第192回 創業100年を超えるロンドン東部のお店
某調査によれば創業100年を超える長寿会社は日本に約3万3000社もありますが、英国には約2000社弱と少ないです。ロンドンで創業100年を超えるお店といえば裕福な顧客を相手にする紳士服、靴、葉巻、香水、帽子、ワインなどロンドン西部セント・ジェームズ地区の高級専門店を思いつきますが、ロンドン東部の長寿のお店はどんなものでしょうか。
1855年創業のベーグル店
ロンドン西部は上流階級の街であり、ロンドン東部は移民や労働者の街です。ロンドン東部の老舗の創業者も移民や労働者の出身なので、多忙な庶民の空腹と懐具合を心底理解しています。店の外観にあまりお金をかけず、とにかく早い、安い、うまい料理で庶民の胃袋を支えることがロンドン東部でお店が長生きするコツ。今回、寅七は自宅から徒歩圏内にあるロンドン東部の老舗の飲食店をご紹介したいと思います。コロナ禍のためお店が休業したりテイクアウト専門になったりと、店内撮影が難しかったことをご了承下さい。
1915年創業のパイ&マッシュ店
まずは1855年創業のベーグル店、「バイグル・ショップ」(ブリック・レーン155番地)。ユダヤ移民のコーエン氏が創業し、近くの「バイグル・ベイク」(同159番地)を1974年にのれん分けしました。イディッシュ語(東欧系ユダヤ人の言語)ではベーグルをBeigelと書き、バイグルと発音します。同店は年中無休24時間営業。廉価でおいしいソルト・ビーフ・ベーグルとチーズ・ケーキを求めて行列が途絶えません。
パイ&マッシュとリカー・ソース、ウナギのゼリー寄せ
次はロンドン東部名物、ウナギのゼリー寄せとパイ&マッシュで有名な「S&R ケリー&サンズ」(ベスナル・グリーン・ロード284番地)。路面電車の運転士だったサミュエル・ロバート・ケリーが交通事故に遭い、その補償金で1915年に創業しました。全盛期には支店が6つもありましたが今はこのお店だけ。ウナギのゼリー寄せもパイ&マッシュにかけるリカーもまさにご当地グルメです。
1900年創業の大衆食堂
また、「カフェ」ではなく「キャフ」と呼ばれる大衆食堂「E. ペリッチ」(ベスナル・グリーン・ロード332番地)はイタリア移民が1900年に創業して以来、人気の食堂ですし、1911年にウクライナ移民が始めたパン工房「リンコフ」(ジュビリー・ストリート224番地)はクロドー(クロワッサンとドーナッツの融合焼き菓子)で有名です。ロンドン東部のお店でお腹を満たすと、これまでとは違うロンドンが見えてきます。
1911年創業のパン工房とクロドー
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