A Clockwork Orange(1971 / 英)
時計じかけのオレンジ
アンソニー・バージェスの同名小説を基にした風刺作品。管理された未来社会の中で欲望のままに生き、悪の限りを尽くしてきた少年が、政府のモルモットとなるが……。
監督 | Stanley Kubrick |
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出演 | Malcolm McDowell, Warren Clarke, James Marcusほか |
ロケ地 | Trinity Road下の地下道 |
アクセス | BRのWandsworth Town駅から徒歩 |
- 今週は名匠スタンリー・キューブリックによる傑作ディストピア映画「時計じかけのオレンジ」だが、いやあ、何度観てもすごいねしかし。
- 僕も初めて観たときの衝撃が忘れられません。最初の10分で我を忘れるぐらい引き込まれ、戦慄を覚えました。
- アレックス率いる4人組「ドルーグ」が行きつけにしている「Korova Milk Bar」にまずギョッとさせられるよな。だって、麻薬入りミルクを出すバーだよ?
- そう、そのミルクで喉を潤してから、夜の「ウルトラ・バイオレンス」が始まるんですね。それでまずは酔っぱらった浮浪者を襲撃、と……ここはロンドン南西部にあるWandsworth Bridgeのラウンダバウトのガード下で撮影されています。Trinity RoadとSwandon Wayの間の地下道ですね。
- その後「Durango95」という名の車を暴走させ、作家とその妻が住む家に押し入るわけですが、このシーンではなんと3カ所のロケ地が採用されています。まず「HOME」のサインが見えたところで停車する場面はハートフォードシャー、Bricket Wood村の通学路ですね。また、玄関まで続く、意匠を凝らした庭は、オックスフォードシャーのShipton-under-Wychwood村にあるミルトン・グランディの有名な日本庭園。そして室内はハートフォードシャーのRadlettにある、ノーマン・フォスターほか4名の建築家から成る「チーム4」によって建てられた「Skybreak House」が使用されています。
- 完璧主義で有名な監督のこだわりぶりが表れているようだね。
- 作品全体の舞台は、コンクリートに囲まれたモダンでミニマルかつ荒廃した世界という、いかにも近未来の全体主義社会といった感じですね。例えばアレックスが両親と住んでいるフラットは、ロンドン南東のテムズミードにあるTavy Bridge Centreですが、敷地内はゴミだらけで、ひどく荒んだ印象です。しかし一歩家に入れば安全で豊かなモダン・ワールドが形成されています。
- ちなみに、フラットの階段とロビーはUxbrigeにあるBrunel Universityの校内が使われていますが、アレックスが後に「ルドヴィコ療法」を受けさせられる医療センターの外観も、この大学が使われています。
- アレックスたちが使っている言葉「ナッドサッド語」がまた、その近未来世界にマッチしていますね。
- ロシア語と英語をミックスさせたってやつね。ある意味、現代のギャル語とかに通じるポップさだよな。
- 音楽の使い方も斬新で印象的です。ベートーベンの第九、シンセ・バージョンやヘンリー・パーセル作曲の「メアリー女王の葬送音楽」など、クラシックが効果的に挿入されています。
- 「雨に唄えば」もすごいけどね。
- あの曲は本来、脚本にはなかったそうですよ。4日間かけてあれこれテイクを試しても、今ひとつ凡庸になってしまうと考えていた監督が、はたと閃いて、主演のマルコム・マクダウェルに踊ってみてくれと頼んだのだとか。で、次のテイクで歌と踊りを加えてみることにした。そこでマクダウェルが歌詞を覚えていた唯一の歌が「雨に唄えば」だったので、それで試したところ、監督がえらく気に入り、すぐに使用料1万ドルを支払ってこの歌を採用することに決めたんだそうです。
主人公アレックスの特異なキャラクターや暴力描写などから、賛否両論のこの作品。事実、英国では1999年に監督が他界するまで劇場公開は禁止されていた。それも監督自らの意志によってだ。死の脅迫を受け、家族が命の危険に晒されたことが最大の理由らしいんだが……。個人的には1コマ1コマがアートそのものという印象で、ただただ感服してしまうけどね。ちなみに本作は、1969年の日本映画「薔薇の葬列」に影響を受けていることでも知られているよ。
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