ニュースダイジェストのグリーティング・カード
Sun, 03 November 2024

スコットランドの首都エディンバラ。エディンバラ城、ホリールード宮殿、ロイヤル・マイルを中心としたオールド・タウンなど、世界遺産に指定されたその美しい街並みに惹かれてこの街を訪ねた人は多いことだろう。さらに毎年夏に開催されるエディンバラ・フェスティバルには、はるばる日本からも多くの観光客が押し寄せる。でも英国に住んでいる私たちは、せっかくだから数日滞在するだけの観光客が知らないエディンバラを見つけたい。そこで、今回は、エディンバラにまだまだ沢山ある魅力あるスポットやエピソードを紹介。何度訪れても楽しめる街であることがわかるはずだ。(野口大輔)

エディンバラの忠犬ハチ公 グレーフライアーズ・ボビー

Greyfriars Bobby

エディンバラを訪れた多くの人が知らないうちに通り過ぎている、グレーフライアーズ・カークヤード(Greyfriars Kirkyard)のすぐそばに立つ犬の銅像。グレーフライアーズ・ボビーと呼ばれるこの犬は、実はエディンバラ版の「忠犬ハチ公」なのである。

時は19世紀中頃。犬のボビーはエディンバラ市警察に勤めるジョン・グレイという名の男に飼われていた。ジョンが夜勤の時にはボビーも一緒に見張りをする良きパートナーで、いつも一緒だったのだ。だが、この友情も長くは続かなかった。それから2年ほど後の1958年2月15日、主人であるジョンが結核のため他界してしまったからだ。彼は、オールド・タウンにあるグレーフライアーズ教会の敷地内にあるグレーフライアーズ・カークヤードに埋葬された。

それでもボビーは、主人であるジョンの死を知ってか知らずか、ジョンの墓の脇に座り続けた。食事の時や寒い冬の日以外は、決してその場を離れようとはしなかった。そして以後はずっとジョンの墓のそばで暮らしたという。

1867年には野良犬を一掃すべきという提案が市より出され、全ての犬に対して飼い犬としてライセンス取得が義務付けられることになり、飼い主を既に亡くしていたボビーの身の安全が心配された。だが、当時の市長ウィリアム・チャンバース卿がライセンス費用を負担。エディンバラ市民から愛されていたボビーの命は救われたのである。

1872年1月14日、ボビーは帰らぬ「犬」となった。結局、約14年間にわたって主人の墓を守り続けたのであった。そしてボビーはグレーフライアーズ・カークヤードのゲートのすぐそばに埋葬されることになった。

川沿いの散歩道ウォーター・オブ・リース・ウォークウェイ

Water of Leith Walkway

エディンバラの街の喧騒に疲れたら、ちょっと足を伸ばしてウォーキングに出かけるのはどうだろう。そこでお勧めなのがウォーター・オブ・リース・ウォークウェイと呼ばれる川沿いの遊歩道。エディンバラを経由して海まで続いている長い道になっている。今回取り上げるのは、エディンバラ市街からスコットランド国立近代美術館とディーン・ギャラリーへと向かうルートだ。 ウォーキングはニュー・タウンの北西から始めるのが良いだろう。この遊歩道に足を踏み入れると、石造りの街並みが続くエディンバラ市街とはうって変わり、自然の息吹が感じられる。そして上流に向かって進んでいくと、川沿いに立ち並ぶ古い建物群が視界に入ってくる。ここはディーン・ビレッジ(Dean Village)と呼ばれる、穀物製粉の村として800年以上も続いた由緒ある歴史的な集落。絵のように美しい光景は、格好の写真撮影スポットだ。さらに川のせせらぎを聞きながらのんびり先へと歩いていくと、スコットランド国立近代美術館にたどり着く。川沿いのウォーキングはここで終了。

国立近代美術館の庭には「Landform Ueda」という小さな丘と三日月形の池からなるランドスケープ・アートがあって、その人工的な造形が興味をそそる。ディーン・ギャラリーは、国立近代美術館とは道を隔てた向かい側にある、こちらも魅力的な美術館。何はともあれ、とりあえずは展示室に入る前に美術館のカフェで一服して一息入れるのがいいだろう。そして、美術館に展示されている素晴らしい作品の数々を堪能しよう。
帰りは同じルートを引き返してもいいし、足が疲れたのでここから歩いて帰るのはちょっと、という人には市街までシャトルバスがあるので、それを利用してもいい。

グレーフライアーズ・カークヤード
ここには小説家のアラン・ラムゼイやニュー・タウンの街路を設計した建築家ジェイムズ・クレイグといった、エディンバラゆかりの名士たちの墓が数多くある。

Greyfriars Tolbooth & Highland Kirk
住所 Greyfriars Place Edinburgh EH1 2QQ
Tel 0131 226 5429
開館時間 月~金10:30‐16:30、土10:30‐14:30
Website www.greyfriars.org

スコットランド国立博物館
独自の歴史や文化を誇るスコットランドを様々な展示を通して紹介している博物館。スコットランドの「生き字引」を目指す人は、この博物館を訪れることから始めよう。

National Museum of Scotland
住所 Chambers Street Edinburgh EH1 1JF
Tel 0131 247 4422
開館時間 毎日10:00 -17:00
入場料 無料 (一部の特別展は除く)

スコットランド国立近代美術館
スコットランドの現代美術の殿堂。ここではピカソやマティス、モンドリアンなど現代美術の巨匠たちの作品やスコットランドのアーティストの作品を鑑賞することが出来る。

The Scottish National Gallery of Modern Art
住所 75 Belford Road Edinburgh EH4 3DR
Tel 0131 624 6200
開館時間 毎日10:00 -17:00 (8月4日から9月1日までは10:00 -18:00)
入場料 無料(一部の特別展は除く)

 
唾を浴びる幸運のハート?
ハート・オブ・ミドロジアン

ハート・オブ・ミドロジアンは、ロイヤル・マイルにあるセント・ジャイルズ教会(St GilesCathedral)の西側のドアのそばにある舗道に施されたハート型のモザイク模様。この場所にはかつてTolbooth of Edinburghと呼ばれる建物があった。ここはかつてエディンバラの政治の中心であった一方で、牢獄もあり、公開処刑が行われたいわくつき場所でもある。

さて、ここではこのハート・マークに向かって唾を吐いている人を見かけるかもしれない。どうやら「幸運になれますように」という、おまじないみたいなものらしい。かつて牢獄に入れられる悪人がTolboothのドアに向かって唾を吐いた、という言い伝えから発している風習だという。

ちなみにエディンバラを本拠地とするプロ・サッカー・チーム「ハーツ」の正式名称も、ハート・オブ・ミドロジアンFCである。こちらはスコットランドの小説家ウォルター・スコットの同名小説に由来して名付けられたダンス・ホールの名前から取られたらしい。唾を吐いている人の中にはハーツのライバル・チームのファンがいるという噂も。

St Giles Cathedral
住所 Royal Mile Edinburgh EH1 1RE
Tel 0131 225 9442
開館時間 月~金9:00‐19:00、土9:00‐17:00、日13:00‐17:00
Website www.stgilescathedral.org.uk
奇抜な現代建築
スコットランド議事堂

エディンバラというと英国を代表する古都だけに、どうしてもホリールード宮殿やエディンバラ城といった歴史的なスポットに足が向きがちになるのはやむを得ないところ。しかし今、エディンバラは大きく変わりつつある。その変化の一番の象徴として挙げられるのが、スコットランド議事堂だ。この建物は、1997年にスコットランド自治の象徴として議会の開設が認められたことにより建設されることになった。そういう意味では、スコットランドの人々にとって最も重要な建物といえるのではないだろうか。

この現代的かつ奇抜なデザインは、バルセロナ生まれの建築家エンリック・ミラージェスによるもの。建設の過程で、一番の非難の対象となったのは、4000万ポンド(約96億円)と見積もられていた建設費用が最終的に約10倍にまで膨れ上がったこと。とても見積もりをしたとは言えない気もするが……。スコットランドのアイデンティティや文化、自然を反映したというデザインに疑問符を付けたくなるが、これまでのエディンバラの雰囲気とはまったくかけ離れた建物は、新しいスコットランドの躍動を表現しているともいえる。とにかく、一見の価値はある。

The Scottish Parliament
住所 Edinburgh EH99 1SP
Tel 0131 348 5000
開館時間 9:00-19:00(議会開会中)、10:00-18:00(4月~10月)、10:00 -16:00(11月~3月)10:00 -16:00(週末および祝日)
Website www.scottish.parliament.uk
ハリー・ポッターが生まれたカフェ
エレファント・ハウス

エレファント・ハウスは、エディンバラにあるカフェ。このカフェを特に有名にしたのは、ハリー・ポッターの作者として知られるJ・K・ローリングが、シリーズの第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」の原稿をこのカフェで書いたと言われているからである。

エレファントというその名の通り、店内にはたくさんの象が飾ってある。窓からはエディンバラ城も見える、とても気持ちのいいカフェ。ローリングはエディンバラ城でも眺めながら、コーヒーを片手に小説を書き上げたのだろうか。そんな物思いにふけりながら、コーヒーをすするのもいいかもしれない。
ローリングは、ニコルソンズ・カフェ(Nicolson's Cafe)という別のカフェでも小説を書いていたそうである。残念ながら、こちらは中華料理店になってしまったらしい。

The Elephant House
住所 21 George IV Bridge Edinburgh EH1 1EN
Tel 0131 220 5355
Website www.elephant-house.co.uk/elephant.htm
謎の歴史に彩られた教会
ロスリン・チャペル

映画「ダ・ヴィンチ・コード」の舞台の一つともなったロスリン・チャペル(Rosslyn Chapel)。500年以上にも及ぶ歴史を持つこのチャペルは、他の教会とは全く異なる雰囲気を醸し出している。バラ十字団のシンボルであるバラと十字架で装飾されたこのチャペルで、特筆すべきは、内外に施された彫刻である。キリスト教から異教に至るまで、その彫刻の精巧さ、多様さは見るものを圧倒する。

この教会は、テンプル騎士団とのつながりを持つシンクレア家によって建てられたが、それはコロンブスの新大陸発見(1492年)より前のことである。にもかかわらず、とうもろこしやサボテンといった北アメリカの植物の彫刻が存在している。また、キリスト教に関する重大なものがこのチャペルに保管されている、といった伝説もある。「ダ・ヴィンチ・コード」の著者ダン・ブラウンが、このチャペルを訪ねてインスピレーションを得たというのもうなずける。本当に謎に満ち溢れているこの教会。実際に訪ねてみると、あなたも何かを感じられるかもしれない。

Rosslyn Chapel
住所 Roslin Midlothian EH25 9PU
Tel 0131 440 2159
開館時間 月~土9:30-18:00、日12:00-16:45(4月~9月)月~土9:30-17:00、日12:00-16:45(10月~3月)
Website www.rosslynchapel.org.uk
 

渡英を控え予習をたっぷり行った日本在住の知り合いから「エディンバラについて教えて」と聞かれたら、たじろいでしまう人は多いのではなかろうか。ここでは、在英邦人としてそんな好奇心に溢れた日本人観光客を知的に満足させるためのエディンバラにまつわるウンチクをご紹介しよう。

ウンチク その1
世界初のクローン羊がスコットランド国立博物館にある

世界初のクローン羊として1996年に誕生し、話題となった「ドリー」のことを覚えているだろうか。遺伝子研究の最先端の成果として、全世界に衝撃を与えたあのクローン羊である。2003年に死んでしまったドリーだが、実はそのドリーの剥製をエディンバラで見ることができるのだ。それは現在スコットランド国立博物館にあって、とても人気のある展示の1つとなっている。博物館を訪ねたら、忘れずに見学しておこう。

ウンチク その2
ウェスト・プリンスィズ・ストリート・ガーデンにある花時計は世界で一番古い

ウェスト・プリンスィズ・ストリート・ガーデンにある有名な花時計。この花時計、動いているものとしては、世界で一番古いと言われている。現在は電気で動いているが、1973年までは1日に1回ネジを巻く必要があったそうだ。何千もの花々で装飾されたその姿はとても美しく、見るものを楽しませてくれる。花時計に連動した機械仕掛けのカッコウが1時間ごとに時を告げるのも一興。

ウンチク その3
H形の真鍮ブロックは最後の公開絞首刑が行われた場所を示している

ロイヤル・マイルには、歩道に埋め込まれているH形の真鍮ブロックがある。注意していないと決して気付かずに通り過ぎてしまうこのブロック。実は、エディンバラで最後の公開絞首刑が行われた場所なのだ。グラス・マーケットはかつての死刑執行場だったとか、多くの牢獄の存在など、何かと暗く血塗られたエピソードが多いこの街。暑い夏ならば、背筋の寒くなる歴史的な場所を訪ね歩くのも悪くないだろう。
*場所: ロイヤル・マイルの南側、George IV Bridgeと交差するあたり

ウンチク その4
ペイズリー・クロースの胸像は建物の崩壊を生き延びた少年である

1861年11月24日、ロイヤル・マイルに面していた築250年の長屋が突然崩れた。その長屋に住んでいた35人の住人が死んでしまうという悲劇だった。ところが、建物の残骸を片付けていたところに崩壊した建物の間から、少年の叫び声が聞こえた。「Heave awa' chaps, I'm no'dead yet".」彼は無事に救出され、崩壊した場所にあたるペイズリー・クロース(Paisley Close)には少年の胸像と言葉が残された。

ウンチク その5
シャーロック・ホームズ像が立っている場所は作者コナン・ドイルの出生地である

シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルがエディンバラ出身で、エディンバラ大学で医学を学んだことはよく知られるところ。さて、ロンドンのベーカー・ストリートと同様に、ここエディンバラにもシャーロック・ホームズの銅像が建っている。実はその銅像の建っている場所は、ドイルの出生地のすぐそば。近くには「コナン・ドイル」と名づけられたパブもあり、地元出身の名士を称えている。
住所: Picardy Place Edinburgh EH1 3JT

ウンチク その6
エディンバラの街は火山の上に作られている

その独特の景観で知られるエディンバラの街。この場所は、実は3億年以上前には活火山だった。そのためにこのような特異な地形が残されたのである。例えば、エディンバラ城は、3億年以上前に火山の爆発によってできた丘の上に建てられている。またロイヤル・マイルから見える、標高250メートルのアーサーズ・シート(Arthur's Seat)と呼ばれるこの丘もかつては火山だった。

ウンチク その7
発明家グラハム・ベルはエディンバラ出身だった

電話を発明したことで名高いグラハム・ベル。エジソンと並んで世界最高の発明家と称されるベルだが、彼のことを生粋の米国人だと思い込んでいた人は多いのではないだろうか。実は、彼はエディンバラ出身の英国人。24歳の時に英国を離れてカナダ、米国に移住した。そして世界最初の電話機を発明したわけなのだが、彼が米国に帰化するのは、その発明から約6年後のことであった。

ウンチク その8
エディンバラで浜松の大凧が舞う

エディンバラ市郊外にあるローリストン城(LauristonCastle)。ここには、エディンバラと京都の友好の証として作られた日本庭園がある。今回、この日本庭園の完成5周年を記念して、日本祭が開催。そのイベントの一つとして、はるばる日本からやって来る浜松の大凧がエディンバラの大空に舞い上がる。スコットランドでの浜松の大凧の勇姿をぜひ期待しよう。
日時: 2007年9月2日(日)
会場: Lauriston Castle
住所: 2a Cramond Road South Davidson's Mains, Edinburgh EH4 5QD
問い合わせ先: 0870 033 9577(渋谷)

ウンチク その9
メンデルスゾーンのスコットランド交響曲はホリールード宮殿で生まれた

結婚行進曲でよく知られるドイツの作曲家のメンデルスゾーン。彼は1829年に旅行で、エディンバラを訪ねた。その際にホリールード宮殿内にある廃墟となっていた礼拝堂跡を訪れたメンデルスゾーンは、スコットランド女王メアリーにまつわる悲劇の物語の数々に思いをめぐらした。そして、まさにその場所で「スコットランド交響曲」の始まりの旋律を思いついた、と手紙に書き残している。
住所: Holyrood Palace Royal Mile Edinburgh EH8 8DX
Tel: 0131 556 5100
Website: www.royal.gov.uk

ウンチク その10
エディンバラ国際フェスティバル

ツアー観光客が知らない、エディンバラの奥深さを紹介してきた今回の特集。でも夏のエディンバラといったら、誰もが知っているエディンバラ国際フェスティバルはやっぱり外せない。フェスティバルが開催されている期間には、人口が約2倍に膨れ上がるとか。今年も世界中から一流のアーティストがこの街に大集結。約3週間にわたってオペラ、ダンス、クラシック・ミュージックそして演劇などの様々なイベントが目白押しだ。
開催期間: 2007年8月10日(金)~9月2日(日)
Tel: 0131 473 2000
Website: www.eif.co.uk

 

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