第8回 食べ物で芸術するおじさん
カール・エドワード・ワーナー
Carl Edward Warner
写真家
1963年生まれ、45歳
リバプール出身/ケント在住
少年時代に読んだ「オズの魔法使い」の物語に憧れて、食べ物を使って幻想的な世界を創り出すことに精を出すおじさんがいる。食べ物でできた写真アート「フードスケープス」を鑑賞した人の笑顔を見るのが大好きというおじさんに話を聞いた。
食べ物でできた立体モデルを写真撮影して
風景画に見立てたアート、「フードスケープ」
食べ物を使った写真アートにこだわる理由は何ですか。
最大の醍醐味は、一見しただけでは普通の風景画に過ぎない「フードスケープス」を観た人をハッとさせること。この作品の至るところが食物でできているって気付いたときに、自然と笑みがこぼれてしまうと思うんだ。
この作品の制作工程を教えてください。
まずはスーパーで野菜と睨めっこをして、作品の構想を練る。案がまとまってきたら、サイズ・形・色を考慮しながら、自然と絵に溶け込みそうな野菜を多くて60種類くらい選別するんだ。その野菜を使って立体絵画を制作し、写真撮影を行う。全体図の一部に当たる、いくつかの細かな部分を何層にも分けて撮影していくから、制作に最低2、3日は費やしちゃうな。最後に全部の層を重ねて、1枚の写真作品に仕上げるんだよ。
随分と手間をかけているんですね。
食べ物を風景画に化かすという幻想を作り上げるためには、手間を惜しまないよ。カメラを覗いて、少しずつできあがっていく様子を確認する度に感じるワクワク感がたまらないしね。
制作において何か特別な苦労はありますか。
食べ物って、やはり生ものだからね。照明が発する高熱で腐らせてしまう前に撮影を終わらせなくてはいけない、というような苦労はあるね。
この作品を通して伝えたかったこととは何でしょう。
悲しいニュースばかり報道されるこんなご時世だからこそ、僕の作品で少しでも多くの人に笑顔になってもらえたらと思う。さらにこの作品を観た子供たちが食べ物の好き嫌いを減らしてくれたら、さらにうれしいな。
食べ物の無駄遣いのようにも思えますが......。
撮影で使用した食べ物は照明や接着のりによって傷んでしまったから、廃棄せざるをえなかった。だけど余った食べ物は撮影スタッフの間で分けて持ち帰ったよ。食品の無駄使いと言えば、レストランやスーパーでの廃棄量は桁違いだしね。むしろ私たちが幸運にも食べ物に有り付けることへの喜びの表現として捉えて欲しいな。
次の作品に対する意欲を聞かせてください。
実は「フードスケープス」に対しては、世界各地から興味を持っていただいている。今後は皆が大好きなチョコレートを材料にしてみたり、日本や中国など行ったことのない国に赴いたりして、その土地の特産物を使ってみるというのも興味深いかな、と思っているよ。
(取材・執筆: 高橋百合子)
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