節分、バレンタイン・デー、バンクーバー五輪の開幕式と、様々な催し物が行われた2月。駐在員の方であれば、今後数カ月以内に、さらに大きなイベントを控えている人も多いはずだ。その「大きなイベント」とは、日本への本帰国。引越しを春頃に予定しているのであれば、もうそろそろ準備を始めなければならない。終わり良ければすべて良し。立つ鳥跡を濁さず。今週は英国から日本へとスムーズに移動したいと願う、駐在員のための帰国術をご紹介します。
初めの一歩が肝心
2カ月前から引越し準備を
何をするにせよ、海外での煩雑な手続きには余分な手間がかかる。加えて、異国では親戚や学生時代の後輩といった気軽に手を貸してくれる人々の存在が少ないことを考慮すれば、本帰国の準備にはそれなりの時間がかかることを覚悟しなければならない。少なくとも2カ月前には引越しの準備に取り掛かりたい。
できるだけ早く引越し業者に連絡を
ご帰国が決まり次第、まず現状お住まいの家の賃貸契約に記されている退去通知日数を確認しましょう。そして、退去日と帰国日を確定させるために、引越し業者の見積もりと日程の確保、そして航空券を購入します。同時に、清掃業者の予約とインベントリー・チェック* の日時も大家 / 不動産会社と決めておきましょう。退去通知日数に基づき、書面にて退去通知を大家 / 不動産会社にご提出下さい。次に現状お使いの サービス(電話 / インターネット / 衛星放送 / 新聞等)は、前もって解約申請をしなくてはなりませんので、解約規定で定められた通知日数を確認し、解約手続きを進め てください。ガス / 電気 / 水道は退去日に必ずメーターを読み、不動産会社から各供給会社に最終の請求を出してもらうことで申請してください。
インベントリー・チェックとは
渡英直後、現在の家への入居時に、物件や備品の状態を記録した「インベントリー・リスト」を受けとったはず。このリストに基づいて、家の状態を回復できているかどうかを確認するのがインベントリー・チェックだ。引越し予定日が決まったら、大家 / 不動産会社とインベントリー・チェックの日時を決める。清掃業者への依頼もこのときに行うことになる。
帰国日を決めるのはその後
引越し・清掃業者へ連絡する
引越し業者の作業日が確定しなければ、正確な帰国日も決められない。とりわけ、日本人駐在員による引越しの依頼が急激に増える春先は、自分の希望日が引越し・清掃のスケジュールと合わないという事態も十分に起こりうる。よって、まずはそれぞれの業者に連絡することが大切。航空券の手配はその後となる。
正確な見積りをもらうために
荷物を大まかに選別する
引越し業者に見積りを頼むと、多くの場合、家まで下見に来てくれることになる。 引越しにかかる経費を会社に請求する場合などは特に、早い段階で正確な見積り をもらうことが重要だろう。下見の日までに、荷物を梱包する必要はない。ただ できるだけ荷物の整理を済ませておけば、かなり正確な見積りをもらえるはずだ。
空港までの手荷物・携帯品
パスポートや財布、航空券といった貴重品に加えて、帰国日直前まで使用する衣服や眼鏡などが通常これに当たるだろう。加えて、どうしても自分の手で運びたい大切な割れ物や、積み残し・送り忘れの品々を自分の手で運ぶことになることも多い。ご存知の通り、多くの航空会社では、スーツケースや手荷物に一定の重量制限を定めている。そこで最後まで体 重計を手元に残しておくと、何かと便利。
誰かにあげるもの・廃棄処分するもの
引越しの準備を始めると、最も時間のかかるのが、実はこの「要るもの」と「要らないもの」の選別だったりする。いわゆる多くの整理術は、「どうしても要る」ものだけを残してあとは捨てることの大切さを説いている。そうした苦慮の結果、「要らない」と判断されたものは、誰かにあげたり、ゴミ箱行きとなったりすることになるのだが、こうした作業にも、楽しく、そして効率的に行う方法がたくさんある。詳細は次ページを参照のこと。
船便・航空便で送る
上記の2つのカテゴリーに属さないものが、引越し屋さんを通じて日本へと送るものとなる。そして、費用の面で最も頭を悩ますのが実はこれら日本への送付物。通常であれば、予算と相談しながら、割安ながら日本への到着まで平均して約2カ月かかる船便と、2週間ほどで着くが割高な航空便の2種類に荷物を分けるなどの作業を行う。運ぶ荷物の量が多ければ、時期をずらして2回に分けて送るという方法も一般的。
いよいよ本格的に始動
業者に下見してもらう
引越屋さんが下見に来る段階ともなれば、いよいよ本帰国との実感が少しずつわいてくるはず。もし時間的に余裕があるのならば、やはり複数の業者から見積りを取っておくのが賢明。料金はもちろん、荷造りなどの実作業の有無や、引越しに関する保険の範囲、さらにはその申請の手続きについても確認すること。
梱包明細書の作成
業者の下見が終わり、いざ梱包が始まるというとき、頭に入れておかなければならないのが、梱包明細書の作成(この作業まで請け負ってくれる引越し業者もある)。これは保険を申請するときに加えて、輸入通関の際の資料として必要になる。それぞれの荷物に割り振られた番号から、品名、数量、おおよその金額といったことまで、記入項目は詳細にわたり、煩瑣な作業となるので、ある程度の覚悟が必要。
引越し免税
英国または英国滞在中に訪れた諸国で高価な商品を購入した場合、帰国時に空港で免税の手続きを踏むことで、その税金の支払い分が手元に戻ってくる。さて、ここで日本への帰国に際して、引越し屋に作業を頼む利点がもう一つ。それは、いわゆる「引越し免税」といわれる、英国で購入した商品をまとめて引越業者に預けて処理を任せることができるということ。詳細は、上記記載の引越し屋さんにお問い合わせを。
引越し屋さんの下見が終われば、あとは帰国日に向けて、ひたすら家の中を片付けていくだけ。その過程で出てくるのが、膨大な量の「要らないもの」。ゴミ箱行きを簡単に決めてしまう前に、ちょっと工夫するだけで、様々な形での処分ができるはず。そこで、楽しくそして有意義に荷物を減らしていくためのアイデアを紹介する。
捨てるだけじゃもったいない
要らないものを処分する4つの方法
日本関連の商品は常に人気
帰国売りの個人広告を出す
英国ニュースダイジェストを始めとする在英邦人紙のクラシファイド欄や、インターネット上のコミュニティー・サイトの多くが、いわゆる「売りたし広告」を掲載できるスペースを設けている。とりわけ「電気釜」や「邦画DVD」といった、英国では手に入りにくい商品は、在英邦人の間では常に需要があるようだ。人気のある商品だと、広告を出した瞬間に売り切れてしまうということもしばしば。またLoot(www.loot.com)などの現地情報誌の中にも個人広告を扱っているものが多くある。
左)オンライン申し込みが割安な英国ニュースダイジェストのクラシファイド
右)個人広告を掲載する媒体として有名な英国の情報誌「Loot」
楽しく一気に大量処分
フリー・マーケットに出店する
処分したい商品が大量にある場合、個人広告を通して寄せられる一つひとつの問い合わせに対して、値段や受け渡し方法を伝えるというのは少々面倒な作業になるだろう。そんな心配を抱える人には、英国では主に「カー・ブーツ・セール」などと呼ばれる、いわゆるフリー・マーケットへの出店をお勧めしたい。同じく近々引越しを予定している近所の人や知り合いと組んで参加すれば、出店料を分割できるだけではなく、暇な時間におしゃべりを楽しむことができて楽しいはず。ロンドンを始めとする英国各地にてフリー・マーケットが随時開催されている(通常は事前予約が必要)。
ロンドンで開催されている主なフリー・マーケット
Battersea Sunday Boot Sale
出店料: £15〜
開催日時: 毎週日曜13:30〜
Battersea Technology College,
Battersea Park Road, Battersea London SW11 5AP
(入り口はDagnall Street)
最寄駅: Queens Town Road
Tel: 07941 383 588
Kilburn's Giant Car Boot Sale
出店料: £10〜
開催日時: 毎週土曜日11:00〜
St Augustine's School, Kilburn Park Road,
Kilburn London NW6 5XA
最寄駅: Kilburn
Tel: 020 8440 0170
Wimbledon Stadium Car Boot Sale
出店料: £10〜
開催日時: 毎週土曜日7:30〜
GRA Wimbledon Stadium, Plough Lane,
Wimbledon London SW17 0BL
最寄駅: Haydons Road
Tel: 020 7240 7405
知り合いへの挨拶も兼ねて一石二鳥
帰国売りパーティーを開く
帰国日までの限られた時間の中で、家の片付けと並行して、お世話になった人への挨拶もきちんと済まさなければならない駐在員の人々にとって便利なアイデアがこれ。気が置けない知り合いをディナーに招待した際に、帰国売りも行ってしまうのだ。やり方は簡単。自宅でパーティーを開く際に、処分したい家具やその他の用品に「セットで50ポンド」「ここにあるDVDはすべて1本3ポンド」といった張り紙をつけておくだけ。この帰国売りパーティーを通して一定数の知り合いに挨拶を終えた頃には、余分な荷物をかなり処分できているはずだ。
左)帰国売りを兼ねたパーティーを開けば一石二鳥
右)処分したい物に張り紙をつけるだけ
それでも余ってしまった品物は寄付
チャリティー団体に寄付する
個人広告やフリー・マーケットを通じて売り渡したり、知人に提供しても、それでも余ってしまう服やキッチン用品などはどうしても出てくる。こうした品物を捨ててしまうぐらいなら、チャリティー・ショップにまとめて寄付しよう。英国で最も広く知られているのが、全国に1000以上の店舗を持つオックスファム。海外の貧しい国への支援を積極的に行っている世界有数の非政府組織(NGO)であり、寄付された古着や古本の売上は、海外の支援プロジェクトにあてられる。最寄りの店舗に品物を持っていき、店員に直接渡すか、もしくは所定の場所に放り込むだけで寄付ができる。www.oxfam.org.uk
左)オックスファムのチャリティー・ショップに勤める店員たち
右)中古品が並んだ店内
日本への送付物や不要品などの片付けを始めとする引越しの準備は、まさに帰国日の直前まで続く。長丁場となるので、ある程度の目処が立った時点で、息抜きすることも重要。いざ在住者となってしまうとなかなか体験できなかった観光や英語の試験の受験、さらには友人への最後の挨拶などにも一定の時間を割きたい。
旅行者として最後の日々を過ごす
観光に出掛ける
英国で長く生活したといっても、多くの時間は仕事や日常生活などに費やされるので、近場の観光名所へ訪れたことがないという人は意外と多い。大英博物館やストーンヘンジといった定番の観光地のほかにも、長期滞在者としてはなかなか訪れる機会がなかった場所に赴けば、今まで知らなかった英国の魅力に気付くかもしれない。
ロンドンの劇場前などでよく見かける、主に観光客を相手とする人力車。 | ロンドン市内の観光名所を周遊する観光バス。この街に関する新たな発見があるかも。 | |
ロンドン・アイなど、定番の観光スポットを訪れていない人は意外と多い | ロンドン在住者であれば、カンタベリーなどに日帰りで出掛けるのもいい |
英語が衰えないうちに英語の各種試験を受ける
日本に戻ると、また日常に戻り、悲しいかな、英語に触れる機会はぐっと減ってしまう。渡英当初、あれだけ苦労して身に付けた英語を衰えさせるだけというのはもったいない。そこで、せっかくの英語力が錆びつかないうちに、英国で英語の各種試験を受けておくというのはどうだろう。子供を連れて、一緒に試験に臨むというのもいい。
英検 日本で最も幅広い層に知られている英語試験。 6月、10月、1月の年3回実施。 www.eiken.or.jp |
TOEIC ビジネスの現場における英語でのコミュニケーション能力を測るテスト。年8回実施。 www.toeic.or.jp |
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ケンブリッジ英検 2日間にわたるという大掛かりな試験。試験結果は生涯有効。 種類によって年2〜3回実施。 www.cambridgeesol.org |
IELTS 英国留学を目指す生徒の間で人気が高い。年48回実施。 www.ielts.org |
日本に帰国したら、しばらくご無沙汰していた友人や元同僚といった人々との久しぶりの再会が待っている。そんな機会に便利なおみやげ。また、もうしばらく訪れることのない英国ならではの商品を自分のために買っておきたいという気持ちもあるだろう。ここでは日本人に人気のおみやげを厳選して紹介する。
英国のお土産の王道
ハロッズのテディ・ベア
Peek a Poo Bear £12.45
英国人作家のアラン・アレキサンダー・ミルンは、息子の誕生日にハロッズで購入したテディ・ベアをプレゼントした。そのぬいぐるみを可愛がる息子の様子をヒントにして創られたのが、かの有名な「クマのプーさん」の物語。サイズやデザインの異なる様々なバリエーションが揃えられている。
www.harrods.com
不特定多数の人に配布できる
フォートナム・アンド・メイソンの紅茶
F&M 25 Teabags £3
日本に住む日本人が、「英国」と聞くとまず思い浮かべるのが紅茶。しかもお土産としては比較的軽いので、持ち運びがしやすいのもうれしいところ。安価で購入できる上に、保存がきいて、かつ多くの人に配布できるティー・バッグは、隣人や同僚など不特定多数の人にお土産を配るときに便利。
www.fortnumandmason.com
安価で買える英国ブランド
キャス・キッドソンのバッグ
London Carry All Bag £25
現地で購入すると種類が豊富かつ割安という理由で、英国で生産されているブランド商品をお土産として望む声も多くあるはず。そして日本で人気を集める英国ブランドの中で、比較的リーズナブルな値段で購入できるのが、可愛い模様がプリントされたインテリア・雑貨を扱うキャス・キッドソン。小さな投資で、大きく喜んでもらえるはず。
www.cathkidston.co.uk
頑張った自分へのご褒美に
ジョン・ロブの革靴
Leather Shoes £2728
引越し作業を頑張った、さらには数年にわたって英国生活を無事に乗り切った自分にもご褒美を。オーダーメイドの靴ブランド、ジョン・ロブは、英国で最高級の男性用革靴を販売している。お店で型を一度作ってしまえば、あとは日本に帰国してからもオンラインにて注文可。英国紳士の気分を日本でも味わえる。
www.johnlobbltd.co.uk
在英邦人だけが買える限定品
ロンドン三越限定のキティ・グッズ
Hello Kitty London Mitsukoshi Original Eco Bag Hello Kitty London Kitty Key Rings
エコ・バッグ £5.98 キー・リング £4.50
ロンドン三越とハローキティのコラボレーションでできあがった3000枚限定のエコ・バッグ。キャンバス・コットン生地に、英国を象徴する衛兵に扮したキティが描かれた特別デザインで、持ちやすい4センチ幅のハンドルを使用している。またロンドン・バスに乗ったキティの携帯ストラップも販売中。
www.london-mitsukoshi.co.uk
免税店リスト
帰国準備のどたばたで、おみやげ購入の時間が取れなかった、または最後までできる限り多くのおみやげを買っておきたいという人にとって便利なのが、空港内にある免税品店だ。以下は、大多数の在英邦人が帰国時に利用する、ヒースロー空港に設置された英国ならではの高級ブランド品店の数々。
ターミナル1 | Barbour, Burberry, Harrods, Mulberry |
ターミナル2 | 閉鎖中 |
ターミナル3 | Harrods, Mulberry, Paul Smith, Smythson |
ターミナル4 | Cath Kidston, Harrods, Mulberry, Paul Smith |
ターミナル5 | Harrods, Mulberry, Paul Smith, Smythson |
免税の申請
商品そのものの値段に対して、実に17.5%もの金額が課される英国の付加価値税。日本に帰国するに際して、一度払ったこの付加価値税の免除を受けるためには、まず、お土産を購入したお店で、免税申請書類をもらうこと。この書類を、最終出国地の空港内(通常は出発口に入る前の場所)に設置されている「VAT Exports」に提出する。
帰国日直前は、本当に慌しい日々が続く。しかも、会社での仕事の引継ぎや知人への挨拶などにも追われて、肝心な引越しの準備は後回しになってしまいがち。そこで、忙しい毎日の中でも忘れ事のないようにと、最低限のやるべきことを記したチェック・リストを用意した。さらに自分なりの予定を書き込むことで、このリストを活用してほしい。