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Thu, 28 March 2024

第143回 ギネスの缶とラムネの瓶

「3月の風と4月の雨が5月の花を運んでくる」ということわざがありますが、4月に入ってもシティのビル風は強いです。風に関する本を読んでいたら学生時代に習った「ハドレー循環」の説明がありました。提唱者のジョージ・ハドレーはロンドンにあるリンカーン法曹院の法律家。趣味が高じてアマチュア気象学者になり、赤道付近で上昇した湿った空気が高緯度で冷やされ、乾燥した空気になって下降する大気循環説を1735年に発表しました。

ハドレー循環で大気循環を提唱
ハドレー循環で大気循環を提唱

北緯30度付近では高気圧がよく発生し、乾燥した気候になります。そのためサハラ砂漠、シリア砂漠、タール砂漠、ゴビ砂漠など大陸を問わず砂漠が多く存在します。また、砂漠の周辺に大河が流れ込む場所があることで、エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、さらに黄河・長江文明などの古代都市文明が誕生しました。砂漠の遊牧民と川辺の農耕民が交わる所の北緯30度付近に都市文明が生まれたのは偶然ではなさそうです。

古代文明と北緯30度線
古代文明と北緯30度線

そんな話をアイルランド出身の知人にしたら、ギネス・ビールの中にも気泡の対流が起きていると教えてくれました。ギネスの缶の中にはフローティング・ウィジェットというプラスチックのボールが入っていて、中には高圧の窒素ガスと炭酸ガスが詰まっています。缶のふたを開けると内部の圧力が一気に低下し、そこから気泡を噴き出しますが、窒素の気泡は炭酸ガスより細かく軽いので、缶の中は勢いづいた気泡の対流ができるそうです。

丸い球が気泡噴出器
丸い球が気泡噴出器

そして時間が経つにつれ、拡散した気泡が上方に集まり、まるで雲を作るようにクリーミーな泡の層ができあがるということなので、パブでギネスを注文してみました。店の人が定番のチューリップ型のグラスを45度に傾け、8割ほどで注ぐのを止めますと、細かい気泡がグルグル対流するのが見えます。待つこと119.53秒(だそうです)。泡と液体が分離し、最後に少し泡を注ぐと、「待てば海路の日和あり」のことわざ通り、待つ人のもとに至福が訪れます。

飲むまで119.53秒待つのがルール
飲むまで119.53秒待つのがルール

ギネス缶のボールを見てラムネ飲料の瓶を思い出しました。ラムネは明治初期に英語のレモネードが訛ってラムネという商品名で販売開始。飲み口と窪みの間にガラス玉が封入され、炭酸水の内圧で密封されます。この瓶は1872年にロンドンの技術者ハイラム・コッドが発明しました。ガラス玉を下げれば気泡が下から上に昇り、対流は起きませんが、飲んだ後に玉が音を立ててクルクル回ります。小さな世界が大きく見えてきます。

ラムネ瓶が発明されたのはロンドン
ラムネ瓶が発明されたのはロンドン

 
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シティ公認ガイド 寅七

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『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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