20世紀に幕開けた近代建築。モダニズムは、王朝や貴族中心であった豪奢な古典様式や宮廷建築への蜂起運動であったとも言える。「工業化」や「機械化」など、新しい時代のキーワードの下に、鉄、ガラス、コンクリートを使い、装飾性を排除した機能的な建築デザインを追求した。
モダニズム建築の聖地と継承
グロピウスにより設計された、バウハウスの校舎(ドイツ)
産業革命という、時代の先駆けとなった英国だが、残念ながらモダニズム建築を牽引するには至らなかった。というよりも、後述の三大巨匠たちの活躍があまりにも輝かしすぎたため、英国の建築家たちは後塵(こうじん)を拝してしまったのだ。
モダニズム建築発展の先陣を切ったドイツ人建築家、ウォルター・グロピウスは、ドイツ中部の街ワイマールに開校された造形学校「バウハウス」の創立者、そして初代校長を務めた人物だ。「モダニズム建築の聖地」と称される同校が1925年にドイツ東部の街デッサウに移動した際、グロピウスにより設計された新校舎は、それまでの常識では考えられないほどに装飾が排除され、その無機質な外観で当時の人々を驚愕させた。
建築と工業デザインの融合、そして家具や陶芸などの研究にも力を注いだバウハウスは、新しい造形を実験的に生み出した。だがそういった活動方針がヒトラー率いるナチス党から「ゲルマン的でない」と非難され、閉鎖に追い込まれた。さらに、身の危険を感じたグロピウスと、3代目校長でドイツ人建築家のミース・ファン・デル・ローエは米国に亡命。結果として、グロピウスがハーバード大学、ミースがイリノイ工科大学でバウハウスの精神を継承し、異国の地でさらなるモダニズム建築を展開することになった。
モダニズムの三大巨匠
グロピウスの流れを受け誕生した「近代建築の三大巨匠」の1人として、現在もなお建築界に多大な影響を及ぼしているのが、フランスで活躍したスイス人建築家のル・コルビュジエだ。コルビュジエは「近代建築5原則」という独自の理論を提唱し、作品の中でそれを実践した。5つの原則とは、柱で建物を地上から浮き上がらせた「ピロティ」、「屋上庭園」、構造体に束縛されない「自由な平面」、明るく開放的な空間を作る「水平に連続する窓」、構造体から独立することで可能になった「自由な立面(ファサード)」のことだ。また、コルビュジエは工業化により人口が集中し、急激に膨張しはじめた都市に対する理想郷の提案もしている。「ユニテ・ダビタシオン(住居単位)」と呼ばれる一連の都市住宅は、居住空間に加え、商店街やホテル、オフィスや保育園といった都市機能を1つの建物の中に集約している。
ライトが手掛けた名作「落水荘」(米国)
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