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Sun, 24 November 2024

ロンドンでおいしいと評判の魚屋さん

ロンドンの魚屋さん英国のスーパーではタラとサーモンしか目につかない、魚屋は日本と勝手が違うような気がして敷居が高い、でもおいしい魚は食べたい。そんな悩みを抱える英国在住者は多いはず。秋は夏の魚と冬の魚が両方出まわり、魚介類のチョイスが最も増える時期でもある。この機会に、どんな魚を、どうやって買うのか、ロンドンで評判の魚屋さんに聞いてみよう。魚のプロによる小技やレシピも紹介!
(Steve Hatt 取材: Keiko Lippard)

ロンドン北部で3代続く老舗
Steve Hatt スティーブ・ハット

スティーブ・ハット大通りに面し、ブルーの店構えが良く目立つ
スティーブ・ハットすべての魚は採れた場所や養殖であるか否かを明記
スティーブ・ハット
鮮度を保つためしばしば大量の氷を補充
スティーブ・ハット
今が旬の、脂がのった大きなサバ

大通りに面していながら商店は少なめ、落ち着いた雰囲気の街角に位置する。3代にわたりこの土地で商いをする、今年で創業121年の老舗魚屋は、ほかの魚屋からも一目置かれる存在だ。鮮やかなブルーで統一された店の間口幅いっぱいに、更に鮮やかな光沢を放つ鮮魚が所狭しと並べられている。「先代まではウインドーなんてない、露店売りスタイルだったらしいよ」と、セミリタイアしたオーナーに替わって店を切り盛りするマネージャーのスティーブ。しばしば勢いよく大量の氷を補充し、商品の鮮度を保つのに余念がない。

国内産は主にコーンウォールから毎日届けられ、新鮮さは保証付き。生食用に求めるにもまぐろやサーモンはもちろん、鮮度の落ちやすいサバやイワシなども含め、あらかじめ注文しておく必要もないとの自信を見せる。「なじみのない魚でもぜひ試してみてほしい。予算を言ってくれればそれに見合った魚を選ぶし、レシピも教えてあげられるよ。最も新鮮な魚の一番の調理法はあまり手を加えず、味付けも軽く塩コショウしただけのシンプル・イズ・ベスト。何より火を通し過ぎないのがコツだね」と自らも大の魚好きの言葉だ。

魚に捧げる大きな愛情
Fin & Flounder フィン&フロウンダ―

フィン・アンド・フロウンダ―新鮮な魚介類がどんどん並べられていく
フィン・アンド・フロウンダ―「エラと平らな魚」という意味の店名らしい
フィン・アンド・フロウンダ―
魚のタトゥーも見せてくれたマネージャーのダン
フィン・アンド・フロウンダ―
スモークされた魚や塩、瓶詰のマサゴなども並ぶ
フィン・アンド・フロウンダ―
店の前には配達用の可愛い自転車

おしゃれなカフェが連なるロンドン東部のブロードウェイ・マーケット。その一角にある水色の小さな可愛いショップがこのフィン・アンド・フロウンダ―だ。マネージャーのダンは左腕に魚のタトゥーを入れたほどの魚好き。取材時はちょうど新鮮な魚介類が運ばれてくる時間帯だったが、忙しい合間をぬって「見てこのキレイなマコウダイ」「ほら、お刺身にもできる新鮮なホタテ」と大事そうに商品を見せてくれた。ここの商品はすべて海洋保全協会のルールに則って採られたものか、土壌協会のお墨付きをもらった養殖場から仕入れたものだという。入口の左側には貝類やカニ、燻製の魚、調味料などが並ぶ。

土曜日のマーケットで賑わうときにはストールを出し、ブリオッシュのロブスター・バーガーやタパス的なメニューも特別に作るといい、魚だけではなく料理にも一家言ありそうだ。ストールはマーケットにやって来る食にうるさいヒップスターたちにも人気で、行列ができるほど。今日のお勧めは? と聞くと「サバ」。そう言ってる間にも、後ろから入ってきたお客さんが早速3匹買い上げていった。比較的落ち着いている平日は配達もするそう。

  • 71 Broadway Market , London E8 4PH
  • Bethnal Green駅から徒歩10分
  • 020 7998 4929
  • 火~金 8:00-19:00、土9:00-17:30、日9:00-17:00
  • www.finandflounder.co.uk

元シェフたちが作ったこだわりの店
The Fishmongers Kitchen
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン

ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン店は明るい雰囲気が漂う
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン奇麗に並んだ魚にはたっぷりと氷がかかる
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン
どの魚を持つかでもめたお二人
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン
オリーブ・オイルやパスタと一緒に米酢も並ぶ
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン
ケータリング・サービスも行っている

ロンドン西部ハマースミスの駅から歩くこと5分。落ち着いた雰囲気の「ブルック・グリーン」と呼ばれるエリアにある、大通りに面した店舗。ショーウインドーから見える魚には氷がたっぷりかかっており、天井の高い店内はとても清潔なのが印象的だ。この日店で働いていたのは、ジェロームとルドビックというフランス人の2人組。マネージャーでもあるジェロームは、以前東京や大阪のホテルでシェフとして働いていたこともあるのだとか。

この店のオーナーであるトニー・リカストロも、元々は高級和風レストラン「ノブ」などで働いていたシェフで、2010年にこの地に鮮魚の店をオープンした。スタッフの料理の腕を生かし、店ではロブスターのビスクや海老のカレーなども販売するほか、シーフード・プラターのケータリング・サービスも行っている。今日のお勧めはスズキだと言うので、どうやって調理するか尋ねると、意外にもシンプルに「焼きでしょ」と一言。ほとんどの魚は英国近海、3マイル以内で採れたものばかりだから新鮮。新鮮なものはシンプルに食すのが一番、ということのようだ。

  • 119 Shepherds Bush Road, London W6 7LP
  • Hammersmith駅から徒歩5分
  • 020 7603 0673
  • 火~金 9:00-18:00、土9:00-17:00
  • http://fishmongerskitchen.com

気軽にレシピの交換ができそうな空間
Moxon’s Fishmongers
モクソンズ・フィッシュモンガーズ

モクソンズ・フィッシュモンガーズヒラメやマトウダイは英国でも好まれる魚
モクソンズ・フィッシュモンガーズ日本人のお客さんもたくさん来るそう
モクソンズ・フィッシュモンガーズ
まじめでフレンドリーなマネージャーのポール
モクソンズ・フィッシュモンガーズ
天ぷら粉を始め、便利な調味料がいっぱい
モクソンズ・フィッシュモンガーズ
レモンやハーブ類も売られている

ロンドン各地に店舗のあるモクソンズのイースト・ダリッジ店は、独立系映画館「ダリッジ・ピクチャーハウス」の斜め前。地元民に愛されるカフェやレストランに囲まれた、賑やかな一角に店を構える。店の外にはレモンやフェンネルなど、魚料理に合いそうな野菜が積まれ、窓際には天ぷら粉や寿司酢が並ぶなど、関連の商品がここですべてそろうようになっている。

「以前、日本のテレビ局が取材に来たんだよ」とうれしそうな、マネージャーのポール。牡蠣の街ウィスタブルの出身で、お店に置けるような牡蠣を現在、現地で育てているところだという。あと2年くらいしたら店で売れるはず、とのこと。「それまではフランスからの輸入品だけどね。牡蠣には何種類もあるって知ってた? 今、週に3種類ずつ試しているけど、全部味が違うよ! 」穏やかな笑顔だが、牡蠣に対する熱い想いが伝わってくる。横で話を聞いていた客の一人が「あなた日本人なの? 私、日本風のカラアゲをマーケットで売ってるんだけど……」と話しかけてきた。魚をさばいてもらう間、皆がおしゃべりをする和気あいあいの空間に、参加してみるのも楽しいのでは。

  • 149 Lordship Lane, London SE22 8HX
  • East Dulwich駅からバスで5分
  • 020 8299 1559
  • 火~土 9:00-17:30
  • www.moxonsfreshfish.com

フランスのエスプリと日本の品質
La Petite Poissonnerie
ラ・プティ・ポワソヌリー

ラ・プティ・ポワソヌリー怖い顔の魚。由香さんに調理法を聞こう
ラ・プティ・ポワソヌリー
話し好きの明るいオーナー
ラ・プティ・ポワソヌリー店の外に置かれているのは2種類の牡蠣
ラ・プティ・ポワソヌリー
長いカニの足はこの後すぐ買われていった
ラ・プティ・ポワソヌリー
フランスのグルメな食材も多々置いてある

「プリヒル姉さん」こと、由香ベルトンさんの勤務する魚屋。フランス人オーナーのニックは元シェフだが、ロンドンで一番の魚屋になることを目指し、2010年にロンドン北部の高級住宅街、プリムローズ・ヒルに1号店を開店した。日本での魚屋勤務経験の長い由香さんが勤務を始めたことで、客層も商品も一気に広がりを見せ、今ではご近所のみならず、フランス人や日本人が電車やバスを乗り継いでやって来るほどの人気店に。鮮魚ばかりでなく、フランスのバターから日本の七味唐辛子まで、調味料や惣菜なども置かれている。

店内ではフランス語が飛び交い、オーナーと客との熱心な料理談義も展開する。土曜日の取材時には引きも切らずに現れる客が、ニックのアドバイスを受けようと行列を作っていた。なお、お刺身が欲しい場合は事前に電話連絡し、受け取る方式。「サタデーズ・サシミ」は2人前が20ポンド、スターター・サイズなら18ポンドだ。ほかにオイスターやロブスターを使った盛り合わせもある。2号店はマーブル・アーチ(19 New Quebec Street, London W1H 7RY)にあり、木曜日には由香さんもこの2号店で働いている。

  • 75a Gloucester Avenue, London NW1 8LD
  • Chalk Farm駅から徒歩10分
  • 020 7483 4435(本店) 020 7723 1960(マーブル・アーチ店、日休)
  • 火~土9:30-19:30、日10:30-17:30
  • www.lapetitepoissonnerie.com

魚に関するABC

在英邦人の魚食向上のため日夜活動されている「プリヒル姉さん」こと由香ベルトンさんにご協力いただき、魚に関する役に立つ豆知識やヒントをご紹介。
文: 由香ベルトン @puriketsunesan

知っていると便利な一口メモ

Plaice プレイス(カレイの一種)
フィレになったものはムニエルに、丸ごとならぜひ煮付けに。離乳食にもぴったり。

Lemon sole レモンソール(カレイの一種)
クセがなく上品な白身の魚。ムニエル、煮付け、塩焼き、何にしてもおいしい。

Mackerel マックロウ(サバ)
発音に注意、「真っ黒」と言うように発音。季節を問わず脂があり美味。

Squid スクイド(ヤリイカ)
ヨーロッパのイカは日本では高級とされるヤリイカが主流。加熱しても柔らかく甘みがあるので炒め物にも煮物にも。

Skate スケイト(エイヒレ)
お勧めは煮付け。軟骨に沿ってたっぷり身が取れ甘辛味とよく合う。鮮度の良いものを選んで。

Monkfish モンクフィッシュ(アンコウ)
売られているのはアンコウの尾の部分。崩れにくいのでトマト煮込みやカレー、唐揚げにも。

Hake ヘイク(メルルーサ)
非常に柔らかい白身魚で、ホイル焼きや自家製さつま揚げの原料に最適。なめらかなさつま揚げに仕上がる。

Sea bass シーバス(スズキ)
英国で一般的な魚の一つ。塩焼きやアクアパッツァに良く合う。

Sea bream シーブリーム(タイの一種)
塩焼きに良い。フィレの状態ならソテーにしても。

Herring ヘリング(ニシン)
旬の冬場に出回るニシンは脂がのり、塩焼きにすればホクホクの身が楽しめる。サンマの代用にも。

Swordfish ソードフィッシュ(メカジキ)
焼肉のタレが意外によく合うのでお弁当にも。食感がブリに近く、照焼きでもおいしい。

Razor clam レーザークラム(マテ貝)
酒蒸しが簡単で貝の甘みが存分に味わえる。中の貝はすべて食べられる。

Clams クラムズ(アサリ)
砂抜きのコツは、塩水をアサリの頭が見える程度の量で。水の量が多いとアサリが呼吸できず、砂を吐かない。

Mussels マッソルズ(ムール貝)
ワイン蒸しは蓋をして3〜4分もあれば充分。加熱し過ぎは身が痩せてしまう原因に。安価なのでたっぷり食べられる。

Scallop(s) スカロプ(ス)(ホタテ貝)
基本的に加熱用。英国産ホタテは甘みがありクリーミー。オレンジ色の卵巣もおいしい。貝ヒモも堪能するなら殻付きを。

魚屋のワンポイント!

カレイ、ムール貝

カレイのフィレ
買う際には茶色い皮目の方を選ぶ。なぜなら、白い方を下にして泳いでいるため白い方は身が平ら。茶色い背側は身がふっくらしている。

ムール貝のヒゲ
引っ張ると中の貝が死んでしまうため、貝からはみ出たところをハサミで切り取る方が良い。貝に付いているフジツボなどは自然のものなので特に取る必要はない。

塩焼きにする際には
塩を振って最低20分は置く。一晩置いてもOK。塩がまんべんなく浸透し、中までほんのり塩味の効いたおいしい塩焼きが堪能できる。

簡単でおいしいプリヒル姉さんレシピ

お野菜と一緒にオーブン焼き

魚と野菜のオーブン焼き 材料(2人分)
  • お好きな魚(シーバスやシーブリーム、タラの切り身、サバなど)
  • スライスした野菜(セロリ、フェンネル、パプリカやキノコ類、玉ネギなど、どんな野菜でも。タイムなどのハーブも3本ほど入れると風味がアップ)
  • 塩、コショウ
  • オリーブ・オイル(ゴマ油に変えるとアジア風オーブン焼きに)

  1. 魚に塩を振って20分以上置いてなじませる。(重要! )
  2. オーブンを180度に予熱しておく。(オーブンは扇風機マークもしくは上下のバーが付いたマークに合わせるとオーブン内で熱風が行きわたり上手に焼ける)
  3. オーブン用皿もしくはオーブン・トレイに魚を載せ、お好きな野菜をスライスして魚のまわりに置く。(ニンジンやジャガイモ、スクオッシュなど硬い野菜はあらかじめ少しレンジで加熱しておくと良い)
  4. コショウを全体に軽く振る。
  5. オリーブ・オイルを野菜、魚の表面にかかるように(目安は大さじ2ほど)回しかける。上面のみで良い。
  6. 180度に熱したオーブンで約20分焼く。アルミをかぶせて焼くとスチーム効果でふっくらしたオーブン焼きに、アルミなしだと香ばしく。お好みで。
 

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