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Sun, 08 December 2019

第174回 2012年世界経済展望: 国家財政が焦点に

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

大きなダウンサイドは考えにくい

2012年経済を展望すると、大きなダウンサイドのリスクは小さいと考える。欧州の金融不安、ユーロ不安は、財政規律条約の締結や銀行の資本増強などで徐々に緩和されていき、焦点は銀行の資本不足による貸出減少に伴う不景気対策に移るだろう。需要不足による不景気が目に見える形となるのはこれからだが、財政制約がきつい状況下では、その解決には時間がかかると思われる。また経常黒字国のドイツによる南欧諸国への財政支援が小出しにされるので、欧州の経済は長期低迷期に入ることが想定される。ほかの欧州各国が経済でドイツに太刀打ちできるわけもなく、ユーロ安の下、世界ではドイツ製品が日本などアジア製品と競争を繰り広げるという状況が続くと思われる。ドイツの勢力拡大に対して英仏がどのように協力し、抵抗していくのか興味深い。ユーロを自国通貨として導入しなかった英国は、昨年末、欧州各国の財政管理を強化するための財政規律条約に入らな

いという選択肢を取ったが、これによって英国の経済政策は一定の自由を確保した。今後、保守党が財政再建を一時棚上げして、景気の下支えを目的とした政策に転換する余地を残したことになる。一方で、欧州の不景気の継続は英国経済、中でも金融業に悪影響を与えるだろう。

米国は不景気からのリバウンドが始まる年になりそうだ。住宅ローンの爆弾はまだ残っているが、産業が元気になってきている。また長期失業者数はいまだ多くいる一方で、バブル崩壊後に高止まっていた貯蓄率が少し低下してきた。過剰消費は望むべくもなく、また望むべきでもないが、貯蓄が消費へと向かうようになれば、米国経済の回復は早いように思われる。

中国経済は減速が強まるが、共産党は強力な金融緩和を推進する方針だ。2009年に金融引き締めを実施した際には土地の値段が下がり、不動産取引が急増した。また設備投資の急ブレーキも銀行の貸出停止によるものが多く、金融緩和は強力に効きそうだ。金融緩和策を上手く機能させることで、本年に予定されている主席の交替を乗り切っていくと思われる。一方、ブラジルなど早めに金融を引き締めたほかの新興国では、インフレに悩まされる可能性と金融危機により資本が流出するリスクが非常に懸念され、要注意だ。

日本経済はしぶとくまずまず

日本経済は、まずまずの状態がしぶとく続きそうだ。景気を支える柱は、復興需要と新興国の金融緩和による需要の下支えとなる。製造業の大企業は、世界経済の減速を受けて輸出が減少し、厳しい状況にあるが、内需型の非製造業や中小企業には、円高のメリットがある。復興需要はバブル的な現象も見られ始め、東北地方での建設土木関係の賃金が急騰している。非正規の社員対象ではあるが、企業の雇用意欲も強まっている。

日本のテーマは、大企業が海外進出する中、少子高齢化による内需の縮小、中韓の追い上げによる製造業の競争力の低下、財政再建・社会保障安定化への道筋の付け方、原子力発電のあり方を踏まえたエネルギー確保策など、経済構造に関わる問題への対応となる。目先の景気変動よりもこうした根本的な問題に取り組むことが企業、政府、自治体さらにはそうした先に金融をつけている金融機関の3年後の浮沈を左右すると思う。その過程で家計の負担増は避けられず、この対応をめぐって政治の紛糾は必至だろう。

国家財政が焦点の年

中国など一部新興国を除き、先進国を中心に、財政赤字の問題が経済を考える上で鍵になる。欧米、日本は景気が振るわない中、財政面でのダウンサイドを抑制しつつも、いかに規律を維持できるかが喫緊の課題だ。国内の給付や他国への援助は切り詰めが進むと考えられ、これを中長期で敢行できるかが問題となる。欧州危機では、アイルランドが増税、給付抑制、賃金カットなどを矢継ぎ早に実行し、いち早く危機を脱した。製薬、ITといった基礎産業の力があったからできたわけで、そうした産業を持たない英国や南欧諸国はそこが難しいところである。

日本はまだまだ産業競争力を持っているが、パナソニックの液晶T V不振、東芝のLED部門のリストラ実施のように、IT関係は加速度的に競争力を失いつつある。産業競争力の育成は、一朝一夕にはできない。こうした構造的な問題への対応をめぐり各国の政治は難しい局面を迎えるであろう。

(2011年12月15日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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