

● 自宅で観賞

当日は現地に行かなくても、BBC Oneのテレビ放送やiPlayer、またラジオでの生中継で現地の様子が楽しめる。
www.bbc.com/mediacentre/articles/2023/bbc-how-to-watch-the-coronation-and-coronation-concert

● 現地で観賞

行列ルート沿いの観覧エリアで、戴冠式の行列を直接見ることができる。観覧エリアは朝6時から開放されるが、その前に到着しないよう勧告が出されているので注意。以下のリンクの「Procession viewing areas - map and facilities」から、観覧エリアそばのトイレや応急処置の場所などの詳細の地図が閲覧できる。
www.gov.uk/government/publications/the-coronation-of-their-majesties-king-charles-iii-and-queen-camilla/how-to-watch-the-coronation-and-processions-saturday-6-may

● 歴史的な瞬間をパブで祝おう!

5~7日の間、イングランドとウェールズにあるパブでは、2時間延長して営業することが許可された。英国人らしくパブで過ごすのも一興だ。

5月7日(日)

近隣住民やコミュニティーで、一緒に食事や楽しみを分かち合う「ビッグ・ランチ」が開催。また、20時から英国の多様な文化を祝い、テイク・ザットなどが出演し、音楽や演劇、ダンスなどのパフォーマンス「コロネーション・コンサート」がある。また、ショーの一環として、国内の特定の場所で「ライト・アップ・ザ・ネーション」と題し、プロジェクション・マッピングやドローン・ショー、イルミネーションでライトアップも。この模様はBBC One、BBC iPlayer、BBC Radio 2、BBC Soundsで生放送されるほか、ロンドンのセント・ジェームズ・パークでパブリック・ビューイングが行われる。

5月8日(月)

月曜日は特別祝日となり、ボランティア活動への意識を高めることを目的とした「ビッグ・ヘルプ・アウト」(TheBig Help Out)への参加が奨励されている。ローカルのコミュニティー活性化のため、英国の何千もの団体がボランティアを募集中だ。参加の仕方はリンクを参照。
https://thebighelpout.org.uk

 

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