Thu, 02 May 2024

そこまでポピュラーじゃない?英国のハロウィーン

「欧米ならハロウィーンは盛り上がる!」と思いきや、英国では案外重要視されていないことに気付いている方々も多いのではないだろうか。米国から輸入されたハロウィーンに関連する商業的なイベントは社会にあまり浸透していないものの、はるか昔には英国でも独自に祝う文化があったという。存在感はちょっと地味だが、ひっそりとお祝いされている英国のハロウィーンに関する歴史や現代の事情を調べてみた。(文:英国ニュースダイジェスト編集部)

英国のハロウィーン

古代ケルト人に始まるハロウィンの歴史

ハロウィーンの起源はキリスト教が布教するはるか昔、紀元前1000年以上に存在した古代ケルト人の祭りまで遡る。約2000年前に現在の英国、アイルランド、フランス北部を拠点に生活していたケルト人は元々農耕民族。そのため収穫時や冬の始まりなど、農耕に影響する季節の変わり目を非常に大切にしており、そのうちの一つが10月31日に行われる祭り「サムハイン」(Samhain)だった。

ケルト暦では新しい年が現在の10月31日の夜から11月1日に始まり、冬を迎え入れるために死の神サムハインを称えた。この日は死者の魂が家に帰ると信じられており、同時に悪霊も戻るとされたことから、かがり火を焚き上げて追い払っていた。

この祭りはその後ローマ人による征服中にローマ文化の一部として吸収されてしまう。新しい価値観が次々ともたらされていくなか、7世紀を目前にキリスト教が伝来。9世紀には教皇グレゴリウス4世によってサムハインをキリスト教の万聖節に関連した祭りとして同化させる動きが見られ、儀式の一部として存続することに。宗教を通じ、英国全土に普及する祭りとなっていった。

かつて存在した英国でのお祝い法

キリスト教伝来以前からの風習だったため、英国各地にハロウィーンを祝う多様な方法が存在していたものの、時代の流れに抗えず消え去ってしまった数多くの行事がある。

貧しい人々や若者が家々を訪ねて「ソウル・ケーキ」(Soul Cake)と呼ばれる死者の魂を表したケーキを受け取る「ソウリング」(Souling)が、19世紀初頭まで英国各地で行われていたのを筆頭に、アランという品種のリンゴを子どもたちの枕元に置く英南西部コーンウォール地方限定の「アラン・デー」(Allan Day)、また英北西部ランカシャーでは、ハロウィーンの夜は魔女が廃墟で集会を行うと信じられていたことから集団でろうそくの火を灯して木々が鬱蒼と茂る山や丘を歩き回る「リーティング」(Leeting)が行われ、夜11〜12時までに火が消えなかったら魔女の撃退に成功というオカルトめいた儀式もあった。一方、スコットランド北部のカレン(Cullen)という村では、サッカーを中心になぜかスポーツに勤しむ「ハロウィーン・フットボール」(Halloween Football)といった非常にアクティブな活動もあったようだ。

いたずらの夜Mischief Nightとは?

ハロウィーンの前日である10月30日の夜は、英国各地で「いたずらの夜」として知られている。地域によって「Mischief Night」「Goosey Night」「Tick-Tack Night」などさまざまな呼称があり、そのほとんどが子どもや若者が中心となって、卵やトイレットペーパーなどを近隣の住宅に投げつけるといった少々厄介なイベントだ。昔に比べ、近年はある程度落ち着いてきたものの、一部の地域では警察がいまだ厳重なパトロールを行ったり、バーなどのハロウィーン・イベントにやってきた若者がこれを名目に客に迷惑をかけたりと、度々問題になっている。

「Mischief Night」とは

一方、子どもたちがハロウィーンに関連するイベントを行うときは、いきなり知らない人の家を訪ねるケースはほとんどなく、セキュリティーの観点から親や学校関係者などが事前に地域住民に知らせ、きちんと段取りを組んだ状態で行われることが多い。

市民の楽しみ方

11月初旬にあるガイ・フォークス・ナイトを控えているためか、現在の英国のハロウィーンは比較的小規模に楽しまれている。大手スーパーマーケットではハロウィーン関連の商品が売られ、仮装をしてバーで開催されるイベントやホーム・パーティーに出かける若者もいる。

ここぞとばかりに決め込んだメイクで仮装パーティーに参加する人々ここぞとばかりに決め込んだメイクで仮装パーティーに参加する人々

スーパーマーケットではハロウィーン特設の陳列棚が登場するスーパーマーケットではハロウィーン特設の陳列棚が登場する

子どもたちは、水を張ったボウルにリンゴを浮かべ、手を使わずに口だけで取るゲーム「アップル・ボビング」(Apple Bobbing)を行ったり、怪談話を聴いたりして過ごすことが多いようだ。

子どもたちに人気のアップル・ボビング子どもたちに人気のアップル・ボビング

また、この時期はカボチャの収穫体験を受け付けているファームも多いので、ハロウィーンと関付けて遊びに行く市民も多い。

かぼちゃの収穫体験ができるファーム(2023年)

Tulleys Pumpkins

10月29日(日)までの週末、18日(水)からは毎日営業
Tulleys Farm, Turners Hill Road, Turners Hill, West Sussex RH10 4PE
www.pumpkinfarm.co.uk

Pumpkin Week

10月21日(土)〜29日(日)
Secretts of Milford, Hurst Farm, Chapel Lane, Milford, Surrey GU8 5HU
www.secretts.co.uk

 

この記事を気に入っていただけたら、ぜひ任意の金額でサポートをお願いします。

  • Facebook

*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

Sakura Dental 日系に強い会計事務所 グリーンバック・アラン Dr 伊藤クリニック, 020 7637 5560, 96 Harley Street お引越しはコヤナギワールドワイド

JRpass bloomsbury-solutions-square

英国ニュースダイジェストを応援する

定期購読 寄付
ロンドン・レストランガイド
ブログ