年代ものの価値を認め、大切にすることで知られる英国。
建築物も例外ではなく、街のそこかしこで歴史を感じさせる建物が
見られるのは誰もが知るところだ。最近では、
廃屋寸前だった建物内部を改装し、新施設としてよみがえらせる
プロジェクトも行われるようになってきた。そこで今回は、
古い建物を再利用したレストラン&バーに的を絞ってご紹介。
倉庫で、学校で、はたまた駅舎で。
単なる食事という枠に収まり切らない、
新たな食体験をお試しあれ。
Galvin La Chapelle
ミシュランのフレンチを
廃屋と化していたヴィクトリア朝時代の学校建物を救おうと、近隣住民が約20年前に保全活動を開始。その甲斐あって、歴史的価値を有する「グレードⅡ建造物」に指定されたのがこの建物だ。気鋭のフレンチ・シェフ・コンビ、ガルヴィン兄弟の手によりレストランとなったのは、2009年のこと。開店から1年のうちにミシュランから1ツ星を獲得する快挙を成し遂げている。学校だったころには300人以上の生徒が集ったというチャペル部分は、天井までの高さが30メートルあり、当時のままの梁が重厚な趣を感じさせると同時に、すっきりとして清々しい空間を作り出している。1ツ星レストランとはいうものの、リラックスしたサービスで気取りがないのがうれしいところだが、ドレス・コードは「スマート・カジュアル」なので気を付けて。環境保護の観点から、農業・漁業の持続可能性にも留意しており、材料はすべて小規模業者からオーガニックのものを買い付けている。
店名 | Galvin La Chapelle |
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住所 | 35 Spital Square, London E1 6DY |
TEL | 020 7299 0400 |
最寄り駅 | Liverpool Street駅より徒歩3分 |
オープン | 月~土 12:00-14:30/18:00-22:30 日 12:00-15:00/18:00-21:30 |
Website | www.galvinrestaurants.com |
Wapping Food @ The Wapping Project
地方自治体からの補助を受け、ロンドン東部ワッピングで行われている地域再開発事業「ワッピング・プロジェクト」。「ワッピング・フード」はその一環として、アートと食の融合を目指した独特の世界を展開している。元水力発電所というだけあり、通常イメージするレストランの規模とはまるで異なる大きさ。巨大なクレーンやタービンといった普段目にすることのないオブジェが鎮座するギャラリーのような空間に、訪れる人自身も作品の一部になったかのような気分になりそうだ。店内奥のがらんとした工業用スペースでも、暗闇の中、インタラクティブ・アートの展示が進行するなど、とにかく実験的。メニューも中東の野菜「ルリチシャ」や海辺で採れる「アッケシソウ」を使った天ぷらなど珍しいものが多くそろう。映画のサウンド・トラックが静かに流れる中、装丁の美しい様々な雑誌や書籍も売られ、細部までスタイリッシュ。非日常を体験できそう。
*このお店は閉店しました
店名 | Wapping Food @ The Wapping Project |
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住所 | Wapping Hydraulic Power Station, Wapping Wall, London E1W 3SG |
TEL | 020 7680 2080 |
最寄り駅 | Wapping駅より徒歩4分 |
オープン | 月~金 12:00-15:30/18:30-23:00 土 10:00-12:30/13:00-16:00/19:00-23:00 日 10:00-12:30/13:00-16:00 |
Website | www.thewappingproject.com |
PipsDish
付近まで行くと、路上に看板。誘われるまま建物の間の細い小道へと入れば、突き当たりにレストランが現れる。見過ごしてしまいそうなお店は、とっておきの隠れ家のようだ。こぢんまりとテーブルの並んだ店の前に立って見上げると、目の前にそびえる大きな建物は、車を整備するガレージそのもの。そこをさっぱりと整理しておしゃれな雑貨を並べ、クリエイティブなレストランにしたセンスに脱帽だ。多忙なフード・ライターでもあるオーナー・シェフのスケジュールの都合で、同店は木曜から日曜のみのオープン。英国とギリシャ料理を中心に、モダン・ヨーロピアンにアレンジしたものを出している。友達の家を訪れた感覚を味わってもらいたいというシェフの思いから、金・土のディナーは3コース、日曜のランチはサンデー・ロースト、といった風にメニューは限られているが、詳細はその日のシェフの気分次第。お楽しみに。
*このお店は閉店しました
店名 | PipsDish |
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住所 | 133B Upper Street, London N1 1QP |
TEL | 07503 293 438(要予約) |
最寄り駅 | Angel駅より徒歩4分 |
オープン | 木19:00~ 金、土19:30~、20:00~、20:30~、21:00~ 日12:45~ |
Website | www.pipsdish.co.uk |
The Doodle Bar
近所の製氷工場と提携して、アイスクリームを作っていたというヴィクトリア朝時代の乳製品倉庫が、イベント・スペース兼レストラン・バーとして新たにお目見え。エッジの効いた新しいコンセプトが好きな人にはたまらない、刺激的な空間となっている。食事は、敷地内に常駐のストール、「ストリート・キッチン」から各自調達し、持ち込む形式。あえてシンプルな味付けにして、自慢の新鮮なオーガニック野菜やフリーレンジ素材の味を堪能できるようにしてあり、ベジタリアン向けの料理も扱う。また、料理を入れてくれる箱は大地に戻せる素材で作られており、環境への配慮も抜かりがない。面白いのが、バーにある大きな黒板にチョークで落書きがし放題なこと。低めのテーブルや椅子も教室のようで気取らず、仲間とワイワイ楽しめそう。隣接したスペースでは、美大の先生やモデルを招いての華やかな写生クラスなども開催。要チェックだ。
*このお店は閉店しました
店名 | The Doodle Bar |
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住所 | 33 Parkgate Road, London SW11 4NP |
TEL | 020 7223 7115 |
最寄り駅 | Clapham Junction駅より徒歩15分 |
オープン | 火~木 11:00-23:00 金 11:00-0:00 土 13:00-0:00 |
Website | www.thedoodlebar.com |
Rochelle Canteen
昔は子供たちがおしゃべりしながら出入りしたであろう、閉校した学校の校門。「BOYS」と彫られた濃い緑のドアを入ると出くわすのは、小さな校庭だ。その芝生の校庭に面した屋根付き自転車置き場を改造したレストランがこちら。学校の自転車置き場を使うというちょっと突飛なアイデアは、オーナーが元々はこの学校の敷地内でケータリング・サービスを運営していたことに由来するのだそう。店内のテーブルや椅子は、学校を思い出させる懐かしいデザイン。壁にも、小学校にあったかばん掛けを彷彿させるフックがずらり。子供のころに戻ったような楽しい気分にさせてくれる。「給食の献立」にあるのは、ほぼすべて英国産の、季節のオーガニック食材を使った英国モダン料理。「モリバト、白豆とグリーン・ソース添え」や、羊の腎臓を使った伝統的な英国の朝食「デビルド・キドニー」など興味深い料理が並ぶ。メニューは毎日変わるのでウェブサイトでチェックして。
店名 | Rochelle Canteen |
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住所 | Rochelle School, Arnold Circus, London E2 7ES |
TEL | 020 7729 5667 |
最寄り駅 | Shoreditch High Street駅より徒歩2分 |
オープン | 月~金 9:00-16:30 |
Website | www.arnoldandhenderson.com |
St Chad's Place
建築家が、「事務所近くで売り出されていたから」というお茶目な理由で倉庫を改造し、高い天井のガラス窓から青空がのぞく、広々とした食空間に変身させてしまったのだという。素朴なむき出しの木材が昔の面影を色濃く残しているが、直線的なラインがモダンでもあるこなれた空間だ。金曜はがらりと雰囲気を変え、DJもいるバーになるのが受け、「ガーディアン」紙のトップ10パブに選ばれたというが、普段は季節の食材にこだわるレストラン。店内では、近隣のオフィスから来たのであろうビジネスマンのグループが打ち合わせをしていたり、テイクアウェイを買いに訪れる人たちがリラックスした表情で出入りしていたり。天井から降り注ぐたっぷりの光を浴びて、皆一様にくつろいでいるのが見て取れる。看板メニューの「蟹とさつま芋のコロッケ」は、ほんのりスパイシーで大人の味。食後にはぜひ、ネクタリン・コンポートが添えられた絶品「パンナコッタ」を。
*このお店は閉店しました
店名 | St Chad's Place |
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住所 | 6 St Chad's Place, London WC1X 9HH |
TEL | 020 7278 3355 |
最寄り駅 | King's Cross St. Pancras駅より徒歩2分 |
オープン | 月~金8:00-23:00 (金曜は17:00からバー) |
Website | www.6stchadsplace.com |
Tooting Tram & Social
1960年代まで実際に利用されていたという、ヴィクトリア朝時代のトラム駅を利用したバー。5年前までは学生向けのガストロパブだったそうだが、現オーナーがインテリアを一新すると客層が一変、20~30代のお客さんを中心に誰もが気楽に訪れるバーとなった。高さ23メートルの天井を見上げると、ざわめく昔の駅に思いを馳せることができるほど、当時の面影がある。建物を見に遠方からわざわざ訪れる人も多いそうだ。駅独特のメタリックな骨組み、煌めくレトロなシャンデリア、壁にかかったビンテージ風フレームなどが醸し出すクールな雰囲気は、美的感覚の鋭い人も満足できそう。それでいてスタッフは気取らず親切で、そのさわやかな接客に安心できるのか、女性だけのグループもちらほら見受けられる。週末は、リクエストに応え、多様なジャンルの曲をかけるDJイベントやビンゴ大会、バザーなど、趣向を凝らして楽しませてくれる。皆に愛されるバーだ。
店名 | Tooting Tram & Social |
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住所 | 46-48 Mitcham Road, London SW17 9NA |
TEL | 020 8767 0278 |
最寄り駅 | Tooting Broadway駅より徒歩30秒 |
オープン | 火~木・日 17:00-0.00 金、土 17:00-翌2:00 |
Website | https://tootingtramandsocial.co.uk |
Bistrotheque
ダイニング・スペースに
工場そのものの厳つい外観からは、ここがトレンド・セッターも集う店だとは想像しにくい。古い倉庫や工場の立ち並ぶこの付近では、「こんな所にこんなしゃれたお店が?」と驚かされることは珍しくないが、こちらはロンドンの道を知り尽くしたタクシー運転手すら目を丸くするのだとか。そんな無愛想な外観とは不釣合いな、シックでミニマルなインテリアが印象的な同店は、2004年の開業以来、地元っ子はもちろん、遠方からのお客さんも惹き付けている。この5月に誕生したバーも、カウンターに使われている木材「マチーチェ」にちなんで「マンチチ・バー」との愛称で呼ばれ、大人気だそう。料理は、英国とフレンチのミックス。英仏各地から食材を買い付けているが、魚介類は主に、英南部で持続可能な漁業を通して獲れるものにこだわっている。チーズは国内各地の小規模酪農家や職人の手による逸品ぞろい。100人収容できる貸切スペースもある。
店名 | Bistrotheque |
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住所 | 23-27 Wadeson Street, London E2 9DR |
TEL | 020 8983 7900 |
最寄り駅 | Bethnal Green駅より徒歩7分 |
オープン | 月~木 18:00-22:30 金 18:00-23:00 土 11:00-16:00/18:00-23:00 日 11:00-16:00/18:00-22:30 |
Website | www.bistrotheque.com |
ロンドンの再生建物レストラン を表示
取材: Nonny
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