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Mon, 18 November 2024

第271回 テムズ河川警察と交番の由来

シティのリヴァプール・ストリート駅前に青いポリス・ポストがあることにお気付きの方も多いと思います。このポストから警察や消防署に電話ができ、かつてはロンドンの至るところに置かれていました。導入時の1920年代には電話連絡だけではなく警官が待機する交番の役目をするものもありました。でも最近は電話専用となり、その数も激減しています。将来、AIを活用したデジタル交番に進化できないか検討がされているようです。

駅前のポリス・ポスト 駅前のポリス・ポスト

英国の警察の発祥は1798年、シティの隣町ワッピングの水上警備隊マリン・ポリスにさかのぼります。当時、テムズ川で荷下ろしを待つ貨物船に忍び込む盗賊が増え、多くの被害が出ていました。そこで、西インド諸島貿易の商人が中心となって盗賊を取り締まる組織を作りました。ところが給与が仕事高払いだったせいか、川沿いの家宅捜査を行い、窃盗の疑いのある人を片っ端から捜査、検挙、罰金、投獄していきました。

テムズ河川警察本部ビル テムズ河川警察本部ビル

もともとワッピングの港湾労働者は低賃金でしたが、特に石炭の積み下ろし人の賃金が低く、それは最貧民層のアイルランド移民の仕事でした。賃金が低い分、仕事が完了すると大籠一つ分(約36リットル)の石炭を持ち帰って良いという古くからの習慣がありました。ところが、マリン・ポリスはそれは違法行為だといって厳しく取り締まったのですから、港湾労働者はたまったものではありません。権力の横暴だとして抗議をしました。

英国の警察の活動はパトロール中心 英国の警察の活動はパトロール中心

抗議は暴動に発展し、マリン・ポリスの建物は損壊。軍隊まで出動しました。その後ようやく住民との話し合いが持たれ、1800年にマリン・ポリスはテムズ河川警察と名称を変え、内務省の管轄下になりました。給与は固定給とし、制服着用、何よりもパトロール重視、犯罪防止を主眼とする組織に変わりました。これが成功し、29年にはロンドン警視庁が設立され、39年にテムズ河川警察はロンドン警視庁の傘下に入ります。

 港湾労働者の抗議のイメージ 港湾労働者の抗議のイメージ

フランスの警察が市民革命、第一帝政、王政復古と社会の不安定な時期に市民を監視する公安警察として発展したのとは対照的に、英国の警察は国家権力の介入を最小限にして、パトロールを重視した犯罪防止が活動の中心です。日本の警察は明治時代にフランスの警察を見本にしましたが、英国のパトロール制も採用しました。江戸時代に番人が詰めていた番所を拠点に、そこから交代制でパトロールする機能を作りました。交代番所=交番となり、パトロールの和訳「巡邏査察 じゅんらささつ」から巡査が生まれたのです。

 トラファルガー広場のかつて警官が常駐した交番 今や物置になった、トラファルガー広場のかつて警官が常駐した交番

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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