84 Charing Cross Road(1987 / 英・米)
チャーリング・クロス街84番地
希少本を探し求めていた米NY在住の作家ヘレンは、ロンドンの古書店の広告に目を留める。以来、書籍を注文するかたわら、同店のマネジャー、フランクと書簡をやりとりするようになり……。
監督 | David Hugh Jones |
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出演 | Anne Bancroft, Anthony Hopkins, Judi Denchほか |
ゆかりの地 | 84 Charing Cross Road |
アクセス | 地下鉄Tottenham Court Road駅 またはLeicester Square駅より徒歩 |
- デカ長、最近誰かに手紙書きましたか。
- ん? 俺はもっぱら手紙派だ。
- え? メールじゃなくて?
- 当たり前だ。いつも渾身の手書きじゃ。手紙は墨で書く!
- ひいー。時代錯誤だなあ。まさか血判とか押してるんじゃないでしょうね。
- おいおい、挑戦状じゃないんだから。でも手紙はいいぞお。真心を感じるな♥
- 「♥」がやたら怖いんですけど。まあ、誰に手紙書いてるか知りませんが、僕も先日、日本の友達から偶然、手紙をもらって、ちょっとうれしくなりました。今だとメールとは違う新鮮な感動がありますよね。
- 僕も今回「チャーリング・クロス街84番地」を観て、昔、雑誌の「ペンパル募集」コーナーを通して知り合ったペンフレンドと手紙を交換していたことを思い出しました。
- 文通とかしちゃってたわけね。まあなんにせよ、インターネットと携帯電話の出現以前に青春時代を過ごした人なら、誰でも多かれ少なかれ手紙にまつわる思い出ってあるんじゃないかね。この作品も、実話に基づいてるんだったよな。
- はい、ニューヨーク在住の女流作家ヘレン・ハンフが、英国文学の希少本を求めてロンドンのCharing Cross Road 84番地に実在した古書店「Marks & Co.」に書籍の問い合わせをして以来、客として、また文通友達として同店のバイヤーでマネジャーのフランク・ドエルと20年にわたってやりとりした手紙が原作となっています。
- Charing Cross Road は言わずと知れた本屋街だもんな。かつては今よりもずっと多くの専門書店や古書店があったようだが、家賃の高騰により、悲しいことに閉店を余儀なくされてしまった店が多いようだ。ただ、本作で見られるような古書店街の雰囲気は、 Leicester Square駅近くのCecil Courtにまだ残っているね。
- 人はぜひ一度、足を運んでみるといいと思います。また本作では、ヘレンとフランクの、本および読書への愛好が端々に感じられるのも素敵です。文学者や本のタイトルもたくさん出てきて興味深いですよね。スティーヴンソン、ジェーン・オースティン、ウィリアム・ハズリット……。
- そういえばタロウって、顔に似合わず文学青年だったんだっけな。
- 一言余計ですけど、まあ、そうです。 なので、ヘレンとフランクのウィットとユーモアに富んだ書簡はちょっと憧れるものがあります。フランクの奥さんが嫉妬するのも無理はないでしょう。
- しかもヘレンは時々、お店に気の利いたギフトを送り、スタッフとも交友を深めていきます。戦後、物資が豊かだった米国と、食糧難に陥っていた英国の様子も見て取れるわけですが、ともあれ、こういった「いつもお世話になっているあの人に」的な、こまやかな気遣いは、日本人の感覚に通じるものがあって心が和みますね。
- ちなみに「Marks & Co.」は当時、非常に有名な古書店で、チャップリンやバーナード・ショーも顧客にもっていたそうです。
- ところで同店があった場所は、現在どうなっているのかな。
- 現在は「Med Kitchen」という地中海料理店になっています。でも、建物の通りに面した壁には、今も「Marks & Co.」の記念額が掲げてあるんですよ。
手紙が紡ぐ大人のプラトニック・ラブ。または、ソウル・メイトって、こういう2人のことを言うんだろうな。なんにせよ、非常に心温まるやりとりであると同時に、ロマンチックなんだな。手紙ならではの奥ゆかしさがそう感じさせるんだろう。ささやかで地味な作品ではあるが、文学好きの人、また古本屋独特の匂いと雰囲気に親しみを感じる人には心に響くものがあるんじゃないかな。それにしても、ヘレンはフランクに本当に会いたかったのかなあ……。
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