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Sun, 03 November 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 100

イングリッシュ・スパークリング・ワイン
English Sparkling Wine

English Sparkling Wine

「素晴らしい料理で有名な日本の人たちが、どうして英国の食べ物なんかに興味があるの?」「自慢できる英国の食べ物なんて、フィッシュ&チップスとロースト・ビーフだけだよ」

私が「英国のおいしいもの」について話を聞かせてほしいと頼むたび、自虐好き(?)の英国人たちからはよくこんな言葉が返ってきました。

でも、この連載もなんと今回で100回を迎えました。つまり、これまでに99種もの「英国の口福」が見つかったのです。これはもうお祝いするしかありません!ということで、今回はお祝いにふさわしく「イングリッシュ・スパークリング・ワイン」をご紹介したいと思います。

英国のパーティーで欠かせないものといえば、何と言っても「フィジー」「バブルズ」などと呼ばれる発泡性ワイン。シャンパンを始め、プロセッコやカヴァなど英国で飲まれている種類はたくさんありますが、このところ注目を集めているのが英国産のスパークリング・ワインなのです。

英国人がワイン好きというのは世界的によく知られているところですが、そのほとんどは輸入に頼っています。だから、英国でもワインが作られていて、それがとてもおいしいと言っても、15年ほど前までなら、きっと誰も信じなかったのではないでしょうか。というのも、日照時間が短く、気候も寒冷なこの国は、ブドウ栽培には適さないとされてきたからです。ところが、地球温暖化の影響で気温が変化したこともあり、フランスのシャンパーニュ地方と同様に石灰質の土壌をもつ英南東部を中心に、シャンパンに劣らないほど質の高いスパークリング・ワインが次々と作られるようになってきました。生産量では英国産ワインの約69%がスパークリング・ワインだといいます。

私がある雑誌の取材で英南東部ケントやサセックスにあるヴィンヤードを巡ったのは6年前。ワインの国際コンペでベスト・スパークリング・ワイン賞を受賞したナイティンバーや、ウィリアム王子の結婚式で供されたチャペル・ダウン、ロンドン五輪の公式スパークリング・ワインに選ばれたハッシュ・ヒースなどのワイン・メーカーを訪ね、テイスティングをさせていただきました。それぞれに特徴があり、一方でそのどれもが爽やか、かつフレッシュな飲み心地で、感動したのを覚えています。

プロセッコやカヴァよりは若干価格が上となりますが、品質は同等でありながら、シャンパンより手頃なものが多いイングリッシュ・スパークリング・ワイン。種類も増え、国内のスーパーでも気軽に買えるようになってきたので、この夏、ぜひお試しを。私もこの原稿を書き終えたら、連載100回を祝って乾杯したいと思います。Cheers!

イングリッシュ・スパークリング・ワインを使ったバックス・フィズの作り方

材料

  • イングリッシュ・スパークリング・ワイン ... 全体の2/3
  • オレンジ果汁 ... 全体の1/3

作り方

  1. オレンジを絞った果汁を冷蔵庫で冷やしたものをフルート・グラスに注ぐ。
  2. ❶の上からイングリッシュ・スパークリング・ワインを注ぎ、かき混ぜたら出来上がり。
memo

バックス・フィズはロンドンのメイフェアにあるジェントルメンズ・クラブ「バックス・クラブ」のバーテンダーが1921年に考え出した飲み物です。オレンジ果汁とスパークリング・ワインの他にコニャックやグレナディンを加えるとも言われますが、オリジナルのレシピは門外不出のようです。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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