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日経電子版Pro
Sat, 17 April 2021

第70回 為替相場の短期の目、長期の目

為替相場の先行き

ここ数年の円安から昨年末以来の円高への振れを見て、為替相場が今後どう変化するのか、またはどのように資産を円、ポンド、ドルなどで分配するべきかについてお考えの方もいるかと思う。だが為替相場の先行きを予想することはそもそも不可能、というのが経済学のスタンダードな考え方だ。ただ以前にも書いたように短期、中期、長期的な視点からどういった要素が為替相場に影響するかについて考えておくことは、個人にとって、企業にとっても重要と思う。復習すると以下の通り。

期間 為替相場に変動を与える諸要素
超短期
(毎秒、毎日)
以下の諸条件についての予想、金融機関や投資家の投機や思惑
短期
(1、2ヶ月)
過去の企業の為替予約や為替オプション取引の実現
中期
(3ヶ月から1年)
国毎の金利差、インフレ格差、物価上昇率差
長期
(1年から5年)
国毎の購買力の格差(為替レート調整後の商品の値段はどこでも同じという考え)、政治などによる社会構造の変化
※詳細はバックナンバーの第81011回をご参照下さい。

短期や超短期的というのは金融のプロが扱う世界で、ここでは経済実体がどうであれ美人投票で相場が動く。また長期は政治やアクシデントなど不確実な要素が影響してくる。だから一般的には、公表されている経済統計から推し量れる経済の基本条件を最も反映する中期から出発するのが分かり易い。現在における市場の中期的な見方としては、米国の景気悪化に伴うドル安、ポンド安、円高、ユーロ高、資源国通貨であるルーブル高、経済が躍進している中国の元高、インドのルピア高などがある。


超短期、短期のポイント

だが本欄ではあえて、予測の難しい短期と長期的な視点から検討したい。短期の当面の注目点は1ドル=100円を越えて円高が進むかどうか、1ポンドで言えば210円から200円を試す展開が予想される。日本の輸出企業はそれ以上円高になることはあるまいとして、1ドル=100円から98円までの間に保険代わりとして10年位のドル売り円買いの為替予約オプション(その値段が来ればその値段でドルを売る権利)を大量に持っている。

円相場はこれまで130円と99-98円の間を動いてきた。仮に100円割になると日銀が介入する可能性があるが、輸出企業が為替オプションを行使するので次の防波堤を築くことになる。その時のドル売り円買いの量は政府の介入で抵抗できる規模ではなく、一気に90円前半まで円相場が飛ぶ。そこで過去最高値の88円を試すかどうか。ロンドンの為替ディーラーはその時を虎視眈々と狙っている。こうした状況について当局はもっと情報を示すべきではないのか。こういう情報が、為替市場関係者しか知らないということについて、株や債券の厳しいインサイダー規制との関係で問題ないと言い切れるか問題提起しておきたい。


長期のポイント

長期的視点からいえば、ユーロとロシアのルーブルの関係がもっとも重要となろう。ドル下落を見越して各国の中央銀行、政府系運用機関は運用通貨に占めるドルの比率をじわじわと落としている。特に中東とロシアでの下落が顕著だ。ロシア中銀はユーロ、ドルを45%、残りをポンドなど他通貨で運用できるところまでドルの比重を下げる方針だ。ロシア帝国は基軸通貨国である米国の思い通りにはならぬとの意思表示だろう。中国が米国経済との相互依存度が高いのに比べて、ロシアは欧州と貿易面でパートナーを組みやすい。

ロシアのプーチン大統領は、任期が切れる5月以降も首相として政治の場に留まり、院政体制を敷くとされている。だがこの院政は、実はプーチンの威信低下を意味している。消息筋によればプーチンは最初は大統領続投を図ったが側近を含め誰も支持せず、無役になれば権力基盤を失うので、腹心を大統領にして辛うじて自らは首相になることにしたようだ。その権力への固執は、ロシアでも見苦しいと評判が悪い。プーチンの権力掌握力はかなり弱くなった。

そこで次の一手は、今年選ばれる欧州大統領との連携だ。ユーロとルーブルが通貨バスケットになるかどうか、そのときポンドはどうなるのか。英国のブラウン首相が起死回生するなら、ノーザン・ロックから外交に国民の耳目を移し始めるかどうか。そしてブレア前首相がどれだけ関与するのか、注目したい。

(2008年1月28日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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