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ロンドンのゲストハウス
jeu 19 octobre 2017

バイリンガル子育て指南

中島さおり Saori Nakajima
エッセイスト・翻訳家。フランス人の夫と二児とともにパリ近郊在住。
著書に『パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由』など、訳書『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス著など

最終回: 歌うアイデンティティー

オムツ換えをしながらこんな歌を歌っていた。 Akira, c'est mon bébé /c'est mon petit Akachan / il est né sur le bord du fleuve de Tamagawa/ Akira-chké c'est un Japonais(あきらは私の赤ちゃん/多摩川の畔で生まれた/あきらちゃんは日本人)

それはアメリカ文学の「トム・ソーヤー」を原作とした日本のアニメをフランスで放映するときに、フランスが自前で作ったテーマソングの、そのまた替え歌だった。短いフランス語の歌詞の中に日本語ばかりかイディッシュが交じっている。Akira-chkéと名前の後ろにくっ付いた「チケ」は、東方ユダヤ人の言語で子供の名前を愛称にする接尾語で、ユダヤ系フランス人の夫が、子供に付けたのだ。

Akira-chké c'est un Japonaisとは、相当いかがわしいアイデンティティーだが、お尻が気持ちよくなるたびに聞いた歌のためか、幼い息子は「日本で生まれた」自分は日本人だと律儀に信じていた。その子が8歳のとき、「ぼくは悲しいんだよ。日本で生まれたのに、フランス語の方がよく分かるんだよ」と言った。「ぼくは国語の勉強は嫌いなんだけど、ママに言葉をいっぱい教えて欲しいの。大きくなったとき、日本語ちょっとしかしゃべれなくなりたくないの……」

それからまた4年、「フランス語の方ができるしフランスの方が友達も多いから、51%フランス人、49%日本人」と、言葉もアイデンティティーも下方修正されたが、休日に補習校に通わなくてはならなくても、毎日めんどくさい漢字ドリルをやらされても、決してやめるとは言わない。そんな子供を見ながら、下手な歌がまた浮かんだ。

半分は日本人ぞとあきらめて漢字ドリルに向える吾が子

 
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