第5回 ガーデニングで戦うおじさん
リチャード・レイノルズ
Richard Reynolds
ゲリラ・ガーデナー、広告コンサルタント、ミュージシャン、作家
1977年生まれ、32歳
デヴォン出身/ロンドン在住
「手入れがされていない土地は、勝手にガーデニングをしてしまえ」と、土地所有者の許可を得ずにロンドンの荒地を開拓するおじさんがいる。彼が行う「ゲリラ・ガーデニング」は今、世界各地に広がっているという。
「戦場」で必死に「戦う」、「ゲリラ部隊」のみなさん
現在の活動を始めたきっかけは何ですか。
街中のあらゆる場所に点在する、雑草だらけの土地があるだろう。そんな荒地を見つける度に、土地のムダ使いをしているなって思うわけだ。その土地を、緑豊かな草木や花で埋め尽くしたら、どんなに街並みが奇麗になるだろうって。
なぜ「ゲリラ・ガーデニング」なのでしょう。
主張そのものを言葉だけでなく、行動に移してやり抜こうという意味を込めて、ガーデニングを「戦い」、花を植える土地を「戦場」、僕らメンバー全員を「ゲリラ部隊」として捉えている。「戦争」っていうのはあくまで比喩なんだけど、実際に警察に逮捕されそうになったこともあるしね。ゲリラ的な戦法を取らなければ、官僚体質にどっぷり漬かった行政には立ち向かえないと思うんだ。
行政と一致協力しようとは思わないのですか。
車道スレスレの場所でガーデニングをすることもあるし、それで事故が起こったら行政全体としたら都合が悪いだろう。僕らの活動に賛同する人が内部にいたとしても、行政としたらタブーにするほかないんだろうね。
具体的には何をするのですか。
まずは荒地を探し当てることから始まって、それをウェブサイトや電話を通じてメンバーに告知する。参加者は多くて10人くらい。作業は10分で終わる時もあれば、3時間かかることもある。フェンス越しなど土地を掘り起こすのが難しそうな場所には、自家製の「種爆弾」を使う。粘土、植木の種、土と肥料を混合させた堆肥を、ピザ生地を作る要領で丸めて伸ばした後、小さなお団子にするんだ。それを丸1日天日干ししたものを投げ入れれば完了さ。
どのようなものを植えるのでしょう。
ラベンダーやタイムといった、あまり手をかけずとも立派に育つハーブ類が多いかな。チューリップのような色鮮やかで、目に付くものを植えたりもするね。
材料費はどのように用意するのですか。
寄付金から出したり、自分たちでかき集めたり。僕たちが作ったラベンダーを詰め込んだ、「ラベンダー枕」の売上金も、大切な収入源の一つだよ。
「ゲリラ・ガーデニング」を行うにあたって、何が一番の課題となりますか。
ガーデニングは時間と労力を要するから、本当に土いじりが好きっていう強い気持ちを持つことが大切だと思う。ニューヨークでは既に実現した、行政と共にゲリラ・ガーデニングを行うような試みが、他の都市でも実現できる日が来るのを願っているよ。
(取材・執筆: 高橋百合子)
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