数多い在英中国人のお陰で、本場の飲茶が楽しめるロンドン。お洒落なレストランで食べるヨーロピアン料理も素敵だけれど、気の合う仲間数人でテーブルを囲み、ワイワイガヤガヤと点心をつつく時間はやっぱり楽しい。気取らず気軽に食事を楽しみたいなら、やっぱり飲茶。さあ、美味しい点心を食べに出掛けよう。
飲茶名人が語る飲茶のお話
飲茶名人 パトリックさん
「ロイヤル・チャイナ」ヘッド・マネージャー
忙しいレストランを切り盛りするパトリックさん。客をより満足させるようにとの気配りや行き届いたサービス精神には感心させられること請け合い。
飲茶の始まりは?
飲茶の習慣の始まりは定かではありませんが、一説によるとシルクロードだと言われています。まず、長旅に疲れた旅人のための休憩所ができ、そこでお茶が振る舞われたようです。しばらくすると、その近辺に暮らす農夫たちもお茶を楽しむために休憩所に集うようになりました。賑やかになったその休憩所で、お茶だけでなく軽食も出し始めたのが飲茶の原点と伝えられています。
香港では、茶楼や茶居と呼ばれるほとんどの飲茶のお店は朝早くから開いています。お茶と点心を楽しみながら、新聞を読むお年寄りや商談に励む人など、それぞれが思い思いの時を過ごしています。伝統的に飲茶のお店では、点心を出すのはお昼過ぎまででしたが、最近のロンドンでは、ディナーの時間でも点心が食べられるようになってきました。
飲茶と点心ってどう違うの?
飲茶とは、その字の如く「お茶を飲む」こと。あくまでもお茶を飲みながら家族や友人と語らいついでに軽食をつまむ行為が飲茶です。この習慣は、中国の広東省や香港で始まったと言われています。
飲茶の時に出される軽食が、点心(ディム・サム)と呼ばれています。点心は、中華料理の「菜(主食)」と「湯(スープ)」を除いたほとんどの料理を指し、シュウマイや春巻きなどおかず系の点心「鹹点心(シェンデェンシン)」とごま団子や杏仁豆腐などのデザート系の点心「甜点心(ティェンデェンシン)」に分けられています。
最近は点心がランチ代わりに食べられるようになってきましたが、元々は小腹が空いた時用のおやつ的な食事です。だから、かしこまったマナーはありません。あえてマナーを挙げるとするなら、「気の合う仲間と語らいながら楽しく食べること」ではないでしょうか。お茶を頼んだ場合は、お茶を注ぐ作業を交代ですることを忘れずに。
注文する時のコツって?
飲茶をする時には、できるだけたくさんの種類の点心を少しずつ食べたいものです。食べる順序は特にありませんが、味覚が麻痺してしまわないように、あっさりしたものからこってりしたものへ移っていくようにオーダーするのがベスト。蒸し器に入った点心をいくつか頼んだ場合は、積み重ねておくと食べる直前までホカホカに保てます。飲み物は、消化を促す作用のある中国茶(ジャスミン茶、ウーロン茶など)をお勧めします。油っぽい料理も胃にもたれることがありませんよ。
これであなたも飲茶通
テーブルを指でトントン
飲茶中、自分のカップにお茶が注がれた後に、3本指でトントンとテーブルを叩くジェスチャーをする中国人を見かける。これは「ありがとう」を意味する。おしゃべりと食べることに忙しく、口でお礼をいう暇さえもったいないので、テーブルを叩くと言われているが、この裏には実は歴史的な背景があるのだ。清朝の最盛期、当時の皇帝であった乾隆帝はお忍びで中国各地を旅するのを楽しみにしていた。ある時、中国南部でお付きの者たちと共に茶楼に入った乾隆帝は、身分を隠し通すため、お付きの者たちの茶碗にお茶を注いだ。お付きの者たちは、ビックリして床にひれ伏そうとしたが、そうすると皇帝の身分がばれてしまう。そこで皇帝は「床にひれ伏すことはない。中指を頭、人指し指と薬指を両腕を体に見立ててテーブルの上でひれ伏せばよい」と伝えた。この時のジェスチャーが一般に広まり、現在まで受け継がれているという訳だ。
ティー・ポットの蓋を裏返す
お茶がなくなったらティー・ポットの蓋をひっくり返しておく(あるいは、蓋部分が開いているようにする)と「お茶を入れてください」の意味になる。飲茶のレストランに限らず、ガヤガヤと賑やかなチャイニーズ・レストランでは、ウェイターやウェイトレスの気を引くのでさえ大変なことがある。ウェイターの方でも、テーブルに目を配っているつもりでも、ティー・ポットにどれぐらいお茶が残っているのかはなかなか遠目にはわからない。お茶ぐらいはいちいちウェイターを呼ばなくてもお代わりができるようにと生まれた合図がこの「蓋裏返し」なのだ。ただ蓋を裏返していても、ポットの口にぴったりとはまり隙間がないと気付かれないのでご注意を。
飲茶の殿堂「Royal China」が勧める、点心ベスト8
点心師 Po Ming Hoさん
繊細な技術が求められる点心を作る職人は、点心師と呼ばれる。ロンドンの飲茶の殿堂「ロイヤル・チャイナ」で働く香港出身のポーさんは、点心作り10年のベテラン。もっとおいしい点心を作りたいと、研究を重ねる毎日を送っている。
(ソンチムハーカオ)
Prawn Dumpling エビシューマイ £2.60
堂々の1位は、エビの風味が口一杯に広がるエビシューマイ。とろけるような皮、プリプリのエビとどこをとっても文句のつけようのないおいしさ。
(ゴンチャンシューマイ)
Minced Pork Dumpling 肉シューマイ £2.20
細かく刻んだ上質の豚肉を皮にくるみ、アクセントにオレンジ色のカニの卵を乗せたシューマイ。点心の王道をゆくジューシーな舌触り。
(フェーチュイタイチーカオ)
Scallop Dumpling 帆立シューマイ£2.60
材料の色が透けて見え、花が咲いたように見た目にも美しい帆立入りのシューマイ。コクのある帆立の風味が溢れ出し食欲をそそる。
(ユーチュイタオミルガオ)
Mange-tout Leaves Dumplings with Dry Scallop
さやえんどうと乾燥帆立のシューマイ£3.00
材料の色が透けて見え、花が咲いたように見た目にも美しい帆立入りのシューマイ。コクのある帆立の風味が溢れ出し食欲をそそる。
(ホーヤウチャーシューバオ)
Roast Pork Bun 肉まん£2.20
フワフワした皮で甘く味付けされたチャーシューを包んだ肉まん。割った瞬間、皮の甘い香り、チャーシューの香りが広がって食欲倍増。
(チンチャーマックユーベン)
Fried Squid Paste 練りイカの揚げ物 £2.20
細かく刻んだイカを団子状に丸め、油で揚げたもの。アツアツの時に、フィッシュ・ソースをつけて食べよう。
(レイヨンウーゴー)
Yam Paste with Dried Meat ヤム芋の揚げ物 £2.20
すりおろしたヤム芋を団子状にして揚げたもの。温度の高い油と、低い油の両方を使って揚げるので、周りがフワフワとなり、サクサクとした食感が生まれる。
(ラーメイローボーガオ)
Turnip Paste with Dried Meat 大根餅 £2.20
「大根餅」でそのまま通じてしまうほど、日本人客からの注文が多い点心。大根を煮こみ、形を整え蒸した後に焼き上げる。柔らかい食感が中国人家庭でも愛されている。「Royal China」ロイヤルチャイナ
この店なしにはロンドンの飲茶を語れないぐらい有名な飲茶の老舗。カジュアルな飲茶に高級感を持ち込んだのはこの店が最初だ。レストランのキッチンで丁寧に作りあげられた点心は、本当においしく、一度食べたら病みつきに。最近改築が終わったベーカー・ストリート店では、多種のお茶を楽しめるようになったのもうれしい。飲茶を扱うお洒落なレストランが増えてきているが、味を重視するならやっぱりこの店が本命。
営業時間 | 月~土 12:00-23:00 (金・土は23:30まで) 日・祭日 11:00-23:00 *飲茶は17:00まで |
Queen's Way店 | 13 Queensway, London W2 Tel: 020 7221 2535 |
Baker Street店 | 24-26 Baker Street, London W1 Tel: 020 7487 4688 |
St. John's Wood店 | 68 Queens Grove, London NW8 Tel: 020 7586 4280 |
Canary Riverside店 | 30 West Ferry Circus, London E14 Tel: 020 7719 0888 |
変わりゆく飲茶 ─スタイリッシュに飲茶を楽しむ
チャイニーズ・レストランでは初めてミシュランの星を獲得したハッカサン、その姉妹店であるヤウアッチャなど、最近、チャイニーズ・レストランのお洒落化が進んでいる。英国育ちの中国系移民が増えた結果か、味だけでなくプレゼンテーションも大切に考える店が増えてきているのだ。それは飲茶も同じこと。このページでは、モダンにそしてスタイリッシュに飲茶を楽しみたいという方にオススメのレストランをご紹介します。
Shanghai Blues シャンハイ・ブルース
チャイニーズ・ニュー・ウェーブの寵児
昨年2月にオープンしたモダン・チャイニーズ・レストラン。英国で手に入る新鮮な材料を用い、上海流の伝統を踏まえて作られた新しい点心が魅力。また、お茶はワゴンでテーブルまで運ばれ、客の目の前で本格的な方法を用いて入れられるので見ているだけでも楽しい。トニー・ブレア首相も顧客リストに名を連ねているという、これからの発展が楽しみな一軒。
Scallop Dumplings in Spinach Juice Pastry £3.50 | Salmon Dumplings with Gold Flakes £3.50 | Seafood Rolls with Mango £3.50 | ||
ほうれん草を用いた皮でジューシーな帆立のお団子をくるんだ点心。中の帆立のおいしさもさることながら、モチモチした皮にも感動。そして、鮮やかな緑にうっとり。 | 英国産の材料で中国風のお味を追求した結果生まれた、サーモンのシューマイ。日本から輸入したという金箔付きで、気分も豪華に。 | マンゴー入りのシーフード・フライは、これぞモダン・チャイニーズというような一皿。揚げ物なのに全く油っこくなく、サクサクと軽いヘルシーな食感。 |
アンドリュー・ハンさん / ジェネラル・マネージャー
大学では建築学を勉強したというアンドリューさん。しかし、食に対する旺盛な好奇心が高じてレストラン業に転向。シャンハイ・ブルースを含め、ロンドンで3つのレストランをオープンさせてきたというやり手だ。「人はおいしいものを食べた時、自然と顔がほころびます。その満足した顔を見るのがうれしい」と語るアンドリューさんにとって、この仕事は天職。明るく人当たりの良いアンドリューさんの笑顔をお店で見かけたら、遠慮せず声をかけてみて。
営業時間 | 毎日12:00-0:00(ラスト・オーダー23:30) (飲茶は17時まで。但し、17時以降もスターターとして点心を召し上がれます) |
住所 | 193-197 High Holborn, London WC1 |
TEL | 020 7404 1668 |
WEB | www.shanghaiblues.co.uk |
Yauatcha ヤウアッチャ
女友達と行くならこの店
飲茶をファッション化することに見事成功したヤウアッチャは、セレブリティの目撃率が高いことでも有名な店だ。外観やスタイルだけでなく、お味の方も評判でリピーターも多い。中でもジューシーな小籠包はロンドン随一との評判。お洒落に気取って飲茶をしたい場合は、迷わずこの店へゴー。デザート類が夢のように充実しているのもうれしい。
営業時間 | 月~土12:00-14:30 / 18:00-23:30 日18:00-22:30 |
住所 | 15 Broadwick Street, London W1 |
TEL | 020 7494 8888 |
Ping Pong ピンポン
手軽でファッショナブル
インスタントな新感覚で飲茶を提供するピンポンは、ヌードル・チェーンの「ワガママ」の飲茶版といった雰囲気。決して本格的な点心が楽しめる訳ではないが、ファッション性を重視する人には重宝する一軒だ。テーブルに置かれている注文票に、各自取りたいものを記入する気軽なスタイルで若者の人気を呼んでいる。ランチ・セット・メニューが10ポンドほどで食べられるのも魅力。グラスの中で花開くジャスミン・ティーをぜひ試してみて。
*8名以上の場合のみ予約受け付け
営業時間 | 月~土12:00-0:00 日12:00-22:30 |
SOHO店 | 45 Great Marlborough Street, London W1 TEL: 020 7851 6969 |
Westbourne Grove店 | 74-76 Westbourne Grove, London W2 TEL: 020 7313 9832 |
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