Brick Lane
ブリック・レーン (2007 / 英)
17歳でバングラデシュから英国のロンドンへと移住したナズニーン。18年が経過した今、歳の離れた夫に愛情も抱けず、暗鬱とした毎日を送っていた。そんなある日、同郷の親を持つ若い男性と出会う。
Yoshihiro Kogure
監督 | Sarah Gavron |
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出演 | Tannishtha Chatterjee, Satish Kaushik, Christopher Simpson ほか |
ロケ地 | Brick Lane |
アクセス | Liverpool Street駅から徒歩 |
- デカ長はブリック・レーンとか行ったりします?
- おう。時々ベーグル買いに行くぞ。
- 「Brick Lane Bakery」ですか。あそこのベーグル、もっちりとしててうまいですよねー。安いし、24時間、開いてるし。
- 店員の愛想のなさはチャイナタウンの「ワンケイ」に近いものがあるけどな。文字通り肉食系の私はやっぱりホット・ソルト・ビーフが好きだな。
- 前置きが長くなりましたが、今週の映画は、その名も「ブリック・レーン」です。17歳のときにバングラデシュからロンドンへと移り住み、歳の離れた同郷の男性と見合い結婚後、2人の子をもうけ、イースト・ロンドンはブリック・レーン界隈の公団住宅に暮らすナズニーンという女性の姿を追っています。バングラデシュ出身の英国の作家、モニカ・アリの同名小説を映画化した作品ですね。
- 言うまでもなくブリック・レーンは、ロンドンにおけるバングラデシュ系移民のコミュニティーの中心地だもんな。あそこに行くと、ストリート名が書かれたプレートに、ベンガル語も併記されてたりして面白いよね。そうそう、当たり前すぎて言い忘れてたが、もちろんよくカレーも食べに行くぞ。
- Aldgate East方面へと続く、ストリートの南側にずらりと連立してますよね。ベーグル屋がある北側は、今でこそお洒落なカフェや古着屋なんかが立ち並ぶクールなスポットという感じですが、かつては青果からガラクタ品までなんでもありの、のみの市のような様相を呈していたんですよね。日曜のストリート・マーケットは、その名残が感じられますが。
- ところで、原作本の発刊当時もそうだったのですが、本作の製作、公開に当たってもかなり物議を醸しました。ストーリーの中で伏線的に米国の同時多発テロや、イスラム原理主義についても触れているわけですが、そのあたりの描写がバングラデシュ人を侮辱するものであり、歪曲表現に当たるとして、コミュニティーから猛反発が起こったのです。本作は2007年のロンドン国際映画祭で初公開されましたが、抗議デモの勃発により、予定されていたチャールズ皇太子の映画祭への出席がキャンセルになったほどでした。
- 似たような事例として、90年代後半のサルマーン・ラシュディの「悪魔の詩」騒動があったよね。しかしそういった混沌も含めて、ブリック・レーン周辺は特異というか、独特の熱を帯びたエリアだと思ったりもするわけだが。
- しかしそれら一連の騒動によりブリック・レーンでの撮影が困難になってしまったのだとか。マーケットのシーンなどは、様々な場所をロケーションとして使っていたようです。最終的には撮影に成功したそうですが、やはりストリート南側はあまりお目見えしていないようですね。また、ナズニーンが家族とともに住む公団住宅は、外観だけ界隈に実在するフラットを撮影してまして、室内はセットを使ったそうです。
- 物語の後半、みんなで故郷に帰ろうと言い出した父に、ナズニーンの娘が反発して家を飛び出るシーンがありますが、たどり着いて泣き崩れた場所は、Liverpool Street駅ですね。
- あ、それとラスト・シーンですが、やむなく夏に撮影が行われたそうです。したがってあの雪はすべて人工なんだとか。
宗教的な問題などで取り沙汰されたこともあって、色々な見方はあると思うが、映画のメイン・テーマは、一人の女性の、自分自身への気付きと精神的な独立だよね。ナズニーン役の主演女優も言ってたけど、国や文化を超えた、全女性に共通するテーマを描いているんじゃないかな。そういう意味でも特に女性にお勧めの一本。そうそう、こちらサウンドトラックもなかなかいいよ。自宅での瞑想タイムにぜひ。
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