第6回 人生を販売するおじさん
イアン・アッシャー
Ian Usher
人生販売サイト管理人、カスタマー・アシスタント
1963年生まれ、46歳
ダーリングトン出身、世界各国を放浪中
離婚をきっかけに、お財布とパスポート、そして服一着を除いた所持品すべてをインターネット・オークションで販売してしまおうと企画したおじさんがいる。自身の人生を丸ごと販売するウェブサイト「A Life 4 Sale」を2008年6月に立ち上げた彼は現在、転職を繰り返しながら世界各国を放浪中だ。
イアンさんの「人生を購入」した人を
温かく迎え入れることになった友人たち
なぜ「人生販売サイト」を立ち上げたのですか。
生涯で一番愛した女性との離婚をきっかけに、彼女と過ごした家や彼女を思い起こさせるすべてを売り払って、新しい場所で、真新しい人生を始めたかったからさ。
具体的には何を販売したのでしょうか。
文字通り僕の人生に関わるすべてだよ。僕が住んでいた家を購入してくれた人には家の中にある物をまとめて提供したし、その土地に引っ越したばかりのときでも寂しい思いをさせないように、地元で温かく歓迎する僕の友達も紹介したんだ。
身の回りの物で、最も残しておきたくなかったのは?
元妻の写真だな。彼女との旅行写真を見ると、やっぱり寂しくて、切ない気分になるから。
元の奥様と離婚した理由は何ですか。
それが僕たち2人にとって一番の結論だったから、とだけ言っておこうかな。
なぜネット・オークションを選んだのでしょう。
以前にもネット・オークションに出品していたことがあって、使い慣れていたということ。あとは今回の様な、ちょっと偏屈なことをして世界各国の人に興味を持ってもらうにはちょうどいいツールだと考えたからだよ。
人生を「売り払う」ことに躊躇(ちゅうちょ)しなかったのでしょうか。
次の人生へと移る心の準備が既に整っていたから、躊躇はしなかった。人生とは様々なことを経験してこそ楽しめるもの。できるだけ高い壁にぶつかって、新しいことに挑戦して、色々発見していくことが必要なんじゃないかな。
転職を繰り返しているようですが、何か理由があるのですか。
スキーや山登りといった課外授業の教師として、欧州各地で働き始めたんだ。それからバイクのトレーダー、プール運営のマネージャー、携帯電話の営業マン、自営業を少々と鉄道業界や金融業にも。僕には新しいことを経験するためや、旅行先での最低限の生活費を稼ぐための手段としてしか仕事を捉えることができないのかも。キャリア志向でないことこそ僕らしい生き方なのかな。
「人生販売」を終了した今、何か今後の計画はありますか。
いつかは英国へ戻ろうと思っているけど、明確な予定はまだ立てていない。ドバイや米国を訪れたり、あとは日本に行って「札幌雪祭り」も見てみたいな。行きたい場所もやりたいことも、まだまだ山のようにあるんだよね。
(取材・執筆: 高橋百合子)
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