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日経電子版Pro
Tue, 20 April 2021

第32回 北朝鮮経済の復興如何

>東西ドイツと南北朝鮮

前回、北朝鮮問題について、目先重要なことは、A.ミサイル迎撃体制の即時整備、B.北朝鮮解放(崩壊)時における難民への対応およびその後の統一朝鮮国家への経済支援プラン立案、であると書いた。Aは、歴史がハプニングから展開するという教訓への対応であり、Bは、歴史的な必然への対応である。今回はBの前提としての、統一朝鮮国家の経 済状態を予想してみたい。

よく比較されるのが、東西ドイツと南北朝鮮の経済状態 である。一部1990年頃の古いデータしかないが、下の表を見ていただきたい。

表

この表が示す数字データと、さらに昨今各メディアで報じられている東西ドイツと南北朝鮮の比較論をまとめると、次のようなことが言える。

① 北朝鮮の人口は、東ドイツに比べて相対的に多いが、人的資源として十分ではなく追加教育が必要。
② 朝鮮の1人あたりの所得格差は、ドイツよりも大きく、さらに広がる傾向にある。
③ 1人あたりの収入格差はさらに大きく、朝鮮では、国家や企業の吸い上げが相対的に多い(税金が高いか、労働分 配率が低いか)。
④ 北朝鮮では、吸い上げられた税は多く軍事力に使われている。
⑤ 北朝鮮では、農業人口が相対的に多く、東西ドイツがいずれも工業国であったことと異なる。

要するに北朝鮮は大きな農業国で、その上生産性が低く、皆貧しく、軍事力だけ大きいということである。これは東ドイツが、西ドイツ同様の工業国で人的資源のレベルがそこそこ揃っており、人口がさほど多くなかった状況とは大いに異なっている。

南北朝鮮の統一後の経済問題――失業と難民

そのドイツですら、統一後15年経っても未だに東ドイツ地域の経済復興は十分とはいえない。この間、ドイツ政府は古い東側の住宅、道路、通信、環境などのインフラ整備 (全体費用の約3分の2)、失業保険など社会福祉の引き上げ (全体費用の約3分の1)で、130兆円近い所得移転を東ドイツ地域に行った。しかし、ドイツ企業はベルリンの壁崩壊後、東ドイツよりもより賃金の安い東欧諸国やロシアへ進出した。また厚い社会保障、失業保険はモラル・ハザー ドを起こし、東ドイツ地域の失業率は依然高く、西側の2倍とも言われている。まして北朝鮮のインフラの古さ、不十分さ、人的資源の教育水準の低さは、東ドイツへの投資よ りも、はるかに大きい負担を韓国に負わせることになろう。 ドイツ復興が15年で不十分とすれば、朝鮮復興はより長い時間がかかることは必定である。南北併せて170万人もの規模を持つ軍隊は不要であろう。これをやめるだけで100 万人単位の失業者が出る。急速に仕事がなくなると彼ら失業者たちはやがて難民になる。韓国による北朝鮮への企業進出が必要となる所以である。

北朝鮮にある資源

昨今の企業は、安い賃金労働者を求めて中国、東欧、インドへと進出することが多くなっている。しかし、北朝鮮の労働力に期待するのは時間がかかる。

左) 韓国の盧武鉉大統領
右)北朝鮮の金正日総書記

もっとも幸い北朝鮮には鉄鉱、石炭が豊富である。主な産業は、農業と重工業、手付かずの自然を利用した観光ということになるであろう。これらの資源を利用した経済政 策は既に金正日が取り組んでいる改革でもある。性急な北朝鮮の解放は、38度線を越える大量難民など混乱を招くだけで得策ではない。徐々に投資を行うことが妙策ではないか。当然、南北問題を生んだ原因を作った日本への期待 は大きいし、日本にとってもチャンスと前回述べたが、ここ数年で日本の対北朝鮮貿易量は大きく減少し、中国、韓国に大きく水を開けられている。拉致問題に早く決着をつけ、経済交流の下地ができないと、日本は解放後、援助を求められるだけで、それを受け取るのは中韓の企業のみになりかねない。

(2006年7月26日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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