引当金と偶発債務
最近よく話題に上る引当金と偶発債務ですが、FRS(財務報告基準)102には両方の用語の明確な定義が記載されています。こうした用語の定義は明確なものの、現実の状況に即した実際の適用となると、落とし穴がよくあります。
引当金は、IFRS(国際財務報告基準)ではIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」で説明されています。これはFRS102とは異なりますが、英国財務報告評議会(FRC)によるこの基準に関する最近のテーマ別レビューは、こうした落とし穴について優れた洞察を与えてくれ、両方の基準に適用される教訓を得ることができます。
引当金とは何ですか。単なる負債とは違うのですか。
引当金は「時期や金額が不確実な負債」と定義され、負債とは区別されています。もし時期または金額が確定すれば、負債として貸借対照表に反映されます。
企業が貸借対照表で引当金を認識するには、FRS102の21.4項で定義されている以下の三つの基準を満たさなければなりません。
引当金は財務諸表でどのように認識されますか。
最初に認識する際に、企業は引当金を財政状態計算書において負債として認識し、引当金の金額を損益計算書において費用として認識しなければなりません。
債務はどのように設定されますか。
企業は、裁判所の命令、契約、あるいはその他の署名された合意により、法的に、または推定的債務によって、債務を設定している場合があります。推定的債務は、法的債務よりも明確ではないこともあります。一般的に推定的債務は、企業の過去の慣行や方針、企業が出した声明に基づいて発生します。
貸借対照表日の時点で計上される引当金の金額は、信頼性のある見積りでなければならず、最善の見積りという形で計上されます。また多数の項目あるいは起こりうる結果によって、さらに複雑になる可能性があります。これらは、金額および発生する金額の確率で加重平均しなければなりません。単一の債務がある場合には、その債務の決済に必要な金額の最善の見積りとする必要があります。
偶発債務とは何ですか。
偶発負債は引当金を認識する基準を満たさないため、財務諸表では認識されませんが、財務諸表の注記で開示します。その偶発債務が重要な場合には、経済的便益の移転の可能性がほとんどない場合を除いて、開示が求められます。「ほとんどない」(remote)という用語は、FRS102では詳しく定義していませんが、可能性の完全な排除はできないものの発生は予測されないということです。
企業が負う全ての債務が、財務諸表に引当金として認識されるわけではありません。認識するための基準の一つまたは複数を満たさない場合には、企業は偶発債務を有する可能性があり、それが重要な場合には、財務諸表の注記で開示しなければなりません。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
ジェフ・ジョンソン
監査・会計 パートナー
BDOに9年勤務。英国会計基準(UK GAAP)や国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US GAAP)の豊富な知識を基に、監査と財務会計を専門とする。勅許会計士(ACA)の資格を持つ。