今回は、英国で年々厳しさを増している移民の取り締まりについての現状を説明致します。最近になって、政府が不法移民の取り締まりを強化していることを示す出来事が現地メディアによって数多く報じられました。それらの中から特に目立ったものを紹介致します。
● 不法移民を取り締まるための法案の導入
「政府は去る10月10日、移民に関する法案(Immigration Bill)を導入することを発表しました。同法案が成立すれば、政府は一連の改革を通じて不法移民をより容易かつ迅速に強制退去させることができるようになります。また不法移民が英国内の公共サービスを利用したり、国内の労働市場において就職活動を行ったりすることがさらに困難になる見込みです。
● 短期滞在者によるNHS費用負担を検討
エリザベス女王は5月8日、政府の施政方針演説を行い、その中で英国に短期間のみ滞在する移民が国民医療制度(NHS)を利用した場合には、費用の負担を求めるとの方針を発表しました。現在のところ、外国人であってもNHSへの加入が認められた者は原則的に診察時などに支払いをする必要はなく、また緊急治療の大部分は国籍や滞在期間を問わず費用は無料です。しかし、短期滞在者によるNHS利用に際しては、今後は利用者本人または出身国の政府に金銭的負担を求める方針が示されました。現在、この方針を実施すべきか否かについて、国内では様々な議論がなされている最中です。
● 出国を促すテキスト送信
英国への移民に対する滞在許可証の発給などを管轄する英国国境庁(UKBA)が、適切な滞在許可を持たない英国在住者に対して「滞在許可がないので英国を出国するように」と要請するテキスト・メッセージを送信していたとの事実が最近明らかになりました。またこのメッセージは、適切な滞在許可の保持者にも誤って送信されていたことが分かっています。
● 大学での授業の出欠に指紋確認
イングランド北東部のサンダーランド大学や北アイルランドのアルスター大学が、授業の出欠確認に利用するための指紋認証システムを外国人学生に対してのみ導入していたことが発覚し、話題を呼びました。この動きに対しては、各大学の学生組織や教育関係者から大きな反発が寄せられています。
● 大家による入居者の滞在許可確認
政府は、国内にある貸家の大家に、入居者が適切な滞在許可を所持しているか否かを適宜確認するよう義務付けることを提案しています。もし法制化されれば、日本人を含む英国への移民は、入国時や滞在許可の延長・変更の申請時に加えて、定期的に入居先で滞在許可証の確認を受けることになります。
こうした状況下においては、滞在許可証の取得に際してのちょっとしたミスが英国での暮らしに大きな影響を及ぼす可能性があります。滞在許可の取得・更新・変更などにおいて、今後はこれまで以上に専門家の力が必要となるでしょう。英国への滞在許可証を確実に取得するためにも、手続きは専門家と二人三脚で、そして早い段階で準備を開始することをお勧めします。