4月13日付「ガーディアン」紙は、学生ビザを利用して英国に入国し、現地で就労しようと考えるパキスタン人を取り締まるため、同国の学生ビザ申請者には、事前にパキスタンの英国領事館で英語の面接テストを実施するという内務省の計画を報道しました。これまでに試験的な調査を実施した結果、パキスタンからの学生ビザ申請者の約40%が、学生として英国に暮らすにはあまりに語学力が不足していたことから、就労目的で渡英したことが明らかになったという経緯によります。この調査はインドや中国などほかの13カ所でも実施され、平均でおよそ17%の申請者が学生としては不適格であることが確認されました。
ポイント制度のもとで発給されるビザのうち、約3分の2を学生ビザが占めると言われます。しかし昨年には、学位レベルではない語学学校などの生徒の実に7人に1人が、就労を目的として英国に滞在しているという調査結果が発表されました。このため政府は、学生ビザ制度の厳格化によって偽学生の摘発に一層力を入れて行く方針を打ち出しており、今年4月6日に施行された改革は、この点についてより一層強化されたものになっていると言えるでしょう。
今回は、学生ビザの悪用を取り締まるべく強化された点について説明します。まず、学生ビザのスポンサーとなる学校はすべて、「信頼度の高い学生ビザ・スポンサー(Highly trusted sponsors)」として国からの認定を受けなければなりません。それに加え、これから新たに登録する学校は、教育水準監査院(Ofsted)などの監査機関からの評価も併せて必要となりました。さらに、2012年末からは、新旧を問わずすべての学校機関がこの二重証明を行うことが必要となります。これは上記のような偽学生たちの受け皿として存在する、名前だけで実際は機能していない学校が、多く存在することが明らかになったことから、昨年から段階的に変更されている改革の一つです。
それと同時に、学生の就労規定を厳格化しています。学位レベルの学生は週20時間、学位レベル未満の学生は週10時間の就労が認められていますが、学位レベル未満で公立の継続カレッジ(ディプロマ・コースなど)以外の学生、つまり私立の語学学校などに通う学生の就労を禁止しています。また、学位レベルの学生が学生ビザで滞在できる期間は、一部のコースの例外を除き、最長5年までと制限されることになりました。
そして、学生ビザを申請するに当たり証明が必要となる、1カ月に必要とされる資金(学費以外の生活費など)の提示額が、2008年以来の上昇となっています。これは物価の高騰もありますが、就労せずとも自立して暮らしていけるだけの資金を持ち、学問に励むべきというメッセージでもあるでしょう。
現在、日本人に対して学生ビザ申請の際、領事館での面接が課されるようになるというニュースはありません。しかし、いずれ欧州経済領域(EEA)加盟国以外の国のすべての申請者の身に降りかかることかもしれず、どちらにせよ、偽学生などと疑われないよう、準備を整えることが大切です。準備不足や理解不足でせっかくのチャンスをふいにすることがないよう、常に最新の情報を入手し、申請手続きは専門家と二人三脚で、着実に進めることをお勧めします。