ゴーイング・コンサーンについて
以前にもご紹介したゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)は、会計士と企業の双方にとって、近年ますます重要なテーマとなってきました。これは、カリリオンやBHSのような広く知られた企業の経営破綻によって、現在注目されています。ゴーイング・コンサーンは単に「監査に限定された」問題ではなく、財務諸表に適用されるものであり、この財務諸表は企業の経営陣に一定の責任を課すものです。
ゴーイング・コンサーンの定義はどのようなものですか。
企業は、近い将来にわたり事業が継続されると見なされる場合、ゴーイング・コンサーン基準で財務諸表を作成します。FRS102では、「経営陣に企業の清算や取引停止の意向があるか、そうする以外に現実的な代替策がない場合を除いて、企業はゴーイング・コンサーンである」と定義しています。
ゴーイング・コンサーンを評価する責任は誰にありますか。
国際財務報告基準でも英国財務報告基準でも、ゴーイング・コンサーンに関する指針では、ゴーイング・コンサーンとして存続できる企業の能力を評価するのは、経営陣の責任と明示しています。
ゴーイング・コンサーンの前提が適切であることを評価する際には、経営陣は企業の将来について入手できる全ての情報を考慮に入れます。この将来とは、財務諸表の公表が承認される日から少なくとも12カ月後になりますが、これに限られるわけではありません。経営陣が採用するこの手続きは、企業の規模や複雑さによって変わってきます。
重要な不確実性がゴーイング・コンサーンに影響を与えると考えられる場合はどうなりますか。
経営陣の評価により、企業が近い将来においてゴーイング・コンサーンか否かに関し重要な不確実性があると結論づけた場合でも、FRS 102では取締役に対して、会計のゴーイング・コンサーン基準を採用するとともに、財務諸表の中でその重要な不確実性について適切に開示するよう求めています。
基準が不適切と考えられる場合はどうですか。
経営陣が企業の清算や取引停止の意向があるか、またはそうする以外に現実的な代替策がない場合には、企業は財務諸表をゴーイング・コンサーン基準では作成しません。企業は、その事実を開示するとともに、財務諸表を作成した基準、および企業がゴーイング・コンサーンと認められない理由も併せて開示しなければなりません。
監査人の責任はどういったものですか。
最近、再公表されたISA 570では、ゴーイング・コンサーンに対する監査人の責任は以下の事柄に関して十分で適切な監査証拠を入手し、結論を出すことにあるとしています。
• ゴーイング・コンサーンに関する重要な不確実性が存在するかどうか
• 財務諸表の作成で会計上のゴーイング・コンサーン基準を経営陣が使用する適切性について
監査人による評価と検討のプロセスは監査の計画段階に始まり、財務諸表に署名する日まで続きます。重要な不確実性が存在すると監査人が判断する場合には、財務諸表での開示が適切であることを条件に、監査人は事項の強調区分を含めることにより監査報告書を修正します。財務諸表で適切に開示していない場合には、監査人は限定意見または不適正意見を述べます。財務諸表がゴーイング・コンサーン基準で作成され、監査人がそれを不適切と考える場合には、不適正意見を出します。
イアン・ロウ
パートナー
会計監査部署に所属。25年以上の経験を様々なビジネスにて駆使し、また財務会計に関して企業の立場からアドバイスを提供する姿勢から、多くのクライアントの信用を得ている。