イースター・ビスケット
Easter Biscuit
今のこの時期のスーパーには、チョコレートで出来たイースター・エッグの箱が山のように積み上げられています。卵型のチョコレートは英国のイースターに欠かせない食べ物ですが、今日ご紹介するのは、大量のイースター・エッグの隅っこに並んでいた「トラディショナル・イースター・ビスケット」です。
さっそく買って家に戻ると、夫が「これは昔、イースターにおばあちゃんが作ってくれていた。懐かしいなあ」と言いました。私がこのビスケットを見たのは初めてでしたが、「トラディショナル」の言葉通り、どうやら古くからあるお菓子のようです。
普通のビスケットよりはかなり大きく、直径8センチほどの円盤型。カランツがポツポツと混ざっていて、上には砂糖がかかっています。見るからに紅茶に合いそうなお菓子は、口に入れるとふわりとシナモンの香りがして、食欲をそそります。ショート・ブレッドにも似た、サクサクとした食べ応え。「食べきれるかな?」と思った大きなビスケットは、しっかり2個もお腹に収まっていきました。
夫のおばあちゃんのレシピを義母にメールで問い合わせると、なんと2日後には、レシピ付きの手紙とともに、手作りのイースター・ビスケットが送られてきました。すぐに紅茶を入れて試食です。市販のものよりも歯ごたえがあるのが、私好み。シナモンではなくレモンの皮が入っていて、そのほんのりした苦味が良いアクセントです。
手紙には「母は製菓用マーガリンを使っていたけれど、最近では添加物の問題などもあるので、私はバターを使っています。大きさや、中に入れるものなど、各家庭で独自のレシピがあるはず」と添えられていました。
調べてみると、確かに義母と同様にレモンの皮を入れるもの、市販品のようにシナモンを入れる作り方や、製菓用のオール・スパイスを使ったタイプもありました。中でも珍しいのが「カシア・オイル」というものを数滴加えるレシピです。カシアとは学名Cinnamomum cassia、別名チャイニーズ・シナモンとも呼ばれる中国原産の常緑高木。日本で「ニッキ」として使われているのはこの木の根の皮で、カシア・オイルは葉を水蒸気蒸留した精油です。
元々、イースター・ビスケットは英南西部、サマセット地方が発祥といわれていますが、中でもこのオイルを使うのは特にブリストル周辺に限られているよう。貿易港なので、こうした珍しいものを輸入できたから、という説がありますが、なぜこの地域でだけカシア・オイルが使われるかの理由は謎です。
さて、この精油を入れてビスケットを焼いてみると、日本人には馴染みのある「ニッキ」の風味! 遠く離れた英国の地で、突然、京都名物の「八つ橋」を思い出してしまった私です。
イースター・ビスケットの作り方
(直径8センチの菊型、約10個分)
材料
- 小麦粉(プレーン・フラワー) ... 226g
- バター(または製菓用マーガリン) ... 113g
- カスター・シュガー(仕上げに上からかける分は別) ... 113g
- レモンの皮(すりおろし) ... 1個分
- 卵 ... 1/2個(生地が固過ぎる場合には1個分使用)
- カランツ ... 56g
作り方
- ボウルに小麦粉とバターを入れ、指先を使ってぽろぽろのそぼろ状になるよう混ぜる。
- ❶にカスター・シュガー、レモンの皮、カランツを加えてよく混ぜる。
- ❷に卵を加えてよくこねてまとめる。
- ➌を約6ミリ程度の厚さに伸ばし、直径約8センチの型で抜く。
- 180℃に余熱したオーブンで約15~20分焼く。
- 熱いうちに上からカスター・シュガーを振りかけて出来上がり。
memo
レシピは義母のお母さんから伝わるものです。カシア・オイルを使う場合は、レモンの皮の代わりにオイルを4~5滴加えてください。オイルは小売店などで見つけるのは難しいかもしれませんが、オンラインで購入可能です。