今回は、投資家ビザの変更案についての最新状況をお伝え致します。本誌では英国の移民諮問委員会(MAC)が変更案を発表した直後となる今年3月にもその概要をお伝えしました。最近になって、この変更案が実施されることを見越した具体的な動きが見られるようになってきましたので、今回は最新の状況を含めて再度説明します。
● 投資家ビザとは
英国では、投資をする人々を対象に滞在を許可する「投資家ビザ」が発給されています。主な条件は、以下の通りです。
① 計100万ポンド(約1億7000万円)の現金のうち、少なくとも75万ポンドを英国の株や国債などに投資し、 残りを英国の不動産投資に使うことができる。
② 既に不動産など200万ポンド相当以上の資産を持ち、そのうち100万ポンドを英国で管理・投資することができる(ローンによる投資も可)。
2013年9月までの1年間で、560人に対して投資家ビザの申請が許可されました。その多くをロシア、中国、米国出身者が占めていたようです。また本カテゴリーにおいて1030人の被扶養者ビザが発給されています。
日本人にとっては、日本で事業を成功させた後に英国への移住を検討されている方にとってはもちろん、日本人駐在員として英国支社の要職などを経験した後に、会社から独立した上で英国に留まり続けるための一つの方法としても人気を集めています。
● 投資家ビザについての論点と変更案
移民政策に関して政府に対する提言を行うMACは今年2月、この投資家ビザの変更案を記した100ページに及ぶ報告書を発表しました。同報告書は、多くの投資家ビザの保有者たちが投資額の大部分を国債の購入費用に充てており、永住権を得た時点で国債を換金してしまうため、英国経済への貢献という投資家ビザの本来の目的を果たすことができていないとの問題点を指摘。この課題を解決することを目的として、最低投資額を200万ポンドへと倍増すべきという提案を行いました。
● 投資家ビザ変更案の見通し
MACの報告書に法的拘束力はありません。しかしながら、政府は過去に同委員会からの提案の多くを受け入れてきたという実績があります。また一部の銀行では、今年10月よりこの変更案が実施される可能性があるとのアドバイスを既に投資家向けに始めているようです。
仮にこの変更案が施行されるとなると、投資家ビザの取得を検討している人にとっては投資金額が倍増することになります。このため、マネー・プランの見直しを図る必要が出てくる方もいるかもしれません。
ただ200万ポンドの投資が難しいという場合でも、起業家ビザを申請する選択肢が残されている可能性があります。この点については詳細にわたる確認が必要となるので、検討される際には必ず専門家にご相談ください。
投資家ビザに関する状況は、今後大きく変更される可能性があります。このため、同ビザの取得を検討されている方は、ご自身の経済状況や申請時期によって、申請条件の変更への対応を余儀なくされる場合もあるでしょう。手続きは専門家と二人三脚で、そして早い段階で準備を始めることをお勧めします。