FRS102の今後の変更点
私の会社では、英国単独の決算(英国会計基準)と国外の親会社に送る連結決算報告書(国際財務報告基準/IFRSを使用)でリースの会計処理が異なっています。このような調整をしなくても済むように、二つの基準を一致させる計画はありますか。
はい、その可能性があります。リースだけでなく、収益や金融商品にもあると思います。英国の主要な会計基準であるFRS102は2015年に導入され、3年ごとに包括的な見直しを行うことになっていました。最初の見直しは2016~17年に行われ、2018年に改訂版の基準が発行されました。しかし、新型コロナウイルスの世界的大流行の影響を受けて、次の見直しが2021年3月に進められただけでした。2022年1月には、新型コロナウイルス感染症関連も含む、場当たり的な変更をまとめた基準が再発行されましたが、全体的な見直しはまだ保留となったままです。
英国会計基準の設定を担う財務報告評議会(FRC)は2021年3月に、IFRSの最近の変更をFRS102にどの程度反映させるべきかというコメントなど、関係者から意見を募ることに着手しました。
では最近のIFRSの変更点とは、どのようなものなのですか。
大きなものは、金融商品(IFRS第9号)、顧客との契約から生じる収益(同第15号)、リース(同第16号)に関する基準で、それぞれ概念的にも実務的にも大きな変更を導入しています。
どのような変更を導入したのですか。
大まかに言えば、第9号は金融商品の測定に、将来を見越したフォーワード・ルッキングの予想信用損失モデルを導入し、第15号は契約の履行義務の充足により得られる収益を識別・測定する五つのステップのモデルを定めました。そして第16号はリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、一方をリース負債、もう一方を使用権資産として認識するよう変更しました。
関係者からのフィードバックはどのようなものでしたか。
会計士の各団体が示したフィードバックは、第15号と第16号との収れんには慎重な姿勢を示しながらも、おおむね支持するものでした。しかし、第9号については、反応はかなり冷ややかで、収れんがもたらす課題について数多くの具体的な懸念が示されました。フォーワード・ルッキングの予想信用損失モデルを策定してモニタリングするという考え方は、小規模で単純な事業では困難であるというのは当然と言えるでしょう。時間や労力との費用対効果についての疑念は理解できます。
では今後どうなるのでしょうか。FRS102は変更されるのですか。変更されるとしたらいつでしょうか。
間違いなく変更はあります。収益とリースについては、IFRSで導入された概念的な変更が反映されると思いますが、金融商品の会計処理がどの程度収れんされるかについては、はるかに予測が難しいでしょう。次のステップは、FRCが変更案を示して「公開草案」の形で発行し、さらにコメントやフィードバックを求めることになります。これは2022年後半になる見込みです。その後、この草案は必要に応じて微調整され、最終的な改訂基準が発行されます。現在のところ、改訂基準は2024年1月1日以降に始まる会計期間から適用される見込みですが、これまでの経験では、遅れる可能性が十分にあります。
ジョン・フィッシャー
監査・会計 パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。