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日経電子版Pro
Sun, 18 April 2021

第33回 安倍氏の下で戦えるか

安倍氏の課題

日本の小泉首相の後を継ぐ総理として、安倍氏が有力である。4月に靖国神社に参拝したことが報道されるなど、彼の動静に注目が集まっている。彼が掲げる政策では、構造改革における敗者復活、教育改革が中核になると言われている。それらの重要性は言うまでもないが、足許に火がついている問題への具体的な解決も求められるであろう。具体的には、外交では中韓との外交関係の建て直し、経済では構造改革と消費税、財政再建問題である。

安全保障問題では

こうした問題に対し、日本人の民意はどうなのか。下表をご覧いただきたい。

表

「戦争が起きたら国のために戦うか」との質問に対して、北朝鮮では「戦わない」との回答は許されないから、「戦う」と答える率は100%であろう。注目すべきは、日本の「わからない」「無回答」の多さである。憲法9条が戦争を放棄し、軍隊を持たないということを決めている以上、戦争が起きるという事態を想定できないということなのであろうか。日本はこのレベルの議論をこれから行う国であるということを認識する必要があるし、それはそれで世界に例を見ないユニークさがある。どう戦うかではなく、そもそも国を守るために戦う必要があるのか、という問題である。自衛隊への信頼度も、他国の軍隊への信頼度に比べ極めて低い。なじみがないということである。

日本史を見ると、平和が長く続いた後または国内に問題がない状況で外国からの攻撃など負の接触があると、日本人は集団的にゼノポビック(外人嫌い)な対応を狂信的に取ることがある。天下統一後の秀吉の朝鮮出兵、ペリー来航後の攘夷論、満州事変後の国際連盟脱退から太平洋戦争にかけて、などが例として挙げられる。そうした時に現実的な対応が取れる指導者がいないと、大きな痛手を被ることになる、というのが歴史の教訓である。

北朝鮮からのミサイル発射が日本を揺さぶることを意図してか、そうでないかは分からぬが、こういった動きは今後も続くであろう。そうした時に「わからない」と回答した層は大きくスイングして、対外強硬論にすぐに結びつきうる。安倍さんは、現実的な対応を国民にオプション提示できるのか。短期、中期、長期に分けた説明はこれまで聞かれていないし、本人に明確なビジョンがあるのかどうか。それなくして国民意識が変わるはずもなく、憲法改正などナンセンスである。最近色あせてきたが、ブレア首相の登場時のような花がないのではないか。安倍チルドレンが年初来ブレア首相の側近を使った大統領的な政権運営手法を学びにロンドン入りしたという。果たして中身あっての手法ということを学んだであろうか。

経済問題では

一方、経済面はどうか。下表を見ると、国民は競争社会 を望みつつも、福祉の維持については、賛成か反対かではなく、もうやむを得ないと考えているようである。この点、安部さんは消費税増税については、選挙前のせいなのだろうが慎重である。名目成長率が伸びれば、増税幅を圧縮できるとしている。

表

名目成長率は、インフレ率と実質的な成長率、すなわち国民が産む付加価値の真の伸び(価格ではなく、生産量の伸び)の合計である。名目成長率を伸ばすためにインフレを起こすというのでは、単なる政府による借金の踏み倒しである。そこで実質成長率の伸ばし方が問題になるが、教育改革で育った人材が国の成長に貢献するのは30年後でしかない。短期的に規制緩和や税制の政策的活用などで、消費をどう伸ばすか、高齢化社会の中での労働力不足に対し、どのように労働力を増やすのか、労働を多く使う財の輸入拡大が大きな課題となるはずだが、ここについてほとんど言及がない。竹中氏を使わないとして、誰が経済ブレインになるのであろうか。市場での注目点はそこにある。

(2006年8月9日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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