第184回 ガーナ人に教えてもらったこと
世界中のお国自慢の料理を食べ歩きできるのがロンドンの魅力の一つですが、最近、コロナ禍を理由に廃業するレストランが相次ぎ、とても残念です。それでも自宅近くのテイクアウト専門のアフリカ料理店は、シティのビジネスマンが訪れなくなってもどうにか生き延びています。今もときどきその店自慢のジョロフ・ライス(JollofRice)という、肉や野菜のたっぷり入ったトマト風味のスパイシーな炊き込みご飯を買いに行きます。
ジョロフ・ライス
ジョロフ・ライスはかつて現在の西アフリカのセネガルにあったジョロフ王国のご飯という意味で、スペイン料理のパエリアによく似ています。どちらの起源もたどっていくと、7世紀のイスラム国ウマイヤ朝の炊き込みご飯が北アフリカに伝わったのが出発点のように思います。さすが王朝名が「うまいや」です。その後、ジョロフ・ライスは西アフリカ一帯に広まり、ガーナやナイジェリアを代表する家庭料理になりました。
西アフリカの国々
店先で注文品を待っているとガーナ人の顧客が来ました。少し立ち話をすると、その顧客の友人が医学のために英国留学しており、その知人がガーナの野口記念医学研究所に勤務していることを教えてくれました。ガーナといえばチョコレートか黄金の産地しか思い浮かばなかった自分には、野口英世博士の名前がとても新鮮でした。そうです、野口博士は黄熱病の研究の最中、ガーナで黄熱病に感染し、51歳の若さで短い生涯を遂げたのでした。
野口英世博士
野口博士は幼少期に大やけどを負いますが手術で治り、医学の素晴らしさを知ります。猛勉強して世界的な細菌学研究者になり、黄熱病の研究のためガーナに向かいました。黄熱病はウイルスによる感染症の一つで、博士はワクチンを作ろうとしました。しかしその時代には電子顕微鏡がなく、細菌よりはるかに小さいウイルスを発見することは不可能でした。それでも自分たちを救おうとしてくれた博士を、そのガーナ人は国民的英雄だと言っていました。
大正時代のサンタさん「子供之友」西アフリカの国々 (1914年)
そういえば、野口博士は若いころにキリスト教徒になり、教会の手伝いも熱心だったそうです。大正時代、日本の教会は貧しい子どもたちにチッケンライス(トマト・ケチャップのないチキンライス)をクリスマス会で配布していたと聞きましたが、博士は日本でもガーナでも、よく似た炊き込みご飯を食べていたのかもしれません。愛は地球と空腹を救う。来年こそ平穏な世界になりますよう、どうぞ良いお年をお迎え下さい。
メリー・クリスマス、どうぞ良いお年をお迎え下さい
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