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Mon, 28 November 2022

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第17回 英国式お受験事情 その3

前回に引き続き、英国式中学受験についてのお話です。英国の中学校(セカンダリー・スクール)は11歳に達した年の9月から始まります。英国では、私立校へ通っている子供は全体のおよそ7%と少数派ですので、日本のような中学受験などとは縁がないような印象も受けますが、それは大間違いです。自分の体験からも、「本当に大変だったわ~」と、いま思い起こせば深いため息です(苦笑)。

英国の場合は公立校でも、地域によっては選抜試験で入学が許可されるグラマー・スクールがあります。いわゆる学業優秀な子供を対象とした進学校です。我が家の場合はグロスターシャーというイングランド南西部の行政区域に位置していて、無試験で入学できる公立中学校(コンプリヘンシブ・スクール)が42校、グラマー・スクールが6校あります。

公立の場合は小学校と同様、「キャッチメント」と呼ばれる学区域から志望校を選びます。グラマー・スクールの場合は、選抜試験の結果が合否の決め手になるため、この学区域の縛りは多少緩やかになりますが、最終的に選抜される際には自宅からの距離も考慮されますので、やはり子供が通える範囲の学校選びが重要です。

そして肝心の選抜試験の内容ですが、「11+(イレブン・プラス)」という筆記試験が行われます。この11+という選抜試験は、グラマー・スクールだけではなく、前回ご紹介したような私立校の選抜試験でも採用されています。従って、小学校から中学校へ上がる際に、私立、もしくはグラマー・スクールへ行かせようと思ったら、この試験の対策を練らなければなりません。

実はこの選抜試験は、日本の企業が新卒採用試験として行うSPI試験にとてもよく似ています。出題科目は言語(主に英語の単語合わせ)と非言語(主に図形)の2種類のほか、地域や学校によっては算数と国語(英語)も加わります。

11+はあくまでも子供のポテンシャルを判断する筆記試験(近年はウェブ形式もあり)のため、どの学校も「試験対策不要」とただし書きがあるのですが、それを鵜呑みにしている親はいません。子供の合格を願う教育熱心な親が受験対策に余念がないのは、日英ともに共通しています。

日本であれば、受験対策のための進学塾がたくさんあり、その選択肢も豊富ですが、我が家がこの英国式お受験を体験したのは10年以上前のことでしたので大変でした。塾もなければ、参考書や問題集の数も少なく、小学校には内緒で専用の家庭教師をつける、というのが当時の親たちの対策となっていました。

今では書店に大きな11+のみのコーナーがあり、家庭教師に加え、塾やオンライン学習を提供しているサイトなども多く、英国の受験ビジネスは盛んになっているようです。

書店の11+のコーナー
書店の11+のコーナー

 
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小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
英国王室流教育の極意: エリザベス女王からジョージ王子まで(河出書房新社)英国王室流教育の極意ビクトリア女王からジョージ王子まで、英国王室の子育てや教育を語る一冊。憧れのプリンス、プリンセスが受けた教育とは? 英国のパブリック・スクールや筆者が体験した公立校の教育システム及びその現状が網羅されている。

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