クリーム・ティー
Cream Tea
初めて「クリーム・ティー」と聞いたとき、日本でいうウィンナ・コーヒーのような、ホイップ・クリームがたっぷりと載った紅茶を思い浮かべたのは私だけでしょうか。紅茶の飲み方の一種のように聞こえるこのクリーム・ティーとは、紅茶と一緒にスコーンとクロテッド・クリーム、イチゴ・ジャムをセットにしたものです。現在では英国中のティー・ルームや、時にはパブなどでもいただけますが、特にデボンとコーンウォールのものが有名です。というのも、クリーム・ティーに欠かせないクロテッド・クリームは、この地方の名産なのです。この2つのエリアでは、食べ方の流儀が違っていて、それがたびたび議論の的になっています。スコーンにつけるクロテッド・クリームとイチゴ・ジャムをどの順番で載せるのかという点で……。
半分に割ったスコーン。デボンではまずクリームをたっぷり塗り、その上にイチゴ・ジャムをつけます。一方、コーンウォール風は、まずはジャムを一面に塗って、その上にスプーンですくったクロテッド・クリームをぼとんっ、と落とします。どちらにしても、クリームはとにかくたっぷり、というのがお約束です。
それにしてもこの「ジャムが先か、クリームが先か」の論争は、BBCや「ガーディアン」紙などのマスメディアでも一度ならず取り上げられているほど。クリーム・ティーの発祥はデボンで、それゆえ「デボン・クリーム・ティー」が正式なものだとデボンの人々は主張します。その理由は、コーンウォールにほど近いデボン西部のタビストックという町にあったタビストック修道院で古い記録が見つかったこと。997年にバイキングたちによって破壊された修道院を建て直すため、多くの地元の労働者が協力しました。その彼らに修道士たちがふるまったのがパン、クロテッド・クリーム、そしてイチゴ・ジャム。つまりクリーム・ティーの元祖というわけです。
とはいえ、クリームが先かジャムが先かの記録が残っているわけではありません。こうなったら、デボン出身の義母に聞いてみなければ、と電話で確認してみました。義母いわく、どちらが正しいかは知らないけれど、自分はクリームを先に塗るとのこと(やっぱり!)。「デボンではクリームの方がたくさんあるから、それを下にしてたっぷりつけ、貴重な(?)ジャムは上に少しだけつけた、と聞いたこともあるような気がするけれど」と言った後、「それにジャムの上からクリームは伸ばしにくいから、クリームが先の方が理にかなっていると思う」と、やはりデボン風が正統と、言い含めるような口ぶりでした。
電話の後、改めてクリームが先とジャムが先で試してみました。義母を立てるわけではありませんが、確かにデボン式の方がつけやすくて、かつ見た目にも美しい気が……。
さて、皆さんはどちらの食べ方がお好みでしょうか?
簡単ミニ・スコーンの作り方(15個分)
材料
- 小麦粉 ... 300g
- ベーキング・パウダー ... 小さじ2.5杯
- バター ... 60g
- 砂糖 ... 60g
- 塩 ... 少々
- 卵 ... 1個
- 牛乳 ... 170ml
作り方
- 小麦粉、ベーキング・パウダー、塩をボウルに入れ、さいの目に切ったバターを加えて指先でぽろぽろのそぼろ状になるよう混ぜる。
- ❶に砂糖を混ぜる。
- 別のボウルに卵と牛乳を混ぜる(大さじ2杯分をよけておく)。
- ❷に❸を入れ、フォークで混ぜ合わせる。
- 打ち粉をしたまな板の上で❹を軽くこね、2cm程度の厚さに広げる。
- 直径5cmの型で抜き、ベーキング・トレイに並べる。
- ❻の上に❸でよけておいた卵と牛乳を混ぜた液を刷毛(はけ)で塗る。
- 220℃に予熱したオーブンで10~15分程度焼く。表面がきつね色になり、スコーンが十分に膨れ上がれば出来上がり。
memo
クロテッド・クリームはデボンやコーンウォールの特産品ですが、最近ではコーンウォールのRodda'sというメーカーのものなどが、英国各地のスーパーで手軽に購入することができます。