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Sat, 07 December 2019

第168回 先進国に共通する政治不在とその行方

欧米日の政治危機

オバマ大統領
7月31日、債務引き上げ問題に関する与野党合意を、ホワイトハウスで発表するオバマ米大統領

通貨ユーロは最大の危機を迎えた。米ドルも、スイス・フランや円に対して最安値を更新している。東日本大震災からの復興は遅々としている上に、欧米の金融市場の混乱による株価下落や消費抑制から中国経済も変調を来たし、最大の対中貿易国である日本の経済が回復軌道に乗れるかどうか、来年には微妙な情勢となってくるだろう。

こうした金融市場の動揺や先進国経済の混迷に対して政治はなすすべがなく、先進国の政治リーダーシップが危機を迎えている。欧州では、ドイツのメルケル首相がギリシャやスペインを助けるための財政支出について、自党であるキリスト教民主同盟の右派や自由民主党、究極的には国民を説得できない。メルケル首相は地方選挙で惨敗続きだ。そして、「ユーロが崩壊してもいいのか」という最終的な脅迫を伴うチキン・ゲームが繰り返される。

政治の外では、頼みの欧州中央銀行が人工的な機関であるがゆえに物価安定、金融政策原理主義で、財政が動けない場合に、日銀が行ったようにリスク・マネーである銀行の株を買うというような柔軟な対応には大反対を示している。株と異なり、イタリア、スペイン国債を担保とした比較的リスクの小さい短期の貸出すなわち流動性の供給拡大にすら、ドイツ連邦銀行(ブンデス・バンク)のDNAを持つ筆頭理事のシュタルク氏は猛反対し、辞任表明した。こういったドイツ国内と欧州中銀の混乱ぶりが、市場の不安に拍車をかけている。

チキン・ゲームの再来

こうしたチキン・ゲームは、どこかで見たことがある。2カ月前に行われた米国の中間選挙後、財政赤字上限問題を通じて票を伸ばした共和党右派の茶会党が財政赤字削減、増税反対を掲げて上限再設定に反対し、米国債がデフォルト寸前まで行った。オバマ大統領は不良債権処理が進められず、長期失業者が減らないという状況で、経済政策の出口を見いだせていない。先週発表された、雇用増加に向けた包括政策は、「雇用増加のための財政支出を共和党の地盤である富裕層への増税で賄う」という、共和党右派を更に刺激するものになっている。

共和党左派は、2カ月前にした財政赤字削減の約束は何だったのかと憤っている。オバマ大統領は、来年の大統領選挙で、「雇用が回復しないのは、包括策に共和党が反対したからだ」という主張をするためのアリバイ作りを目的とした案を出したという報道もあながち本当かもしれないと思わせるほどの挑戦的な内容である。この案をめぐって、共和党と民主党が再び新たなチキン・ゲームを繰り返すことは確実だ。そうなると、また金融市場は動揺する。

経済苦境の中の選挙

新興国が経済的な台頭を見せているのに対して、米国や欧州や日本といった先進国の経済は低迷し、若年者の失業率が高い。スペインでは実に4~5割と言われている。とりわけ、マドリッドは暴徒化のリスクを抱えている。そうした中で、選挙では極端なことを言う政党に票が集まり、中間層を基軸とする意思決定が難しくなってきている。

分裂した議会、引いてはその背景にある社会をまとめていくのは、政治家の力量しかない。米国のオバマ、英国のキャメロン、ドイツのメルケル、フランスのサルコジ、そして言うまでもなく日本の民主党の面々は、その器かどうかが問われているのだ。

世界経済は、そう簡単に良くはならないだろう。解決には、目先の仕事に精を出して、財政頼みを排し、質素倹約の生活を説ける政治の力しかないと思う。そのためには増税ではなく、むしろ歳出の削減が王道である。その結果として、テロや暴動が起こることを覚悟する必要があるのかもしれない。現在は、共産圏の崩壊で延期された世紀末が10年遅れでやってきた、と後世の歴史家から語られることが想像できるような状況である。

(2011年9月15日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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