2023年4月1日に移転価格文書化の要件が変更
法人税の税率が上がると聞きましたが。
はい、英政府の決定により、2023年4月1日に法人税の標準税率が現行の19パーセントから25パーセントに引き上げられます。
どのような企業が移転価格の対象となりますか。
理論的には、移転価格税制は全ての企業に適用されますが、実際には小規模なグループ企業に属する企業はほとんどの取引で免除されます。中規模のグループ企業に属する企業も同様に通常は移転価格税制の適用を免除されますが、歳入関税庁(HMRC)は適用除外を撤回することができます。
現在はどのような文書が必要ですか。
移転価格税制の要件が適用される企業は、申請処理を裏付けるのに十分な文書を保持しなければなりませんが、文書の内容については規定されていません。
大規模なグループ企業に属する企業には、どのような文書が求められますか。
企業が国別報告書(CBCR)の作成を義務付けられる場合、すなわち連結売上高が7億5000万ユーロ以上の多国籍企業に属する場合は、税源浸食と利益移転の行動計画13(BEPS13)に規定されているOECDガイドラインに沿って、マスターファイルとローカルファイルの作成を義務付けられます。CBCRの作成を求められない企業には義務付けられませんが、ベストプラクティスとして位置付けられることが期待されています。また、HMRCは、ローカルファイルは重要な取引に焦点を当てるべきで、各国ごとに取引をまとめたものを容認するとしています。
HMRCに文書を提出する必要がありますか。
原則としては必要ありませんが、要請があった場合には30日以内にこうしたファイルをHMRCに提出することが求められます。新しい要件は、2023年4月1日以降に提出される税務申告から適用される見込みです。
英国内での取引に関する要件に何か緩和措置はありますか。
引き続き英国の移転価格税制の対象となりますが、多額の損失を抱える企業に利益を移転するなどの重大な税務リスクがない限り、移転価格文書に含める必要はありません。
マスターファイルには何を記載する必要がありますか。
• 各企業が設立され活動している地域を含めた法的所有構造図、利益ドライバー(利益要因)、サプライチェーン、主要サービスの取り決め、能力、コスト配分と価格設定を含む事業の説明、市場の説明、価値創造への貢献を示す機能分析、当該期間の主要な商取引の詳細
• グループが保有する主要な無形資産の詳細(法的所有権や無形資産に関するグループ内の契約や譲渡、研究開発(R&D)施設の所在地と研究開発管理の詳細)
• 第三者との取り決めやグループの金融会社とその所在地、移転価格の方針など財務活動の詳細
• 年次連結財務諸表
• 事前確認制度と各国間の収入配分に関するほかの税務裁定
ローカルファイルには何が必要ですか。
• ローカルの経営陣の情報や組織図、ローカルの経営陣が報告する各陣についての説明
• 製品やサービス、ロイヤリティ、利息などグループ内の支払額と受取額について支払者/受取者の税務管轄ごとの情報
• 取引の独立企業間金額の算定に使用した財務データの情報
• 企業の取引に関連する二国間及び片務的な事前確認制度とその他の裁定の詳細
アンディー・トール
税務パートナー
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R & D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M & Aの税務など幅広い経験を持つ。