パンケーキ
Pancake
先週の火曜日はパンケーキ・デーでしたね。皆さんは何枚パンケーキを召し上がりましたか?そのパンケーキはホットケーキ?それとも英国風パンケーキだったでしょうか?
ご存知の方も多いと思いますが、英国のパンケーキはひらひらと薄く、クレープにそっくりです。これに砂糖をかけ、レモンを絞ってくるくるっと巻いてフォークとナイフでうやうやしく食べるというのが英国流。私にこの食べ方を教えてくれたのは、来英後最初に暮らした下宿先の家族でした。そこには可愛い男の子の兄弟がいたのですが、当時8歳だった弟のジョーが、パンケーキ・デーにこの英国風パンケーキを焼いてくれたのです。
「見ててよ」にっこり笑うと、両手で持ったフライパンの柄を振り、パンケーキを空中でひっくり返してそれをキャッチ。「ラブリー!」と私が言うと、ジョーは得意になって同じパンケーキを3回も空中回転させて見せてくれました。英国でのパンケーキ作りでは、この「空中でひっくり返す」というのが重要なポイント(?)のようで、バッキンガムシャーのオルニーという町で15世紀から開催されているパンケーキ・レースでも、レースの最初と最後でパンケーキを1回ずつひっくり返すことが義務付けられています。
パンケーキ・デーというのは、キリスト教による「告解の火曜日(Shrove Tuesday)」という日に当たります。これは「レント(Lent: 四旬節)」と呼ばれるイースター前の40日間(日曜日を入れると46日間)を断食して過ごす期間と関係しています。レントの初日は「灰の水曜日(Ash Wednesday)」と呼ばれますが、その前日が告解の火曜日。断食を始める前日、家に残っている卵や牛乳、砂糖などを使い切るためにパンケーキを焼いたことから、英国ではこの日を別名パンケーキ・デーと呼ぶようになったのです。
ちなみに、オルニーがパンケーキ・レース発祥の地となったのは、告解の火曜日に、家事に追われていた主婦のおかげだと言われています。教会のミサを告げる鐘の音が鳴った時、彼女が「ミサに遅れてしまう!」と慌ててパンケーキを焼いていたフライパンを持ったまま教会に駆け込んだことがきっかけとなりました。
現在ではレント期間に厳格な食事制限を行っている人は少ないですが、マーケティング効果のおかげか、パンケーキ・デーの習慣だけはこの国にしっかり根付いているのです。
もちろん、パンケーキ自体は英国だけでなく世界各地で食べられています。既にローマ時代の「Apicius」という料理書に、パンケーキに大変近いレシピが載っていたといいますから、英国でもローマ人が支配していた時代から食べられていたと考えられます。ただ、あまりにも一般的だったせいか、パンケーキのレシピが英国の文書に現れたのは17世紀の記録が最初とか。オルニーのパンケーキ・レースが始まってから2世紀を経てようやくだったのですね。
英国風パンケーキ(約10枚分)
材料
- 小麦粉 ... 120g
- 塩 ... ひとつまみ
- 卵 ... 1個
- 牛乳 ... 300ml
- 砂糖 ... 適量
- レモン(市販のレモン果汁でも) ... 1~2個
- バター(またはサラダ油) ... 適量
作り方
- ボウルに小麦粉と塩を入れて混ぜておく。
- ❶の真ん中に卵をいれ、半量の牛乳を加えて混ぜる。
- 残りの牛乳を加えてさらっとした生地になるまで混ぜる。
- フライパンを熱してバターをひき、フライパンを傾けながら生地を薄く広げる。
- 生地に火が通ったら、フライパンの柄を持ってパンケーキをひっくり返す。
- 両面が焼けたら出来上がり。好みの量の砂糖を振りかけ、レモン汁を絞って召し上がれ。
memo
日本のホットケーキ・ミックスと同様に、英国でもパンケーキ・ミックスなるものが販売されています。ボトル入りのものだと、水を加えて振り混ぜ、焼くだけの簡単さです。