第10回 宇宙船に住むおじさん
トニー・アレイン
Tony Alleyne
インテリア・デザイナー
1953年生まれ、56歳
英国リーズ出身 / レスターシャー在住
幼いころに観たSF映画に影響を受け、自宅であるフラットの一室を、まるごと宇宙船の船内に改造してしまったおじさんがいる。すべて独学で、そしてたった1人で、ハイテク機能を備えたインテリアを完成。「夢を持ち続けていれば、いつか必ず実現できる」、そう言い切るトニーさんに話を伺った。
タッチ・パネルや指令台を備えたトランスポーター・ルーム
部屋を宇宙船に改造しようと思ったきっかけは何ですか。
幼いころに、英国人作家ハーバート・ジョージ・ウェルズの小説が原作の「月世界最初の人間」というSF映画を観たんだ。少年だった私は、その中のあるセリフに感動して、それからSFにハマってしまった。ジョセフ・ケイヴァーという登場人物が、何年もかけてようやく完成させた宇宙船の中に入って、内部を見渡してから言うんだ、「これは私の小さな王国だ」ってね。その時、そんな瞬間を自分の人生で迎えられたら、どんなに素晴らしいだろうって思って……。そう思い続けていたら、やがてチャンスが訪れて、夢を実現することができたんだ。
参考にした宇宙船のデザインを教えてください。
この家は、米国のSF番組「スタートレック」に出てくる宇宙船「Voyager」のレプリカ。この番組がテレビで放映され始めたとき、物語の展開や演技はもちろん、全く違うバックグラウンドを持つ登場人物たちが1つの目標を目指すというストーリーに、とても魅了されたんだ。
お1人で改造されたんですか。
ああ、元々は普通のワン・ルームのフラットだったんだけど、1人で改造したよ。
家には窓が見当たりませんが。
2007年に大掛かりな改装をする前までは、窓が1つあったんだ。光を遮断するために「プレキシグラス」というアクリル樹脂を窓ガラス替わりに使用していたんだけど、それでも日光が入るから、見た目に納得がいかなくて……。結局、黒く塗りつぶしたら、より宇宙船らしい外観になった。
ご家族は、この家についてどう思っているのでしょうか。
家族はみんな、私が宇宙船を造りあげたことを誇りに思ってくれているよ。母はデザインを気に入っているけど、日光や伝統的な家の住み心地が好きだから、同じような環境では暮らせない、とは言っていたね。
改造中、何か苦労されたことはありましたか。
どんな作業も楽しかったし、最終的な出来栄えにとても満足している。伝統的なものを、自分が夢に描いていたものに作り変えることは、本当に幸福な作業だったよ。
読者の方にメッセージをお願いします。
これまで家を改造するにあたって、人から教わったことも、どこかで訓練したこともない。子どものころから持ち続けてきた夢と情熱だけで、ここまできたんだ。たいていの場合、それさえあれば幸せになれるはずだよ。夢は持ち続けていれば、叶えることができる、ってことさ。
(取材・執筆: 大西奈津美)
< 前 | 次 > |
---|