企業の任意清算における法人税の問題
新型コロナウイルスの流行によるロックダウン(封鎖措置)で多くの企業が取引をできず、経済がしばらくの間は低迷する可能性が高いなかで、一部の国際企業グループが英国事業の閉鎖、あるいは 経営不振に陥った英国企業の買収を検討する可能性があります。今回は、こうしたシナリオで考慮すべき税務の問題を扱います。
英国企業の閉鎖にはどのような方法がありますか。
企業は登記を抹消するか、清算することができます。
抹消が適切なのはどのような場合ですか。
企業の抹消申請はどちらかといえば非公式なものですが、その企業の債権者が反対する場合があり、抹消された企業が特定の状況の下で復元される場合もあります。このため抹消申請は、非関連当事者の債権者がおらず、閉鎖コストを最小限に抑えたい企業にお勧めします。
どのような場合に精算が適切ですか。
清算は、全ての潜在的な請求や現在の請求を法的に解決する極めて正式なプロセスのため、企業が非関連当事者と取引している場合やかなりの数の従業員を雇用している場合、あるいは企業が支払い不能の状態にある場合にお勧めします。
閉鎖する企業には、どのような納税申告が必要ですか。
抹消される企業は、課税収入がある全期間について通常通りの申告の要件がありますが、いったん企業の抹消申請が処理されると、歳入関税庁(HMRC)は通常、納税申告にiXBRLフォーマットの正式な財務諸表を要求しません。 清算中の場合、オンライン申告および iXBRLの要件が免除されます。
企業は、以前の年度に支払った税金を回収できますか。
最終損失控除は、直近の過去3年間の利益に対して取引の最終年度に利用できます。これにより、以前に支払った税金を回収できる場合があります。
英国の事業を国外に移転する際に考慮すべきことはありますか。
国際グループ企業が元英国子会社の事業を英国以外のグループ企業に移転する場合に、英国の税務当局は税務上の市場相場での移転を義務付けており、企業はその移転を税務当局に具体的に開示する必要が出てくる点に注意してください。
赤字企業を買収する場合、その損失は将来的に使用できますか。
経営不振の企業が買収される場合、その買収された企業の欠損金は除外される可能性が高くなります。 買収企業の欠損金を保持するために、所有権の変更から3年以内に取引の性質または取引の行為を大きく変えることはできません。変えることは、商業的には実際的でないことが多くなります。
買い手の税務上のポジションはどうなりますか。
企業から取得した資産の課税価格は、その資産に対して支払われた金額の正当かつ妥当な配分により判断します。通常は複数に配分する可能性があり、資産のタイプによって税控除のタイミングが異なる場合があるため、配分を行って税務上のポジションを最適化する際には注意する必要があります。
破綻企業の取引は、損失を生み出している傾向があります。このため、売却交渉中に不動産に付随する設備に関するキャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)の選択が高い水準に設定される場合には、通常では課税は発生せず、買い手にとって買収の税務上の利益を改善する手段になります。
アンディー・トール
税務ダイレクター
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R & D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M & Aの税務など幅広い経験を持つ。