来年度の年金掛け金の案が発表に
公共部門職員の年金制度改革
6 月末、学校教師を主とする公共部門職員によるストライキが実施された。大きなニュースとなったあのストは、政府による年金制度改革に反対して行われたものであった。しかし、現場の職員や労働組合の反発にも関わらず、改革を進める政府の意志は固いようであり、更なるストの懸念も高まっている。
6月30日、年金制度改革への反対を表明するため、ロンドン中心部
ウェストミンスター地区をデモ行進する公共部門職員の人々
政府の省職員、教師、NHS職員が支払う年金掛け金の引き上げに関する提案
政府の省職員(内閣府発表案)
年間給与額 | 2012年度に年金掛け額が給与に 占める割合の2011年度比 |
---|---|
£15,000 以下 | ± 0% |
£15,001 〜 £21,000 | ± 0.6% |
£21,001 〜 £30,000 | ± 1.2% |
£30,001 〜 £50,000 | ± 1.6% |
£50,001 〜 £60,000 | ± 2.0% |
£60,000 以上 | ± 2.4% |
教師(教育省発表案)
年間給与額 | 2012年度に年金掛け額が給与に 占める割合の2011年度比 |
---|---|
£14,999 以下 | ± 0% |
£15,000 〜 £25,999 | ± 0.6% |
£26,000 〜 £31,999 | ± 0.9% |
£32,000 〜 £39,999 | ± 1.2% |
£40,000 〜 £74,999 | ± 1.6% |
£75,000 〜 £111,999 | ± 2.0% |
£112,000 以上 | ± 2.4% |
NHS職員(保健省発表案)
年間給与額 | 2012年度に年金掛け額が給与に 占める割合の2011年度比 |
---|---|
£15,000 以下 | ± 0% |
£15,001 〜 £21,175 | ± 0.6% |
£21,176 〜 £26,557 | ± 0.6% |
£26,558 〜 £48,982 | ± 1.2% |
£48,983 〜 £69,931 | ± 2.0% |
£69,932 〜 £110,273 | ± 2.3% |
£110,273 以上 | ± 2.4% |
Source: Cabinet Office, Department for Education, Department of Health
あなたは政府による公共部門職員の年金制度の改革を支持しますか?
(2011年6月27〜28日、2573人の成人を対象に実施した調査の結果)
Source: YouGove/The Sun
独立の委員会が改革案を提示
2010年5月に誕生した保守党と自由民主党の連立政権は、公共部門職員の年金制度の改革を進めている。改革の着手に当た り、政府はまず、昨年6月、公共部門職員の年金制度改革の方法について調査する独立の委員会を設置。前労働党政権で年金・雇用相を務めていたジョン・ハットン氏を議長に任命した。委員会は、2010年10月及び2011年3月にそれぞれ発表した調査の中間報告書及び最終報告書で、「公共部門職員が支払う年金掛け金の額を引き上げる」「公共部門職員の年金受給開始年齢を、国民年金の受給開始年齢と同一にする」「年金支給額を退職前の最後の給与に基づいて計算する従来の制度を廃止し、代わりに『キャリア・アベレージ・ペンション・スキーム』と呼ばれる制度を導入する」ことなどを含めたいくつかの提案を行った。
掛け金額引き上げ率は3年で平均3.2%
政府は、改革案のうち、公共部門職員が支払う年金掛け金の引き上げについては、2012〜14年度の3年間にわたって行う意向である。この計画の実施に向けて、内閣府、教育省、保健省は7月下旬、政府の省職員、教師、国民保健サービス(NHS)職員が支払う年金掛け金の来年度における引き上げ率の案を発表した。引き上げ率は、年金掛け金の額が給与に占める割合で示されており、給与が年間1万5000ポンド(約195万円)を超えない職員については、引き上げ率がゼロ。給与が多い職員ほど引き上げ率が高くなり、2012年度の最大の引き上げ率は2.4%となっている。
給与に対して年金掛け金が占める割合は、2014年度までの3年間で、最終的に平均3.2%引き上げられる計画であり、2012年度分の引き上げ分は、そのうちの4割を占めることになる。今回発表された提案については、10月末までの12週間にわたり、意見集約作業が行われている。
職員は反発の声、ストの可能性も
公共部門職員については、政府の公共支出削減策の一環として、2011、12年度の2年間にわたり、給与額が凍結されている(ただし年間給与が2万1000ポンド未満の職員を除く)。物価高の中、給与が頭打ちで、更に年金の負担も増えるとの見込みに対しては、多くの公共部門職員から不満の声が上がっており、労働組合からは、大規模なストライキを警告する声も聞かれている。今年の6月末、年金改革に反対する主に学校教師によるストが各地で行われ、一部の学校が休校するなどの影響が出たが、次のストは、実施されれば前回を遥かに凌ぐ規模になると予想されている。
こうした声に対し、政府は、「高齢化社会が進む中、年金制度改革は必至。それに、たとえ改革が実行されたとしても、公共部門職員の年金は、民間に比べらればかなり恵まれている」と反論している。しかし、掛け金の額が引き上げられれば、多くの公共部門職員が年金制度から抜け、年金積立額の減少につながるとの懸念もあり、政府は難しい舵取りを迫られている。ともあれ、公共部門職員の年金制度改革の問題は、今後もしばらく、大きなニュースであり続けるであろうことは間違いなく、その行方が大いに注目されるところである。
Unison
英国の大手労働組合。1993年、公共部門職員の労働組合であった「地方自治体職員協会(NALGO)」「全国公共部門労働組合(NUPE)」「医療サービス職員連盟(COHSE)」が合併して結成。組合員数は約130万人と、英国の労働組合で2番目に多い。組合員の大半は、地方自治体職員、教師、NHS職員、警察官などの公共部門職員である。英国全土の12の地方に、地方ごとの本部があり、雇用、労働問題全般に関するサポートなどを行っている。現在の幹事長は、NALGOの元副幹事長であるデーブ・プレンティス氏。www.unison.org.uk(猫山はるこ)
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