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Fri, 13 December 2019

第137回 アジア成長と清濁併せ呑む人材

朝鮮半島情勢への再論

BBCなどの欧米メデイアがこぞって北朝鮮の強硬姿勢を喧伝する中、前回の本稿にて、中国が、「エネルギーと食糧以外の援助をしない」という従来の北朝鮮への態度を一変させ、同国における経済開発へのコミットメントを始めたのではないか、北朝鮮へとヒト・モノ・カネを大量に送り込むサインが多い、と書いた。例を挙げれば、羅津港借款、中国人向け観光ビザ緩和、鉄道建設などである。第一には溢れる国内生産能力の出口を確保するため、また第二にはレアメタルを含む希少資源の確保のためと考えられる。

朝鮮半島北部の開発は今後、中国企業の手により、どんどん進められていくであろう。ロシアも、羅津に至るシベリア鉄道の南線の建設を計画中と聞く。その結果、何やら極東情勢は、第二次大戦前のまたは日露戦争前の状況、ひいてはロシア帝国と清朝の、さらに前には中国の歴代王朝と高句麗、新羅、高麗、李氏朝鮮との関係と相似形の様相を呈してきている。

そうなったときに北朝鮮の体制はどうなるのか。ソフト・ランディング、つまり中国型の改革開放政策が主なシナリオになる。北朝鮮や中国当局は、金正日(キムジョンイル)一家を日本の天皇家のような象徴として、緩やかに体制を転換していくことを念頭に置いている、という説もある。ただ天皇家と違い、金一家の歴史が浅すぎることが、大きなネックになるであろう。一方で、中国が完全に北朝鮮当局を掌握すれば、中国の手のひらの下で、ルーマニアのチャウシェスク政権崩壊のような、民衆蜂起による体制の一新という説もある。いずれにしても、ここ5年程度以内に重要な変化が起こりうると見ておくべきではないか。

韓国の李明博政権

一方、韓国では2012年の大統領選挙を前に、李明博(イミョンバク)政権が早くもレームダック(任期末に機能低下すること)に陥りつつある。前任の盧武鉉(ノムヒョン)政権が北朝鮮一辺倒で反米、反日政策を取る一方、無策で経済がガタガタになったのに比べると、「ニューライト政策」により規制緩和を進め経済を復活させた功績は大きい。

しかしながら、北朝鮮に対する態度に関しては、金体制の崩壊という単純な構図しか取っていないように見える。北朝鮮に対する最近の中国の態度を見ても、韓国は、依然、現体制の崩壊にかけている ようだ。しかし、上記のように中国、ロシアがからみ、複雑化する東アジア情勢の下では、従来の韓国のように、北朝鮮との対決=体制崩壊にかけるか、宥和=北朝鮮の主張を飲むか、または単に現状維持を望むか、のいずれかしかないようでは、十分な対応はできないのではないか。

人命が失われた潜水艦沈没のような事件について、きっちり謝罪を求め、賠償を求めることは外交上重要ではあるが、同時に着地点を予想して、経済面から手を打つことも政治的には常識だろう。そのためにはアジアの経済成長の行方を踏まえる必要がある。中国経済は今年後半から踊り場、もしくは一服、下手をするとバブル崩壊のリスクがある。ダウンサイドのリスクを重視するのであれば、資源開発や資本財生産の技術支援のような、息の長い経済協力が、一段と重要になる。

政権交代により対北政策が一転するような現在の韓国の政治体制は、合従連衡(がっしょうれんこう)をお家芸とする中国に対してあまりにも脆弱であると言わざるを得ない。民主主義や人命の価値を唱えつつも、一方では経済面からの技術、ヒト、カネの交流を進める必要があろう。

日本の立ち位置

日本についても、同様のことが言える。菅首相も小沢氏を全否定するだけでは、政権運営はおぼつかない。対米、対中政策にしてもそうだ。

世界全体がいかなる方向にも動き、各国の同期性が高まることにより振れが大きくなっているグローバリゼーションの下での世界経済を前提にすれば、人命とか民主主義といった疑いようのない価値は別としても、外交や内政で一つの主義主張に固執することは、あまり得策とは言えない。日本で話題となっている消費税引上げについても実施するには然るべきタイミングがあるだろうし、小沢氏のような「どぶ板選挙」も意義がないとばかりは言えない。

要は民主党内のすべての派の清濁を併せ呑み、長い目で見た国民の繁栄を企図する覚悟、そして構想と手管が必要である。英国のキャメロン、米国のオバマ、日本の菅、韓国の李、いずれも民主主義国の選挙で選ばれた政治家にその構想力、現実的な遂行力が十分でないと感じるのは、どうしてだろうか。

(2010年7月21日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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